焔の檻

西野ゆう

プロローグ

「やあ、おはよう」

山と田んぼに囲まれた田舎。笹木ささき辰虎たつとらがこの地に引っ越してきて十年と少し。この地域の中では新参者の部類に入る辰虎だが、その辰虎の数年後に小さな子供二人を連れこの地に来た飯室いむろ幸子さちこに、手を挙げて挨拶をした。

だが、ほうきを手にしていた幸子は軽く頭を下げただけで、その場から逃げるように去っていった。

幸子が出てきたのは、空き家になっている野田邸だ。痛みが来ないように、近隣の住人でたまに風を通している。

「やれやれ」

辰虎は腰に手を当て、ひとつ嘆息すると農作業に戻った。

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