第4話「リフレイン」

 写真には仲良さそうにしている四人が映っていた。

 今から三年前の結成当時のパーティメンバーだ。

 真ん中に映っている栗色の髪の優男が俺。

 もう一人真ん中に映る赤毛で筋肉質の力強そうな男がエルト。

 桃色の長い髪をした大人しげな様子のサラ。

 栗色の短い髪をした活発そうなシェリー。

 みんな十五歳。夢と希望に満ちていた時代だ。

 俺達四人は同じ村で生まれ、同じ村で育ちずっと一緒に遊んでいた。

 体を動かすのが好きだったエルトとシェリー。

 それに対して本を読んでいるのが好きだった俺とサラ。

 エルトが剣を習い始めて、シェリーもそれに続きさらに二人に引っ張られて俺とサラも剣を習い始めた。

 やがて村一番の冒険者から四人共魔力があると言われていつの間にか冒険者になれるように鍛えられた。

 エルトは剣。

 シェリーは槍。

 サラは弓。

 魔力による身体強化が出来なかった俺は、魔道具を使う魔術師になるしか道は無かった。

 もっとも、いくつもの魔道具を試しても身体強化できるようになるだけで魔術らしい魔術は使えなかった。戦闘では杖による殴打しかできない魔術師はこうして完成した。

 十五歳の時に冒険者ギルドに登録して冒険者としての活動を始めた。

 サラと結ばれたのは二年前。

 冒険者になる前から見せつけるようなエルトとシェリーに対抗しての付き合いだいたようなところもあった。

 それでもずっと大事にしたいと思っていたが、現実はこんなもんだ。

 サラは俺じゃ無くてエルトを選んだ。

 そして俺はもう一枚の写真を見る。

 デビューしたての俺とセシルさんだ。

 セシルさんもまだギルド職員になって日が浅い時代。

 今では長い綺麗な緑色の髪も、当時はまだ短かった。美人なのは当時から変わらずだが。

 あの頃は俺も調子に乗っていた。

 ソロのオーク討伐。

 無事に帰って来なさいと言うセシルさんに「無事に帰ってきたら頬でいいからキスしてください」なんて生意気言ったもんだ。サラと言う恋人もいたくせに。

 少々怪我をしながら帰ってきた俺にキスしてくれたセシルさんは本当に優しい人だ。さらにその出来事はサラを始め誰にも言わないでくれた。

 現実逃避していたがそろそろ現実に帰ろう。

 俺は写真をしまった。

 周囲を見渡す。

 俺は魔獣に囲まれていた。びっくりするくらいの群れだ。

 当初の標的だったスライムは問題なく倒していった。

 スライムを倒している内にゴブリンが出てきた。

 ゴブリンと戦っている内にゴブリンの群れが出現。ゴブリンは群れでいることが多いので遭遇したら援軍を呼ばれる前に倒すか逃げるかしないといけないのに今までゴブリンの群れくらい殲滅していた俺の感覚はずれていた。四人だから出来た芸当で一人じゃ無理だったのだ。

 なんとかゴブリンの群れを返り討ちにしていく中で、今度はオークまで現れて、挙句の果てに上位種のオークまで見える。

 命を簡単に捨てる気はないが、さすがに少し命をあきらめかける。

「こんなところで死んでたまるか」

 赤く染まった杖を手に、俺は覚悟を決めた。

 生きる覚悟だ。死ぬ覚悟じゃない。

 俺が死んだとしたら絶対にあいつらはその事を語りあいながら笑って酒を飲むことだろう。

 こんなところで死んであいつらの酒の肴になるなんてごめんだ。

 上位種のオークに向かって行こうとした瞬間。

 弓矢が降ってきた。

 俺の目の前のゴブリンとオークに矢が降り注ぐ。

「サンダーボルト」

 オークの指揮官に雷撃が落ちる。

「バズ!」

 振り返った先には見慣れた顔があった。

 剣の技術だけならエルトと並ぶ剣士。バズ。

 セシルさんの弟分。いや、今じゃ本当の弟か。

「間に合ってよかったぜ。大丈夫か。テオ」

「バズ。どうしてお前がここに?」

「セシル義姉さんの依頼だよ」

「セシルさんが?」

「テオさんは自暴自棄になっているかもしれないからサポートしてって。予想通り過ぎてびっくりしたわ」

 そう答えたのはセシルさんの妹の魔術師ヒルダ。バズの新妻でもある。

「新婚早々悪いな。お二人さん」

 俺も杖を振り下ろして生き残っていたオークを仕留める。

 何気にけっこうなピンチではあったが、セシルさんのおかげで俺は無事に帰路に着く事が出来たのだった。

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