第4話 港町での再会
ジークは、側近のグロウに帝国を任せて、港町を訪れた。
夕方でも、町は活気に満ちている。
エリーゼと言う名の娘に聞いたクロエらしき人物の勤め先を訪れる。
ジークは、働いている女性に声をかけた。
「ここに、ルルーと言う娘が働いていると聞いたのだが、、、」
長い茶髪を後ろで纏めあげた、中年の女性は言った。
「あら、いい男だね。もしかしてルルーの旦那かい?息子のザックと眼の色がそっくりだよ。あんな、いい女を捨てるなんて、信じられないよ。ルルーはもう帰ったよ。今頃丘の上で休憩しているはずさ。」
ジークは、礼を言った。
「ああ、ありがとう。捨てたのは俺じゃないけどね。」
女性は活発に笑い言う。
「ハハハハ、さすがルルーだよ。それにしても、よっぽどの事をしたんだろ。親兄弟を殺されでもしないと、私ならアンタみたいないい男捨てないけどね。」
後ろで話を聞いていた別の女性も言う。
「本当だよ。かなりいい体をしているじゃないか。うちの旦那と交換して欲しいくらいだよ。」
「ルルーもやるわね。仕事もできるし、色男に追いかけられるし、本当に大した者だよ。」
「これだけの男がいるなら、ルルーがこの町の男連中に見向きもしないはずだね。」
「「ハハハハハ」」
ジークは、その場を後にした。
親兄弟を殺された。そう、もしクロエが、ルルージュア王子なら、ガージニア王国の王子や王を根絶やしにしたジークは、クロエの親兄弟の敵になる。
だからなのか、、、
だから、ジークを置いてクロエは去っていったのか。
ジークにとって、暗殺された父と兄はかけがえのない存在だった。ジークなら父や兄を殺した相手を愛する事ができるのだろうか?いやできるはずがない。
諦めた方が良い事は分かっている。
側近にも、帝国の貴族達にも、兵士達にも何度も諫められた。
だが、それでも、、、、
ジークは、女達が指さした丘へ向かった。
丘の上には、長い金髪を風に吹かれながら佇む女性がいた。
右手で、1歳くらいの男の子の手を握り、丘から遠くを見つめている。
ジークは確信した。
髪の色は違うが、クロエだ。
ジークがずっと探していたクロエ。
子供が振り向き、ジークと眼が合う。
その子は金髪で赤い瞳をしていた。
ジークと同じ赤い瞳を、、、
「クロエ。」
ジークは、クロエへ呼びかけた。
クロエと呼ばれた女性は振り返り、ジークと眼が合った。
「ずっと探していた。クロエ。君が誰でもいい。お願いだから側にいてくれ。愛している。」
その言葉を聞いた女性の目から涙が一筋零れ落ちた。
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