君の話

「秋月君だよね?」

「僕はあなたのことを知らない。」

これが僕と彼女との最初の会話。

知らないと言ったのにはちゃんと訳がある。

 先月、僕の通う学校の近所の神社であったお祭りでのこと。僕は親友の晃に誘われてそのお祭りに行った。まあ、僕自身はお祭りなんて興味無かったけれど、いい写真が撮れるぞと言われてしょうがなく。僕は写真を撮ることが好きなんだ。

 お祭りには放課後、学校から直接向かったんだけれど神社につくとそれはもうすごい人の数で、すぐに晃とはぐれてしまった。神社の中にいるのは確定だから、また再開したら一緒に回ろうってことでお互い探しあうこともせず。そんな具合でいい写真が撮れるところを一人で探しているとき、神社の鳥居と夕焼けが綺麗に重なって息を吞むような景色が。僕はすかさずカメラのピントを合わせ写真を撮ろうとしたんだ。カメラを覗き込んだ先に映ったのは夕焼けと鳥居、だけじゃなかった。女の子が一人。夕焼けを見るその顔はどこか悲しげで。着ていたシャツとズボンは彼女を包み込む浴衣のように見えた。夕日を撮ろうとしたカメラの焦点は、勝手に彼女のほうへと流れていった。

 彼女の写真を撮ろうとしたその時、後ろから晃が来て我に返り僕の行為は危なく未遂で終わった。カメラの電源を切りもう一度鳥居のほうを見渡すと、もう女の子の姿は見えなくなっていた…。

これが僕と彼女の初めて会った…いや、初めて見た日のこと。もう二度とその子と会うことはないと思っていたし、会いたくなかった。僕がしようとした行為が何らかの形で知られたら僕の人生は終わってしまう。とか考えていたら、まさか同級生だったなんて。しかも彼女は僕がしようとしたことに気づいていた。

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