プロローグ


僕には、昔からよくわからない能力があった。……能力と呼んでいいのかすらわからないが。それは、寝ると他人の夢に入ることが出来ると言う物。だからどうと言う事は無いのだが、それなりに楽しくやっている。


「それにしても、やっぱり夢って整合性もへったくれもないよなぁ」


「どうしたのお兄ちゃん?」


「なんでもないよ」


今日の夢は、何とも言い難い夢だ。多分僕より幼い子供の夢なのだろう、何もかもお菓子で出来た世界。まさにおかしな世界だ。


「また変なのがいる」


「何あれ?」


「さぁね」


まぁこの辺はもう慣れた。夢はもう見るだけ見た。でも今だによくわからない奴がいる。それがこの、黒い何かだ。うん、名前はわかんないけど、とりあえず黒い奴と呼んでいる。


「倒していいよね?」


「うん」


毎回僕にすり寄っては邪魔してくる奴なので、毎回何かで殴って破壊している。少なくとも、味方でないことは確かである。たまに夢の主に攻撃したりしているからね。


「よっと」


こいつの防御力は皆無に等しく、蹴り飛ばしただけで普通に消滅する。とは言え、誰に夢にもいる訳じゃない。本当に、たまーにいるのだ。だからこれがなんなのかはやっぱりわからないまま。


「っと、そろそろ起きるみたい」


「ほんと?じゃあねお兄ちゃん!」


「うん、またね」


入った夢の主が起きる時は、決まって世界そのものが崩壊していく。だから分かりやすいのだ。とりあえず僕も目覚めるとしよう。


「……どこここ?」


目覚めたら知らない場所にいた。どこだここは。少なくとも僕がいた孤児園って訳じゃなさそうだけど。まぁ碌な所じゃないだろうね、目の前に脳みそが浮いてるし。


「やぁ。キミを今回拉致監禁させてもらった……。あー。『ドリーム博士』だよぉ!」


「返してくれませんか?」


「話くらい聞いて?」


何なのこの人。……人?人か?脳みそだな。今話しかけてるこの声、多分目の前の脳みそだ。と言う事は、夢だな。


「寝る」


「イーヤッ、待ってくれない?!これ夢じゃないからね!?」


「……なんなんですか?」


「キミの事は寝ている間にあんなところからこんなところまで調べさせてもらったよ!勿論ご機嫌なアソコもね」


「死ねよ」


「わぁぉ辛辣ゥ!」


このおピンク色の脳みそぶっ壊して帰ってしまおうか。と言うかもう帰ろう。どうせ動けないだろ、こいつ。全く誰がこんな場所に連れてきたんだ……あ、こいつか。


「あー外に行くなら別にいいよ?」


「空気を吸うだけです」


ったく、なんでこんなことに……い?ん?え?どこ本当に?島?


「言い忘れてた。ここは『夢の島』。とある病人達が隔離される、クソッタレな人工島さ」


「なんで????????」


「まぁキミも流石に聞きたいことが多いと思うから?少しだけ何が気になるか言ってみるといいよ?」


「じゃあ聞くけど……ここはどこなんだ?」


「さっき言ったでしょ。人工島なの。病名は『ナイトメア』。……これに発症して眠ったら、一生目覚めない」


あー……?聞いたことが無いな。なんだそりゃ?と言うかわざわざ専用の島なんか作るレベルの病気なのか?そんなにヤバいところなのか?


「この病気は厄介極まりない症状があってね。具体的に言うとフェーズ3になったら確実に死ぬ。そして他者に感染するんだ」


「ハァ?」


「まぁ感染力はほぼ無いに等しいんだけどねぇ」


「フゥン」


「でも、色々面倒な奴がいるんだよこの世にはね。だから作られたのがここって訳」


「へー」


「話聞いてる?」


うーん何が何だかさっぱりだ。でもろくでもない病気って事だけは理解できたよ。


「でね。こっから重要なの。昨日一人の女の子が目覚めたんだよね」


「へー。いいことじゃないですか」


「そうだね。で、誰に助けてもらったのか聞いたら、キミが出てきたんだよ」


「……え?」


「つまりキミは、この世界で唯一ナイトメアを治療出来る人間って事さ」


「……はぁ!?」


「と言う訳でよろしく」


「俺に拒否権は無いのか!?」


「無いよ」


……なんてこった。こんなことがあるか!?なんでこんなことに……はぁ。まぁいいや。


「報酬はでますよね?」


「勿論。タダって訳じゃないよ?」


「……じゃぁ、やってもいいですよ」


どうせあそこにいても、一生暇なだけだろうし。

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『ナイトメアガールズ』~悪夢にとらわれた少女達~ 常闇の霊夜 @kakinatireiya

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