第6話
変わったのは、料理の味付けだけではなかった。
部屋の整理、バラ園の花、出かける際の荷物の準備など、細かいことをあげればキリが無いくらい、全てが大雑把になった。
注意をした使用人たちは、口を揃えていった。
「アメリア様がチェックをしてくださっていたもので……」
「バラの花は、毎日アメリア様が手入れをなさっていらっしゃいました」
「必要な物は、アメリア様がご指示してくださいました」
もちろん使用人たちも、ボルグの要望に応えようと努力はしているが、どうしても以前のようにはいかなかった。小さな抜けがあったり、気に食わない部分があったり、イライラが募ったボルグに怒鳴られ、次々と使用人たちは辞めていった。
残ったのは、どれだけ怒鳴りつけてもヘラヘラと受け流し、反省も改善も見られない、空気の読めない使用人ばかり。
ボルグはとうとう、妻であるセーラに、身の回りの世話を願い出た。今まで愛人として通っていたとき、彼女はボルグの理想的な妻として、完璧だったからだ。
しかし、
「身の回りの世話? 何故、伯爵夫人である私がそんなことをしなければならないの? ちなみに今だから言うけれど、料理も刺繍も、全て他の人間にさせていたの。まあ夜の生活だけは、私の実力だけれどね?」
爪を塗りながら、セーラは薄く笑った。
頭の中が、だまされた怒りで真っ白になった。
しかし、彼女の膨らんだお腹を見て、怒りを収める。
セーラのお腹には、ボルグの子どもがいた。今更、良妻の仮面を被っていたからと告白されても、追い出すわけにはいかなかった。
アメリアとの間に子どもができなかった以上、セーラのお腹の子が、後継ぎとなるのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます