諦念

根上真気

第1話 諦めています

 今はもう、色々な事を諦めています。

 夢、希望、理想、友情、愛情、生活、そして幸せ。


 ウチはきっと、一人野垂れ死ぬん思います。

 こんなふうに言うと、カッコつけとる思われるかもしれませんが、そんなんちゃいます。

 ウチの最期は、誰にも見られず孤独で惨めで無様で陰惨極まりない死に方で終わる思うんです。

 これは悲観ではありません。

 分析です。

 自分の経験と知識とセンスで冷静に分析した結果の結論です。


 そしてそれは、日に日に確信めいてきて、それこそウチにとって、自分の人生に於いて唯一わかっとる事にさえ思えます。

 ウチは別段悲しい事を言うとるつもりはありません。そもそも、わざわざ言葉にする程の事でもありません。


 ウチは、これは少し大袈裟な言い方かもしれませんが「宿命」だと思うとるのです。運命ちゃいます。宿命です。


 ウチは、もうそこそこ生きてきましたが、何一つ、何にもなっていません。

 それはおまえの気持ちの問題じゃないのか?そう言うてくる人もおるでしょうが、ウチはその「気持ち」すら、どうにもなっておらんのです。

 むしろ、その気持ち、即ち心が、一番どうにもなっておらんのです。


 一応自分なりには一生懸命生きてきて、多少の経験と知識も身に付け(といっても非常に心細いものですが......)様々な試行錯誤をしてきたつもりですが、それでも結局、何ひとつどうにもなりませんでした。


 今となっては、考え方や思想、気の持ち方云々ではどうにもなりません。

 自分で自分をうまく扱えないんです。

 いつまで経っても、ちっとも扱えるようになりません。人とおる時も、一人でおる時も。


 人とおる時の自分。

 ウチは、いつもフワフワしてまいます。

 変におちゃらけてまいます。

 そうじゃない時は、ただむっつりしてまいます。

 自ら望み選んでそうなっているのならええのですが、望まなくともそうなってまうのです。

 これは強烈過ぎる自意識と劣等感のせいなのでしょうか。

 それとも弱さでしょうか。


 ウチはいつも、相手の感情ばかりが気になってまいます。

 自分がどう思うかより、相手にどう思われているか、そればっかりが気になります。

 何かまずい事言ったかな、まずい態度を見せてないかな、うっとうしがられていないかな、気持ち悪がられていないかな。


 好かれてるかなとは一切思えないのに、嫌われていないかなと常に疑い不安と恐怖におののいています。

 そんな具合なので、ましてや自分についての話などはとてもじゃないけどできません。

 なんか恥ずかしく、はにかんでまい、それこそ、なんだかこんな話で申し訳ないなとさえ思ってまう始末です。

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