TARO令嬢 VS TORU令嬢

きばとり 紅

第1話 爆誕するTARO令嬢

ここにある世界がある。そこでは真実と正義と美の化身、TORUとおるの力を崇拝する王国が繁栄を謳歌していた。

 国の王子は世の令嬢たちの中に現れるTORUちからを見いだして、その者を妃とする風習を持っていた。

 そして今日、当代の王子が一人ジョー・キンはおふれの元に集まった貴顕淑女を前に言った。

「王家代々のしきたりに従い、今集まった淑女の中からTORUの祝福を受けし娘を見初めて我が妃としたい。さぁ、この中に我こそTORU力に目覚めた者という方はおられるか!」

 令嬢たちは王子の言葉の前に困惑した。ここで、

「私こそTORU力を与えられた娘です」

 ・・・・・・などと、胸を張って出ていけるほどのクソ度胸は誰も持っていなかったのである。

 だがジョー・キン王子もそれは折り込み済みだったのか、懐から一本の短い杖を取り出して掲げて言った。

「今よりこのTORU力に反応する杖を投げよう。この場にいるもっともTORUに満ちた娘を、私に告げたまえ!」

 王子は杖を集まる令嬢たちへ向かって投げた。すると、その杖は一人の娘の手の中へと落ちる。

「おお、あなたこそTORU力に満ちた娘。私と共にこの国を美と繁栄に導く者!」

「王子。なるほど私はあなたと、この世を美と繁栄に導きましょう。ただし、TORUによってではありません。なぜなら」

 というや、娘は手に落ちた杖をなんと、その手で真っ二つに叩き折った!

「私はTARO力の化身、TARO令嬢です!」

 会場に困惑と恐怖の悲鳴が響きわたった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る