第11話 お願いがあるのです

実はその声を聴いた瞬間内心恐れおののいてしまった。


まさかね。。いや、たぶん聞き間違い?よく似た声の人だよね。


話してなかったけど、俺にはこの世で一番苦手な存在がいる。


そいつに声がそっくりなもんだから。まさかなとは思うんだけど。


うん、ちょっと一旦この件に関しては忘れよう!


「大倉。敵の日本軍がお前を引き渡すように要求してきている」


「やったぜ。今まで世話になったな。お前のことは忘れんよディオス。ほれ、さっさと俺をあっちに連れてってくれ」


「あなたを日本軍へ帰すわけにはいきません」


俺の背後から冷ややかな声が聞こえてきた。


兵士から伝達を受けたのか?それにしては到着が早すぎた。


その声は今回のジパング軍総司令、リリーだった。


「リリー様!」


「ディオス。敵軍の指揮官と話す場所を用意しなさい」


「はっ、直ちに」


「大倉さん」


リリーは静謐な佇まいとは裏腹に、強い圧力のある口調でおれに畳みかけてきた。


「少しお話があります。こちらへ」




リリーは人のいない場所へ俺を連れてきた。


なんだろう。前にあったときは穏やかでいい人なのかなーと思ってたんだけど。


今の彼女を見ると、怒っているようにも悲しんでいるようにも見え、内心が読み取れない。


「あなたにはすべてをお話ししておいたほうが良いと判断しました」


「すべて?すべてとは何ですか?」


「私の知るすべて。この、ジパングと日本の戦争。その発端と結末についてです」


神妙な顔つきだ。


ただでさえ耳が長く、全身真っ白で人間離れしてる出で立ちなのに、神格さが増している。


「先ほどあった伝達。あなたを引き渡す要求を行ったのはあなたの妹さんですね?」


「....えーっと。なんですか、エスパー?」


黙ってたのに。っていうか俺もまだ確信が持ててないぞ。


大倉礼華おおくられいか。あなたの3歳下の妹。あなたの家系はどうやら、魔法兵器と計略に優れた頭脳をもつ血統のようですね」


「なんでもお見通しなんですね」


「私の魔法は特異系。透視魔法が使えます。私を起点とした半径3km内の生物を誰でも透視できます」


「えぇ....なんですかそのとんでも便利魔法...やらしいことし放題じゃないすか。。」


「透視はその人の姿だけでなく、持っている魔法力、才能、経歴、家系、心身状態まで見ることができます。家系は親族が近くにいる場合のみ見れます」


「その透視魔法で俺と妹の関係を見つけたと」


「そうです。あなたとあなたの妹の能力も透視しました」


どうやら、俺はとんでもないジパング人に拉致されていたようだ。


裸を見られる以上の覗き見だ!


見られただけで俺の全部を見抜けるなんて。チートやん!!


余計にリリー様に好感を抱きましたよ、ええ。普段この人どんなものみてるんだろう。


「大倉礼華はあなた以上に極めて高い知性を持つ天才。齢10で名だたる名門を主席で卒業し、大倉財閥の頭首として日本軍を支えている。そしてどうやら、今回あなたの代わりに日本軍の前線総司令に抜擢されたようですね」


お手上げだ。


もう全部知ってるよこの人。


「あぁ。その通りだと思いますね。俺が日本軍の兵器開発部門に放り込まれたのも、全部俺の家が関係してる。礼華は猛反対しましたがね」


「そんなあなただからこそ、お願いがあるのです」





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