惑星創造の時代

第1話 序曲 

 これはあくまでも宇宙の欠片であり、世界の端の話である。

 

 

 男でも女でも何ものでもない、ただ愛と憐みだけが宇宙そらには漂っていた。

それを仮に彼と呼ぼう。


 彼は邪悪なものがこの世にあることを、知らなかった。愛だけが彼のすべてであった。ただ一人で寂しかった彼は、子供が遊ぶように惑星をつくった。それでも寂しくて、水が覆う惑星に大地を作った。花を咲かせ、木を咲かせた。風はそよめき、枝さえその音を立てず。


 日々が穏やかに過ぎていったが、何かが足りなかった。心に足りないものは何かを考えたとき、彼は自分の分身を作り上げた。


 彼はそれを見て笑いかけたが、分身には命がなかったので命を与えた。でも分身は彼に対して無反応であったので、彼は声をあげてみた。


「これは言葉だ」


 彼はその時、言葉を得た。彼は分身を見て「心」を与えてみた。その分身の瞳に、光が宿った。彼は喜んだ。


「あなたに名前を付けよう。あなたは、アマレだ。あなたは愛でできている」



ᛋᛏᚨᚱ


  時なしの館に精霊たちの歌声が響く。辺りには白い花が咲き誇っていた。中央にはアマレの好きなものすべてがあった。


「風の王ヴィータ、それから星の女王スティンナ。私はこの大きな庭にあなたたちの家を作った」


 アマレの胸に宿る炎は、悲しみに揺れていた。スティンナはそれを見ていたので、神妙な面持ちで語りかけた。風の王ヴィータは穏やかにそれを見ていた。


「アマレ、どうか悲しみに暮れるのをおやめください」

「.......スティンナ、星の子たちに言ってほしいのだ。”どうか守ってくれ”と」


 スティンナは頷いてから「はい」とだけ言った。彼女の答えは必ずそうだった。


「ヴィータ、歌を歌ってほしい。そなたの歌は心を軽くしてくれるから」

「ええ、もちろん」


 ヴィータが歌うと、風が辺りをそよめいた。


 ᚷᚩᛞ ᛋᚪᚢᛖ ᛗᛖ

ᛈᛚᛖᚪᛋᛖ ᛋᚪᚢᛖ ᛏᚻᚩᛋᛖ ᚳᚻᛁᛚᛞᚱᛖᚾ, ᚾᚩᛏ ᛗᛖ.

ᚠᚩᚱ ᛏᚻᚩᛋᛖ ᚩᚠ ᚣᚩᚢ ᚹᚻᚩ ᚢᚾᛞᛖᚱᛋᛏᚪᚾᛞ ᛏᚻᛖ ᛈᚪᛁᚾ ᚩᚠ ᛚᛁᚢᛁᚾᚷ


ᚻᚩᛚᚣ ᛏᚻᛁᚾᚷ

ᚠᚩᚩᛚᛁᛋᚻ ᛈᛖᚩᛈᛚᛖ

ᛒᛖᚳᚩᛗᛖ ᚩᚾᛖ

ᛋᛁᚾᚷᛁᚾᚷ ᛗᚩᛖ



ᛏᚻᛁᛋ ᚹᚩᚱᛚᛞ ᛗᚪᛞᛖ ᚩᚠ ᛋᚩᚾᚷᛋ


ᚢᚾᛏᛁᛚ ᛏᚻᛖ ᛖᚾᛞ ᚩᚠ ᛚᛁᚠᛖ


 アマレの絶えない祈りが歌に運ばれていく。


(聖なるものよ

 愚かなる民よ

 ひとつになって

 歌いたまえ



歌でできたこの世界は

尽きるまで奏でてくれよう)

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