第2話
自分に自信がなくても、堂々と顔出して歩けばいいのになぁ。
俺、美園和麻は、美園友麻の兄である。しかも、「双子の」である。
自分に自信がない友麻に比べたら俺は逆に自信家な方かもしれない。
運動、勉強、人付き合い。ある程度努力しなくても人並みには出来るし、そこからさらに努力というものをすれば人並み以上にうまく出来たりする。器用な方だと思う。
自分に自信があるから自分で言うけど。
ちなみに、顔は低く見積もっても中の上位には入っていると思うから普通に顔出してたら俺に瓜二つの弟も顔は悪くないのだからやはり、顔出して歩いてもいいのになぁと思う。
・・・てか、逆に顔を隠そうとしすぎて浮いてしまって目立っていることに弟は気づいていない。でも、その状態で弟は何も不満はなさそうだから何も言わずにそのままにしている。
「黒魔術の伝道師」なんてあだ名がついているけど、確かに弟に料理をさせたら漆黒の粘り気のある黒い物体が出来上がるからある意味「黒魔術が使える」って部分はあながち間違っていないのかもしれない。「伝道師」の部分は置いといて。
そんな冗談はさておき、そんな俺には趣味がある。
それは・・・アニメ鑑賞だ。
いろんなジャンルのアニメを録画はもちろん、深夜タイムでもリアルタイムで観るのが趣味だ。
もちろん、お気に入りのアニメがあり、推しキャラがいればグッズを集めてしまうくらいには「アニメオタク」だ。
「ただいま」
友麻が学校から家に帰ってきた。夕飯の買い物を母さんから頼まれていたので少し俺よりは遅く帰ってきていた。
あ、ちなみに俺も友麻と同じ高校に通っている。正直、学力的にはもうちょっと偏差値の高い高校も狙えたのだけれども、弟が心配で同じ高校を受けたのは弟には内緒だ。知られてしまったら多分弟のネガティブタイムが始まってしまうだろう。
「おーお帰り友麻」
俺は、友麻の方は一切見ずにリビングのテレビにかじりついていた。昨日録画しておいた最近お気に入りのアニメである「うららか七変化」をもう一度見直ししているからである。このアニメのヒロインである「うらら」が今のところの最推しで、俺の今の人生の中でナンバーワンに君臨する推しである。
テレビにかじりついている俺に近づく気配がする。おそらく友麻だろう。
今の俺に近づいてもお前の方は残念ながら見る気はないぞ。
そう思うと、友麻が俺に質問を投げかけた。
「和麻にとって、アニメって何?」
なかなか良い愚問が出てきた。お答えしよう。
「何って・・・アニメは人生だよ」
ちょうど、うららか七変化が終わったので友麻の方を見て答えた。
「俺にとってアニメを愛することは、俺の人生を愛することと同義なんだよ。アニメを愛せない人生なんて俺にとっての死だ。アニメを愛すのは宿命なんだ」
友麻の片目しか見えてないが、ドン引いてるのは伝わってるぞ。失礼なやつめ。
「俺がそんな宿命持って生まれてきてたら死にたい」
どこまでもネガティブなやつめ。どんな宿命持って生まれてきても宿命なんだから生き抜くべきだろう。
さて、アニメ鑑賞も終わったし、自室でも行くかな。
俺は、友麻をリビングにおいて部屋に戻った。
その後、夕飯の用意を手伝ってもらいたかった母さんが友麻を呼びに行くと友麻も何を思ったのかうららか七変化を見ていたらしい。口ではああ言っても友麻も俺の双子の弟だ。興味でも持ったのか。興味を持ったなら語り合いたい。まぁ、多分、弟のことだから「何がそんなに楽しいのだろうか」と純粋に疑問に思い、試しにアニメを見てみた。ってところだろうけれども。
まぁ、まさかこの時は俺もあの子に出会えるとは予想していなかったわけだけれども。
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