5 家族
「なぁ、これ落ちたんだけど…」
俺が隣の席の奴に話しかけると、そいつは非常に面倒くさそうにこっちを向いた…と思ったその瞬間。
俺の手にあった紙を0コンマ数秒ぐらいで取った。
それから、そいつはちらっとこっちを見ると、紙に視線を落とした。
「ねぇ、これ見た?」
そいつは、紙に視線を落としたまま、俺に言葉を投げかけた。
「あぁ…」
予想通りの答えだったのだろう。
まぁ、袋にしまってたりしてなかったのだから、落とした時点で見られるのはほぼ確定だ。
そいつは特に感情を見せずに淡々と話し始めた。
「園児の弟と母親との三人暮らしでさ、シングルマザーなんだよね家。で、ママは掛け持ちで仕事してて、頑張ってくれてる。だからさ、仕事以外のことはほどんど自分でやってる。紙に書いてあったでしょ、送り迎えとか、買い物って。ヤングケアラーなんだ。まぁ、他のヤングケアラーの子たちに比べたら、大したことないんだけどね。」
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