魔術の使えない魔術師として追放された俺の行く末

@kunimitu0801

第1話「追放」

「テオ。お前をパーティから追放する」

 宿屋でパーティリーダーのエルトの声が無慈悲に響き渡った。

「どうした?エルト。なんで急にそんなことを言い出すんだ?」

 俺は言われた事が信じられずにエルトに尋ねる。

「急にじゃない。前から考えていた事だ」

 エルトは静かにそう告げる。

「そうよ。アンタはこのパーティには必要ないのよ」

 そう言ってエルトの横に立つのはエルトの恋人で槍使いのシェリー。俺の事を見下すような目で見ながらエルトに続いてそう告げる。

「いいかげんに気付いて。テオ」

 俺の横に立っていた俺の恋人で弓使いのサラがエルトの横に移動しながらそう告げてきた。

「サラ?」

 俺の目の前にはエルトがいてエルトの右腕にシェリーが抱きついている。これはいつもの光景だからおかしくない。

 だが、俺の恋人であるサラがエルトの左腕に抱きついた。俺はこの光景が理解できなかった。

「サラ。どういうことだ?」

「見てわからないの。貴方みたいな追放される無能よりもエルトを選ぶわ。エルトはシェリーだけじゃなくて私の事も幸せにしてくれると約束してくれたのよ」

 追放を言われた時以上に目の前が真っ暗になった。

「一体いつから。……一ヶ月前からか?」

 依頼で疲れているからだと一緒にベッドに入れてもらえなくなったのが一ヶ月前だった。

「そういうところだけ察しがいいんだな。その通りだよ」

 サラではなくエルトが答えた。

「そ、そんな。どうしてだ?なんで。こんなことになった」

 わけがわからずに俺はみんなのことを見回す。みんな俺の事を見ながらニヤニヤ薄笑いをしている。

「なあ、こんな冗談。いいかげんにやめてくれよ。幼馴染だからって全く笑えないぞ」

 同じ村で育った俺達四人。酒を飲んで騒ぐ事はあってもこんな悪ふざけは今まで一度も無かった。

 サラが俺と別れてエルトのものになるとかちょっとふざけ過ぎだ。

「まだわからないのか。テオ。冗談なんかじゃない。本当にお前は俺達のパーティには不要な存在だ。お前以外の魔術師を新たに加えて俺達はA級に上がる」

 エルトがはっきりとそう告げた。

 そして今日のA級任務失敗の出来事を思い出す。確かにあれが達成できたらA級に昇格できるはずだったのだが、失敗したのは俺のせいじゃない。

「任務失敗を俺のせいにするなよ。足手まとい?俺の戦闘力が高いのは知っているだろう?」

「ああ、お前は戦闘力が高い。一対一の戦いなら俺に匹敵する」

 俺の戦闘力についてエルトはそう肯定した。

「じゃあ、どうして俺を追放する?」

「それはな」

 一呼吸おいてエルトが口を開いた。

「お前が魔術師のくせに何の魔術も使えないからだよ。このエセ魔術師!」

 俺はあまりの正論に何の否定もできないままその場に立ちつくした。

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