2錠と心

学生のあやちゃん

第1話

小学2年生の初夏、初めて救急車に乗った。


息ができないから苦しい。


全身がガタガタと音を立てて震え、寒い。


名前を聞かれても、口が思うように動かない。



ただ車の天井を見上げて涙をひたすら流した。




「まま」


「何」


「苦しい。気持ち悪いの。」


「だから何」


「体が動かしにくくて…」


「何が言いたいの!!どうしたいの!!私は忙しいんだから!!」


学校から戻り、明らかに感じたことのない体調の悪さを、どうしたらいいかわからず母に尋ねようと思った。


が、その日は虫の居所が悪かったのを私は察することができず、怒号が飛んできた。


そんな母は委縮した私を見ると部屋へ戻っていった。



夕食時、機嫌がなおった母、父、兄とテーブルを囲んだ。


可愛いご飯のクマが、カレーの風呂に浸かっている。少し凝った夕食だった。


大きな黒いハコに映された一人の男が笑いを誘った。



突然世界が暗闇に包まれた。



私を誰かが呼んだような気がしたが、すぐに何も感じなくなった。


気が付いたら知らない大人が二人、横には涙を流す母。


訳も分からないまま、車は発進した。



その数日後、2度も発作を繰り返し、入院。



「てんかんっていう病気なんだ」


まだ幼い私には医者も親からも何も細かい説明は無かった。


だから当時の私はただ、何かの病気になって、3週間ほど学校には通えなくなった。

という認識だった



退院後。それからが地獄の始まりだった。



毎日ベッドの上にいるか、車いすでの移動だったのだから、当然体力も筋力も落ちていた。


思うように動かない体に違和感を感じつつも、そのまま過ごした。



友達の誘いを申し訳ないと断り、溜まったテストを、分かりもしないのに消化する休み時間。


必要最低限の外出と運動は許されず、以前のように、走り回ったりする楽しい生活は全くできなかった。


やがて活発だった性格も、室内にいることが増えたからか、おとなしくなった。



テストを消化しきって昼休みを楽しもうと思った矢先。



「ねえねえ、一緒に遊ぼ?」


「」


「もうテスト終わったからさ…あ…。」



クラスのリーダー格の女子を中心にいじめが始まった。


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