愛が欲しいの

@nonbiriko

第1話 「愛は買える」

 今から200年後、科学技術は進歩し、格段と便利な生活ができるようになった。車は空を飛び、自由に行きたい場所にワープできる。人々が望むものは全て実現され、これ以上の発展はないだろう、というのが世論だった。



 そんな中、世界中に大きな衝撃を与える論文が発表された。タイトルは、


       「愛は買える」


 「えー、私たちは長年、愛について研究してきました。愛とは、抽象的で、、、」


 「おい!!前置き長ぇよ!早く結論を言え!結論を!」


勇太は、テレビの前でうずうずしていた。愛というものに興味が出てきた高校1年生。大好きな里帆の愛を自分に向けたい。そんな純粋(?)な思いがあった。


しかし、そんなに簡単ではなかった。

 

発表された論文によると、愛を一度作るのに1000万、高校生には手が届くはずはない。

それは世界の多くの人も同じであり、少し経つとそんな論文の話は消えていった。


 一方、その愛を喉から手が出るほど欲しがった人もいた。


現実に、1000万が安いと感じる層も一定数いる。その一人が、東京で働く気の強い弁護士の女、美香だ。


美香は、金が大好きだ。金のためなら何でもする。「愛は買える」の発表を聞いて、ピンときた。


「これで私も億万長者よ!!」


美香には、これまでためてきた貯蓄があった。1000万なんてすぐに出せる。それに、容姿や男の扱いには自信があった。


 「愛を買って、死にかけの爺さんと結婚して、遺産を手に入れれば、、ふふふっっ、ふふっ」


 にやけが止まらない。すぐに決断し、研究者のもとへ。研究所への長い道のりも苦ではなかった。着くなり、嬉々として、


 「愛が欲しいの、売ってちょうだい」


と言った。研究者は、純粋な愛しか知らなかった。愛は美しい。愛を悪用することなどできまい。そう信じていた。この高飛車な女でも、きっと良い方向に使ってくれるだろう。


信じて、信じて、愛を、売った。

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