第14話 予告相手
クロエは、2年ぶりに異母兄の姿を見た。
異母兄のライガック第一王子は相変わらず整った顔立ちをしている。
長い銀髪に澄んだ瞳、かなりの美形である兄はいつも複数人の女性を侍らせていた。
ふと、一時期ガイア帝国の貴族がガージニア王城によく尋ねてくると噂されていた事を思い出した。
あれは、もしかしてマイラー公爵家の者だったのかもしれない。
私は、俯き堪えていた。
まさかとは思ったが、本当に異母兄の第一王子が、マイラー公爵邸にいるとは信じられなかった。
クロエは、顔を上げ、目の前のライガック第一王子へ話しかける。
「貴方様は、私の親族を盾に私を脅されているのでしょうか?」
ライガック第一王子は私へ言った。
「ああ、俺に歯向かうつもりなら、ルーナの親族を皆殺しにしてやる。ガージニア王国には俺の部下が数多く潜伏している。もちろんお前の親族の側にも。」
その言葉を聞き、私は、右腕を真っ直ぐに上げて、ライガック第一王子を指さした。
ライガック第一王子は不愉快そうに顔を顰めて言う。
「どういう事だ。」
ライガック第一王子は、私がルルージュアだという事に気が付いていない様子だった。
私は笑い、言う。
「私の親族は、貴方様だけです。ほかの人達は殆ど死ぬか行方不明になっています。自殺でもされるおつもりですか?」
ライガック第一王子は言った。
「まだルーナを演じるつもりか?お前は偽物だろう。ルーナは確かに俺が殺した。」
私は、異母兄から真実を告げられて、悲しくなった。ライガック第一王子は何人の兄弟を手にかけたのだろう。メルーシア王女から託された手帳では、行方不明の王女達は、皆、黒線が引かれていた。
確かに疎遠な親族だった。ルルージュア王子として生きてきた時から兄妹達とは、ほとんど話をした記憶がない。それでも、行方不明の兄妹達は、どこかで生きていると信じたい気持ちがあった。
その時、屋敷が騒がしくなった。
すぐに、私達がいる中庭に、数人の人物が訪れた。先頭にいるのは手錠をして顔色が悪いマイラー公爵を、引きずる様に連れて来ている側近のグロウだった。ジーク皇帝はグロウの後ろに立っている。
イアンナ・マイラー公爵令嬢が叫ぶ。
「お父様!」
マイラー公爵は、イアンナを見て、泣きそうな表情をしていた。
ジークは、私が残した手帳を読んでくれたらしい。複数人の兵をつれて公爵邸に来てくれた様子だった。
その時、ライガック第一王子が私に向かって走りこんで来た。手には短剣を持っている。
遠くで、ジークの叫び声がする。
「クロエ!危ない!」
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