実はショックだよ?

 反射神経が腐ってるかもしれない。


 一時期の僕はソーシャルゲーム、とくにリズムゲームをよくやっていた。テンポとタイミング良く画面をタッチするだけで、どばどばとアドレナリンが噴出するやつだ。


 基本的に音楽が好きなのもあるのだけれど、ボケ防止とか反射神経の向上とか将来の自分に対して、遊びながら投資できるかも! などの浅ましい思いも少なからずあった。


 親指二本でガチにプレイしていたら……腱鞘炎になった。指の関節を曲げたら曲がりっぱなしで戻らなくなった。病院で理由をきかれたときのやるせなさったらない。


 腱鞘炎なんて言うと、作家や漫画家とかの職業病みたいで、なんかカッコいいとか思っていたけど、なったら不便極まりないし。なんの良いこともない。


 しかも原因がアレだからね。お医者さんに鼻で笑われても、ごもっともと平身低頭するぐらいしか選択肢がない。


 痛いものはしょうがないので、人差し指二本でのプレイスタイルに変更した。


 それでも、遊ぼうとするのがいじましいというか、アホを体現していると言いますか。


 でも、なんだか上手くなった。えっ、使う指をかえるだけでこんなにプレイ感って違うものなの? とはいえ机に置いてプレイしないといけないので、自然と遊ばなくなってしまった。


 ボケが進行しないことを祈る。いやボケてねーし。



 ある朝、自転車で移動中に交差点で信号に引っかかった。後ろを眺めれば、自転車が複数台、信号が変わるのをまっていた。


 信号が変われば、ゲートの開いた競走馬のごとく、一斉に走り出す。道理である。


 先頭で信号を待っていた僕は、シグナルの変更と同時にペダルを踏み込んだ。


 抜かれた。


 複数台に追い抜かれた。


 えっ、反応速度が遅くなってる? カーレースで言うなら、ポールポジションでのスタートで、第一コーナーに飛び込んだ時には、中程の車の群れに埋没してる感じだ。


 観客がいたらブーイングものだ。


 だが当事者としてはめっちゃ不満だ。いやタイミング良く漕ぎだしたんだよ? なんでバンバン抜かれるのかなぁ。


 あ、電動アシスト付きの自転車はなにげに早いので、カテチなので気にしないことにする。


 普通のひとよりはゆっくり漕いでいる自覚はあるが、ここまでごぼう抜かれるとショックをうける。相対的にスピードが出てないのは認めよう。だが、これではあまりにも遅いみたいじゃないか。


 僕の老朽化が進んでいるかもしれない。しかたないのでマグネット・コーティングでもしないといけないのかもしれない。ピップ〇レキバンで。



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