リアルタイムラプス

歩行

驚愕?!空中平行移動女

「ちょっとこの動画見てよ」


 こいつがスマホを差し出してきた。


「わかった」


 …こいつが足を浮かせたままスーッと教室を移動する映像。

 遅いからかなりシュールだなこれ。


「ああ、タイムラプスだっけ」


 結構前に流行った記憶がある。

 今は全然見ないけど。


「うん、一人で撮ったんだ」


 へぇ、タイムラプスの撮り方は知らないけど、一人でもできるもんなんだ。

 まえ~に見た動画は、どことなくカクカクしてた気がする。

 でもこの動画はおっそいけど、本当にジャンプしたままで滑ってるように見える。


「何回くらいジャンプしたの」


「ん~、1000回くらい?」


 多いな。

 これだけヌルヌルならそのくらいの枚数が必要なのかもしれない。


 それでも姿勢が全く変わらないのはさすがに不気味。 

 高さも動きも同じようにしないとできなくない?

 自分でタイミングも合わせないといけないし、むずそう。


 でもこいつならそのくらいの神業はやってのっけそう。

 下手したらこの映像はもっとやばいことをやってるのかも。


「ん?」


「あっ」


 男子が通ろうとして…。

 驚いたような顔をしながら来た方向からフェードアウト。


「ねぇ、これって」

           

「ふゅっ、ふゅぃ~~」


 微妙に吹けてないのやめろ。


 さっきの映像だけど。

 男子の動きが普通だった。

 タイムラプスに映ったものにしては、普通すぎた。


 こいつには私以外にまともな会話ができるやつなんていないし。

 そもそも赤の他人がこんなにコンビネーションを合わせられるわけがない。


 えっと…、今は、誰もいないな。

 放課後だから、もう教室に人が来る時間じゃない。よし。


「ホバー移動して、いや、しなさい」


「はい…」


 すると、こいつの身体が…50センチくらいの高さで。

 浮いたぁぁぁぁぁ!


「なにこれ」


 やっぱりとんでもないことをしでかしてた。


「いやー、ね?やってみたいなーって思ってたら、できちゃった」


「そう」


 言い訳というより、ただの自慢を聞き流しながら。

 窓に向かってこいつを押してみた。

 ちなみに、窓は、開いたまま。


「えっ、ちょっ、まっ、ここ三階っ!」


 タイムラプスの真似をしながら外に飛び出していった。

 当然その姿勢、その高さのままで。


「バイバイ」


「やめて、助けて、しぬしぬしぬ」


「ケケケケケ」


 つい、せせら笑う程度には無様な姿だ。


「火葬はしてやる、安らかに眠れ」


 レストインピース。


「落ちる落ちる、うわぁぁぁぁぁ!」


 やっと落ちた。

 照らされて夕日がまぶしいな。

 まるであいつの終わりを祝福するかのようだ。


「いや、死んでないよ!」


 このくらいでは死なないだろうなーって思ってたけど。


「じゃあ、もっかい逝っといで」


 適当に担いでっと。


「え、力つよ、ぎゃぁぁぁぁぁ!」


 ドスッって落下音が聞こえた。

 オチだけに落ちたってね。


 まぁ、あいつ長い時間の経過による、老衰以外で死にそうにないけど。


「うごごご、ほんとやめてよ、死ぬかと思ったじゃん」


 ほらね。



「どうやって戻ってきたの?」


「え?浮いてだけど」


 とんでもねぇなこいつ。

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