第02話「悪いスライムじゃないなら許してあげる♪……なんて言うわけねぇだろッ、喋るペペローションがァァ! 人間様にモノを頼むなら有り金すべて出しやがれェェ! オラァ、死んでアイテムドロップしろッ!」

 暗くジメジメとした洞窟で、あなたは生まれました。

 あなたは、女の子の衣服を溶かすために生まれてきたスライムです。


 あなたが生まれて、新たな世界が動き出します。


 あなたは洞窟の床を這い、緑苔の生えた洞窟の壁面に張り付きました。


 洞窟の床には、洞窟ウサギなど危険な捕食者が多くいます。

 あなたは比較的安全な壁面で、緑苔を捕食することで成長を続けます。


 あなたの体が、何かと触れました。

 あなたの本能は、それが捕食対象であると認識しました。

 あなたはゼリー状の体を変形させて、それを包むように溶かして捕食します。

 それはあなたの中でもがき、やがて動きを止めます。


 あなたは、それを捕食して喜びを感じました。

 緑苔では感じることのできなかった、感動とも表現できる揺らぎ


 洞窟の昆虫を捕食したあなたの体は、養分と水分で満たされています。


 養分と水分を確保したあなたは選択します。

 自らの体を分裂させて繁殖するか、自らを強化するかです。


 あなたは、昆虫の美味しさに夢中です。

 この美味をより味わうには、自らを強化すべきと判断しました。


 あなたは体内の余剰養分を用いて、新しい感覚器官を作り出します。

 あなたの核から神経繊維が伸びて、体の表面の振動を感知する器官と繋がります。


 あなたは進化して、世界に音と振動が生まれました。

 あなたは振動と音を頼りに、捕食対象の昆虫を求めて這い回ります。


 移動するたびに、あなたから養分と水分が失われていきます。


 あなたは、原始的で単純な生命です。

 高度な脳を持たないあなたには、その振動が安全か危険かの判断ができません。


 飢えに突き動かされるあなたは、強い衝撃を感じます。

 あなたの保護膜を突き破ったのは、洞窟ウサギの鋭い牙でした。


 あなたの核はウサギに咀嚼され、あなたは絶命しました。

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