共感覚

汀桜

普通ってなんだ?変ってなんだ?

最近知った。当たり前だと思っていた事が違ったらしい。

ぼくは文字や数字、人柄、感情に色や音が付いているが、付いていない人が大半らしい。

物を覚えるのに役立つこともあるが、

そのせいで阻害されることもある。

あの人焦ってる色してるな。

あの人危ない色してる。

嘘の音がする。

嘘の音の正確さは微妙だが、ないよりはマシだ。これらは全部「共感覚」と言うらしい。

これまでぼくがしんどかったのは、このせい。

きっと周りの人にこれを言えば、みんなはぼくに文字の羅列を差し出して、「これは何色!?」って聞いてくる。

個人的に、ぼくの共感覚は、隣のA君の足が速いのと、あっちのDさんの歌が上手いのと、何も変わらないと思う。

「俺、足速いんだ」

「私、歌上手いの」

なんて言えば、みんな苦い顔をするだろ?でもぼくが

「共感覚ってのを持ってるみたいなんだ」

なんて言えば、質問攻めだ。

「これは何色?」

「私はどんな色?」

「あの人は?」

ぼくが勇気を出すことで救われる人もいるけど、なんてことをしてくれたんだ、なんて怒る人もいる。あと、嘘を言って誰かを困らせる人も出てくる。

あときっと、ぼくが上手く言葉にできないなんてことがあれば、甘えるなと叱る人も。

普通が確立されてしまった社会は、生きやすいけど、生きづらい。

少しでも他と違えば、一瞬でどかん、だ。

ぼくは、少数派側に立っていて、生きづらいと感じている人を心から応援したい。悪いことを言ってくる多数派側の奴がいれば、大声で「お前基準で語るな!!!異常者呼ばわりするな!!!」って叫びたい。

自由が進められているけど、表現の自由が後退している気がする。難しい事だけど。

応援してるし、手伝いたい。でも、ぼくはあなたの声も、名前も、話す言葉も、住んでいる場所も知らない。声さえ聞ければ、あなたの色が少しわかると言うのに。それに知っても、ぼくの力ではどうにもならないところかもしれない。応援するしかできないぼくを、許しておくれ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

共感覚 汀桜 @arisu_sora

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ