魔王の凶戦士

欧流 内斗

第1話  不良戦士 - 1


穏やかな風が吹いており、爽やかな日差しと青空が包み込んでいる。


世界が平和なのは良い事だ。


ロシアがウクライナに侵攻した、とかいう物々しいニュースも入ってこないのは素晴らしい。


「おーい。」


ん?


「おーい。」


なんだ?


「おーい。」


誰かが呼んでいる、返事してやれよ。。。


「おーい、龍司!」


俺の事かよ、めんどくさいな。。。。


「国王様がお呼びだ、早く木の上から降りてこいよ!」


ち、よく見つけやがったな。

わざわざ、枝と葉が密集している場所に身を隠していたのに。。。


さすが魔術師、索敵魔法なら造作も無いってことか。


諦めて、枝から幹を伝って地面へ降りた。


でかい声で俺を呼び続けていたこいつは、俺とほぼ同時にこの世界に召喚された魔術師の大原裕介だ。


呆れてうんざりした顔をしているが、それはこっちも同感だぞ?


「まーーったく、龍司よお、城からの呼び出し、昨日からあったんだろ?

なんで来ねえんだよ?」


ああ、その事か。

こっちも確信犯で無視していたから、ちっとは罪悪感がある。


「まあ、要件の想像がつくし、嫌な予感がしたんでな。。。。」


「魔王領への侵攻の件だ。元の世界に帰れる可能性があるんだ、来いよな、まったく。。。」


おかげでこっちは穏やかな気分が台無しだ、勘弁してくれよ まったく。


「そうは言ってもよ、このアルクレイド王国には召喚された勇者達がダース単位でいるんだ。

わざわざ、俺たちが行く必要なんかあるのか?」


祐介もどこかうんざりした感じで、俺を睨み、言い返す。


「龍司、お前なあ、放っておいてほしいなら少しは行動を控えめにしろよ。

今回、お前を呼び出しているのはクレア姫ご自身だ。理由はわかるだろ?」


「あ、、、あれか。」


召喚された他の勇者グループの中で、最強だと評価されてイキがっていた大迷惑戦士に、ついキツいヤキを入れてしまったのが、当の俺だという事が人伝てにバレて、クレア姫から数回呼び出しがかかっているのである。


「しかし、さっきお前は国王様からの呼び出しって言ってなかったか?」


祐介が呆れた目で俺を見て盛大にため息を吐く。


「姫様がいくら呼び出してもお前がバックれて来ないから、国王様に呼び出しを頼んだんだろ?

いい加減にしろよ、この不良戦士が!」


「敢えて無視していたのが、焦らしになって我が姫の恋の炎が燃え上がったのか?」


「おま、、、、」:ゴミ屑を見る視線、、、、


「しかし、これだけ何度も俺を呼び出すってのは、かなり熱くなってるな。


寝室で待ってろよ、ジュリエット。」


「いい加減に、、、、、」:ゴキブリを見る視線、、、、


「あ、これからは俺の事を、戦士ロミオと呼んでくれ。」


俺の頭を強烈に引っ叩きながら祐介は、


「ああ、国王にお前の処刑を進言しておくよ。。。」


「痛え、、、でも、そこは、毒を煽って死ぬ方がロミオっぽいかもなww」


すでに、何の反応も示さない祐介、本気で呆れたのかもしれん。


この時 祐介は知らなかったとは思うが、実は国王か王国の諜報機関が俺をマークしかねない理由が存在して俺は気が気でならなかったので、必要以上にふざけていたのだ。


つまり、争いの火種が多く存在する世界では、物事は目に見える通りには進まない。

俺はこの世界に来て、それを思い知ったのだ。








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