真夏の涼しくなる話集
恋真 真
事故物件
俺は、西條 和基35歳、俺の仕事は営業部長で、転勤族でもあった。
だいたい2年ごとに、転勤先が決まる。
社長「あー、西條くん、再来月、静岡県〇〇市〇〇町に行ってくれ、あそこ、業績が悪化してるらしいから、頼むよ?」
社長に言われるがまま、俺は移動通達書と、次に住む家の資料を渡された。
俺「はぁ、なんで俺転勤ばっかりなんだよ〜。本当嫌になるなぁ。あー!煙草吸いに行こ、イライラしてても仕方ないしな。」
喫煙所に行くと、後輩も喫煙所にいた。
俺「よ!サボりか?」
俺は、ニヤッとしながら、後輩をいじったが、この後輩は、何か人の少しの表情や、喋り方で、精神状態や、悩みを抱えてるなどが、瞬時にわかるらしい。
なぜ、その道に進まなかったかは、分からないが、とにかくすごい。
後輩「先輩、どうしたんすか?なんかあったんすか?話、聞きますよ?」
やっぱり、バレていたらしい。
隠してても、いつかはわかるものだから、言うことにした。
俺「実はさ、再来月俺、転勤なんだよね、さっき社長に言われたよ。静岡の事務所の業績が悪いんだと、それで転勤させられるんだぜ?つらいよ。」
俺が、愚痴を吐いていると、1本の電話がなった。
俺「もしもし、西條ですが、どちら様ですか?」
不動産「初めまして、私、富士不動産の丸岡と申します。社長様から、次のアパートが決まったそうで、内見はどうされますか?」
俺「いや、そちらに行ってすぐに休みたいので、内見は大丈夫です。」
この後、俺は、内見しなかったことを後悔することも知らずに、淡々と仕事をこなしていた。
転勤1ヶ月前に、後輩が幹事で送別会を開いてかれるらしい。
同僚は何人か集まってくれたが、あとは、上層部ばかりだった。
社長「西條くん、ほら、飲んで飲んで。君は本当に優秀な人材だよ。移動させるのが惜しいくらいだが、他の事業所の業績を変えれるのは、君しかいないと思ってね。」
俺は、深く頷き、社長の話を聞いていた。
そして、月日は流れ、いよいよ転勤の日が近づいて来た。
後輩「先輩、静岡行っても頑張ってくださいね、こっちに来ることがあれば、また飲みに行きましょう。」
後輩の目には、涙が溜まっていた。
俺「おう、ありがとうな、また飲みに行こうや。…みなさんも、本当にお世話になりました!ありがとうございました!」
俺は、電車に揺られ、静岡まで行った。
まずは、アパートに荷物を起きたいと思い、アパートへ。
俺は、資料とアパートを2度見、3度見くらいしたであろう、信じられないくらいボロボロアパートだった。
いかにも、という雰囲気も漂っている。
とりあえず、俺は自分の部屋に行き、荷物を起き、一息着いたら周りを散策しに行こうとした、その時だった。
俺「ん?なんだ?おい!誰かいんのか?出てこい!いつでもやってやんぞー!」
大きい声で、呼びかける。当たり前のことだが、誰も反応しなかった。
家を出ようとした瞬間、寝室に何か影のようなものが見えたのは、もしかしたら疲れていたからかもしれないと、思い部屋を後にした。
アパートの周りには、スーパーやコンビニ、色んなものが揃っている立地条件がいい場所だ。
散策していると、あたりも薄暗くなり始めたので、スーパーで買い物をし、アパートに帰ることにした。
アパートに帰った俺は、驚愕なものを目にした。
さっきまで閉めてあったキャリーバッグが開いていて、荷物が床に散乱している。
俺は、怖くなったが、何かの間違いだと、自分に言い聞かせ、その日は寝ることにした。
俺「……うわっ!なんでだよ、ここの扉昨日閉めてただろ……。」
寝室の閉めたはずの扉が少し開いていたのだ。
おかしいと思い、襖があったので開けて見ると…おびただしい数の御札がはられていた。
俺「……なんなんだよ、このアパート……完全に事故物件じゃねえかよ!」
と言った瞬間(パチッ、ドンッ!)と、ラップ現象が鳴り出した。
俺は、震えが止まらなくなり、布団に隠れ、心の中で、南無阿弥陀仏を唱えた。
しかし、ラップ現象は止まらない。
すると、家のどこかで、バタンッと言う音がした。
何かが、倒れたような、人が少し高いところから、着地したような音だった。
そのあと、足音のような音が遠くの方から聞こえてくる。
(ヒタ…ヒタ…ヒタ…)
俺は、さらに震えが止まらず、布団に隠れていると、スマホのバイブが鳴り出した。
俺はそれに驚き、布団から飛びててしまった。
俺は、また布団に戻ろうとすると、浴室とトイレを繋ぐ廊下に、髪の長い女性が歩いてるのが見えた。
「おいおい、まじかよ…こんなの聞いてねぇよ…。」
俺は、目を瞑り、心の中でずっと南無阿弥陀仏を唱えながら、この時間が過ぎてくれるのを待ったが、急に周りは静かになり。
安心して、目を開くと、斜め下に足が見えた。
恐る恐る、顔を上にあげると、髪の長い女性が、俺の方を睨みつけながら、立っていた。
そして、俺の顔に、顔を近づけ、「でていけ…でていけ…。」と言いながら、手を俺の首元に持って来ると、俺の首を締め出した。
「あ…ぁぁぁぁぁ……や…やめ……。」
俺は、意識を失い、その場に倒れた。
気がつくと、そこは、病院だった。
ベッドの、名前がかかっているところを見ると。
「精神科病棟D 西條 和基様」と、書いていた。
「なんで、俺が精神科病棟に入れられてるんだ?おい!出してくれ!誰か!!」
その他の部屋では、叫び声や、人が走ってる音が聞こえる。
精神科病棟Dは、精神的にかなり危ない人達が入るらしい。
だが、夜になると、今でも病室のドアをノックする音や、素足で歩いているような音が聞こえている。
(引っ越しする時は、みなさんもしっかりと物件概要を見るようにしましょう。
「心理的瑕疵物件」と書いているかもしれません。
それが、例え会社から用意されたものだとしても。
でないと、私のように、後々後悔することになるかも知れません。)
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