夜中にヒッチハイクをする女子高生がいたので、仕方なく拾った話

ぱらな

第一話 女子高生を拾う

「ん〜…なんか腹減ったな、コンビニでも行くか」

こんな特に何の長所もないどこにでもいるような大学生、山本 梗きょう介すけ。

 たまにある、夜中にお腹が空く現象が起き、気が向いたので少しドライブでもするかと思い、車で少し海を見つつ遠回りしてコンビニに向かう。


(最近カップ麺ばっかだったしな〜。お、新商品出てんじゃん、これにしよ。あとは…奮発してデザートでも買うか)


と、心の中の独り言を発しつつ商品をカゴに入れレジに通す。レジ袋を片手に車に戻り、さっきとは違う近い方の道で帰っていると…


「ん?なんだあれ」


よく見ると、歩道側で何やら『ヒッチハイク』と書かれた紙を持っている少女がいた。見た感じ高校生っぽい。こんな時間にヒッチハイクって余程のことがあったもんだ。しかもこんな車通りの道で…。


「はあ…。こんなの無視する方が無理だろ」

別に善意とかは全く無い。このまま無視しても寝るに寝れなくなるのが目に見えてただけ。


「おい、こんな時間帯に危ないぞ。何してんだ」

「あ、え、っと…」

………なんでこんな気まずくなってんの?こんな臆病そうな子がよくヒッチハイクなんて出来たもんだ。厳密には出来てないけど。

「どこに行きたいんだ?近いとこなら連れてってやる」

「えっと……別にどこに行きたいわけでもないんです。ただ、遠くに行きたくて……」

「は?遠いところ??なんで」

「そこまでは言えません。でも取り敢えず『あの人』に会いたくないんです」

 あ〜なるほど、大体わかった。

この子は、『どこかに行きたい』んじゃなくて『家から離れたい』って事なんだろうな。家庭事情とか色々あるんだろうが、それにしてもこの時間帯に、危なすぎだ。



「まあ大体わかった、が…こんな時間帯に出歩くのはどう考えても危ないだろ。今夜だけは俺の家に来い。もう遅いしな」

「え、でも……」

「もしかして、知らない男の家に行くのは抵抗があるとかか?そりゃそうか、全く知らない男に「家に来い』は流石に———」

「いや、そうしゃなくて…良いんですか?」

「この期に及んで俺の心配かい!そこは安心しろ。ってか良いから俺から提案してんの!!」

「じ、じゃあ…お言葉に甘えて」

「おう。って、ちなみに聞くけど、歳は?」

「あ、17です」

………これ、犯罪にならないよな?


となんやかんやあって、一人暮らしの凡人大学生の家に女子高生が来るというPS4でトロフィーが解禁されそうなイベントに遭遇してしまいました。…いやイベントとか言ってる場合じゃねえよ!てかベッドひとつしかねえし!

まあ仕方ない。ここはこいつにベッドを使ってもらおう。


「「………………」」

わかっちゃいたが、こいつも俺もそんな喋るタイプじゃないから流石だな。車のエンジン音以外なんの音も鳴ってない沈黙が破られたのは———



グ〜〜〜〜〜


というこいつの腹の音。

助手席に座っているため、横顔が普通に見えるわけだが…すんげえ赤くなってる。

「す、すいません!!」

「いいよ気にしないし。……後ろのレジ袋におにぎりとアイスあるから、食え」

「え、でも…これはお兄さんが食べる為に買ったんじゃ…」

「いいから、腹減ってるだろ?それに、またお腹の音鳴っても知らないからな」

「っ〜〜〜!!い、いただきます」

「はいはい」

意外と可愛いとこもあるな。…意外は失礼か。

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