第8話 絶望の中で…

次の日…僕は学校を休んだ…


もう何を信じて良いか分からなかった…

僕の価値観が間違っているのだろうか?…


あんなに愛していると言っていた麗奈が…

どうして僕を裏切ったのだろう?


雪奈さんは理由がありそうだったけど…どうしてあんな事を…


明らかに良い雰囲気だった長瀬さんが…

どうしてあんなに変わってしまったのだろうか?…

通報してでも助ける?

でもそれで彼女は本当に助かる事になるのか??

僕は何も彼女の事を理解できていなかったのに??


もう自分の正義感も正しいのかどうか良く分からなくなっていた…


いくら考えても…分からない…

涙が止まらなかった…


ただ1つ言えるのは…こんな苦しい思いをする位なら…

もう…人は…信じない…

もう…人は…愛さない…


・・・


暫くして僕の中で母の最期の言葉が思い出された…

自棄になったって何も変わらない…


僕がこんな目に遭うのは…僕が弱いからだ…

だから…強くなろう…精神的にも肉体的にも…

知識をつけよう…


誰にも騙されない様に…

誰にも頼らなくても一人で生きていける様に…


そう心に決めた。


・・・


次の日、僕は学校に行った。

隣には長瀬さんも出席していた。


でも…僕はもう長瀬さんとは喋らなかった…

長瀬さんも僕とはもう喋らなかった…


その内クラス内で席が変わり…

学年が変わってクラスも変わり…

僕と長瀬さんは完全に関りが無くなった…


学年が変わって暫くして…長瀬さんが学校を転校したという噂を聞いた。

お義父さんとの関係が児童相談所に分かって保護されたらしい…


誰かがやってくれたんだという安堵感と

通報しなかった罪悪感を感じながら…

僕は思った…


きっとそれが一番の正解だったのだろう…僕には…出来なかったけど…


・・・


僕はというとあの出来事があった後暫くして恥を忍んで雪奈さんに電話をし

頼み事をしていた。


一つは家庭教師をつけてもらう事

もう一つはボクシングジムに通わせてもらう事


雪奈さんは何も理由を聞かず、黙って了承してくれた。


家庭教師に来てくれた人は 金城 沙也加 さんという奇麗な医学生だった。

彼女は雪奈さんの昔からの知人で、雪奈さんが妹として可愛がっていて

信頼のおける人との事だった。

彼女は距離感が近い所謂ギャルのような性格で、

女性に不信感の強かった僕は最初敬遠していた。


ただ、彼女は抜群に教え方が上手く、

僕はメキメキ学力をつけていったのも事実だった。


又ボクシングも僕にはあっていたようで

僕は結構な細マッチョになっていった。


「恭っち、すっごく頑張ってるから超頭良くなったよね~♪

 先生としては鼻が高いよ~♪偉い偉い♪

 私はUSの高校だったから日本の高校のレベルが良く分かってないけど…

 この調子ならば第一志望の高校もきっと楽勝だね♪」

沙也加先生が僕の頭を撫でて来た。


僕はやめてくださいとその手をかわして

「沙也加先生の教え方が上手だからですよ。」


「あ~~~ん…もう可愛いくないな~~~

 もっとスキンシップを大事にしようよ~♪」


「僕は女性が苦手なんです!」


「そんな事言って~…思春期真っただ中なんだから

 女子と交流するのも大事なんだぞ♪

 先生がちょっと手ほどきしてあげるからさ♪」


「いい加減にして下さいよ…全く」


こういうやり取りが毎日続いているので

少しずつではあるが、僕の女性に対する拒絶は日に日に和らぎ始めていた。


「いよいよ明日、試験だね♪頑張ってね♪恭っち

 そして…私に臨時ボーナスを捧げるのだ!」

「それが狙いですか…(苦笑)

 でも…これまでありがとうございました。

 明日は教えて頂いた事を活かして頑張ります♪」

「よし!もし合格したら私からご褒美あげるからね♪」


・・・


そして僕は希望していた県内一番の公立高校に合格した。

「やったね♪恭っち♪合格おめでとう♪」

「沙也加先生のお陰です。本当にありがとうございました。」

「じゃあ私からご褒美あげよっか♪」

「?」


沙也加先生はGカップはあろう豊満な胸に僕の頭を押し付けた。

「え?」

「ふふっ♪柔らかい?思春期の男にはありがたい癒しでしょ♪」

僕は顔を赤くして、沙也加先生の柔らかい感触を堪能した。


…そう言えば…麗奈にも…雪奈さんにも…そして長瀬さんにも…

こうやって慰めて貰った事あったっけな…


「なあ…恭っち…この姿を今第三者に見られたら…どう思われるかな?

 私は今ご褒美で弟にスキンシップを取るような感覚でこうしているんだけど…

 人によっては恋人同士がイチャイチャしていると思うかもしれない…」


「………」


「要はその人の見方によって、見解は変わるんだよ…」


「雪奈姉とのこと…聞いたよ…

 でもその出来事から大分時間が経った…

 その時は感情的になって受け付けなかった事も

 今なら知識も増え、精神的にも逞しくなったから

 今まで見えなかったものが見えるようになったかもしれない…

 だから…話くらい聞いてみたら?」


「僕は…」


「あっ…理解しろって言っているわけじゃないよ?

 ただ恭っちが見た事、感じた事はあくまで恭っちの視点に過ぎないって事

 視野を広げて物事を見るって大事だよって言いたいだけ。

 その上で自分の考えを顧みてみなよ。

 また違った見解が出てくるかもよ(笑)

 それが私の最期の教え…かな?…」


「…分かりました…少し考えてみます…」


第1章 完


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皆様、第1章 如何だったでしょうか?

この後舞台は高校・大学編に突入(第3章)しますが、

彼が今後どんな考え方になり…どう人と関わっていくのか?

麗奈、雪奈、朋美と関わる事があるのか?

乞うご期待。


第3章に入る前に どうしてあんな不幸が出来事が起きたのか?

視点を変えて、各ヒロインの想い、真実を 第2章で描いていきたいと思います。

ある意味読者の皆さんが疑問に思って頂けた質問に対する回答なのかなと思います。


★ や ♡ をつけて頂けると創作意欲が高まりますので

評価頂けると嬉しいです。

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