第2話 嫉妬深さと失意
失意の女と危ない教団
「お前はここにくるな」
どうして彼はそう言ったのだろう?
燃えるような瞳、強い口調からは拒絶しか読み取れない。
「どうして?」
彼女は涙をためながら懸命に理由を聞き出そうとする。
「もうお前には関係ないことだ」
かつて愛していると告げた彼女。
幸福の絶頂へと導いたその口は今は彼女を傷つける凶器でしかなかった。
「私が会社の邪魔をしたから?」
私だって本当は分かっていた。
彼は営業の職についているのだもの。
1日100通を超えるメールや30本以上の電話をよこす束縛女といることが彼のストレスになってきていることを。
こんな生活を続けて3日で彼から止めてくれと言われた。
学生時代になんでも電話しろ、メールしてくれって言ったのはあなたなのに。
俺が食わしていくからといって私の将来を曲げたのはあなたがいたからなのに。
私の気持ちの切り替えが下手なのが悪いのかな。
「良く分かっているな。もう俺の信用は無くなった」
絶大な権力を有していた彼。
1度だって彼に背を向ける場面などなかった。
従順に頷いて私は彼を支えていた。
支えようとしていた。
支えられていると思っていた。
でも彼にとって見たら都合のよい女だった。
「おまえなんか俺の近くにいるんじゃない」
冷たい氷のような声に私はすがった。
「そばにいることすら、できないの?」
「ああ。俺の将来にお前はふさわしくない。
俺にふさわしいようになれ。出来ないならお別れだ」
肯いて、別れた彼。もう2度と会うことはない。
すべての負の感情を背負っていかなくてはならない。
専業主婦でいてほしいと頼んできた。
だから了承したというのに。
いまからどんな職を探せというのだろう。判らない。学生卒業後すぐに同棲生活をはじめたものだから、ろくな蓄えもない。
これからどうやって生きていこうか。
とりあえず実家に戻ってみた。
籍は入れていなかった。
事実結婚で子供が出来たら入籍しようと思っていたから。
でもきちんとした確約がないから慰謝料をとることが難しい。
勘当同然で家をでたから当然親は他人扱いだった。
さて今の私には頼れる人もいない。
とりあえず派遣事務所に登録したが、これからどうするか考えてしまう。
とりあえず1週間働いた。
帰る家もなく、疲労はたまるばかり。
オシャレなんて保てるわけもなかった。
今日は14時からのバイトだったから少し余裕がある。
こうこうのまえを通りかかった。
すると聖書を配っている二人組の男がいた。
教会に入らないかという誘いと一緒に宗教関連の広告を配っている。
「その広告、いただけませんか?」
「どうぞ」
それには寮に入りながら、
生き方を考えないかという触れ込みが書いてあった。
女性の入居者も多数いるそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます