#1 虚数解
薄暗い倉庫。
「お前、遅いぞ!」
あの頃からだった。
「今日もきちんと頼んだもん、買ってきたんだろうなぁ〜?」
学年を取り仕切るリーダーと、その子分。
圧倒的な力の差に、僕は何もできない。
だが、これも、いつもの風景なのだ。
僕は、いじめられていた。
「あ?なんだ、その目?」
「なんか文句でもあんの?あぁん?」
これも、いつもと同じ。
なんなら、一字一句すら同じだ。
「なんか言ってみろよ!」
腹に強い痛みが走る。
「うぅっ、、、」
見ると、大きな拳が僕の腹を正確に捉えていた。
奴らが、こちらへ、来る。
僕には、何もできない。怖かったのだ。
観念しつつも、心の中で叫ぶ。
『誰か、助けて!!』
その刹那。
夏の制服に、輝くネックレス。そして、長い黒髪。どこか幼いが、キリッとした顔。美少女だ。
扉の向こうから、彼女が、颯爽と、現れた。
彼女は、舞うように飛び上がると、奴らを次々と倒していった。
やはり、彼女は、強い。
「大丈夫だった?」
「う、うん…」
「じゃ、行こっか〜」
そういうと、彼女は僕の手を掴んで引っ張っていった。
彼女は、いつもこうして、助けを求めると、すぐに駆けつけてくれる。困った時、まるでテレパシーのように、汲み取ってくれる。
「そういえば、今日はどんな夢を見ていたの?」
「えぇっと…」
どんな夢だっただろうか。確か、教室にいたような…
「…授業中だった気がする…?」
「ふぅ〜ん、夢の中でも学校行ってるんだ?たいへんだねぇ〜」
そう言って、彼女は笑った。
隣で笑うその彼女は、友達よりももっと関係性の深いような気がする。まるで、幼馴染のように。だが、思い出せないのだ。僕の、彼女に関する記憶は、中3の頃からしか、ないのだ。
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