ボクはなんだか色々と足りてない

からいれたす。

ボクは卵が下手

 唐突に気がついてしまった――ボクは卵が下手なんだ。


 音で表現するならコカッパカッ。割卵。毎日一個食べるなら月に約三十個。


 単純ゆえにごまかしの効かない行動を何十年という単位でやってきた。それなのに学習していなかった。


 びっくりするほど美味くない。いや、上手くない。卵は旨い。


 卵のエピソードを語ろうとしたら少なからず浮かび上がってくるものがある。ありまくる。


 そりゃあね。こんなにもボクはキミにしょうゆを注いできたのだから。


 さて、ほぼ毎日食べているものだから、安価で品質が良いものをとおもう。


 地域の相場より二十円とか安くなっていれば足を運ぶこともやぶさかではない。


 卵は物価のバロメーターなんてことを言ったりするけれど、値幅はそれなりにあるんだよね。高級志向のものを含めればなおさらだけど。


 なんでこんな少額に心血を注いでたんだと疑問にも思うが……。習慣と潜在意識っていうのは怖いのだ。


 一日にあんまり食べないほうが良いみたいなことを、かなり昔に聞いたことがあったので控えめにしていたのだけれど、根拠的なものは全くもって分かっていなかった。


 コレステロールがほにゃららとかあるようだけどね。結論としては食べ過ぎは良くないからほかのものと勘案してバランス良くという玉虫色の決着。


 また、それなりにこだわっているのに、購入後の処理は杜撰。


 いつでも卵の殻にヤラれている。卵殻。食べるにあたっての障害。こいつを取り除かねばならない。それでもってこいつがどうにもいただけない。


 そっと打撃を与えて亀裂を生じさせ、そこに指でもって丁寧に圧を加えながら押し開き、内部を取り出す。


 簡単なことをわざと難しくいったところで行為自体は簡易。


 角を見つけてかるくほくそ笑んだら打撃を加える。砕けた殻が残る。キミが割れる。


 心も砕けようってものだ。


 調べたら平らな場所に軽くぶつけてから割ると良いとあった。よし、やってやるゾ!


 ……ヒビが縦に入りやがりましたよ。なんだか世界がボクをバカにしている気がする。


 ボクは激怒した。必ず容器に入った殻の破片を取り除かねばならぬと決意した。


 そうそう、ひとつだけ上手くなったのは、お箸でカラザを取り除くことくらいかしら。


 でも破片は往々にして箸では拾い上げられないんだよ。


 なんだか割った後の殻を使って破片をすくい上げるとよいという記述を見つけた。


 グッドじゃないですか!? 早速実践するも卵黄が形を保たなくなり、卵液の中に殻は消えていった。


 一つ宣言しておくと、卵の焼き加減やかけるものにケチをつけるような大人にはなっていないからね、先生。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る