真紅、紅蓮、爆炎。
向かい合う巨人と男。彼らは、互いに互いのことを知らない。片や、魔王に魔改造された
しかし、彼らにとっては互いに目の前の相手はただの敵でしかなかった。
黒い鎧の男は、黒刃の大剣……ラマネーロと銘打たれたそれを構え、その剣先を巨人の眉間に合わせると、大地を踏みしめて跳躍した。
「……」
「グオオオオオッ!!」
無言で飛び掛かる男を迎撃するように振り回される紅蓮の拳。回避が困難で無防備な空中で迫る巨大な拳に、男は振り上げていた大剣を打ち付けた。
「ッ!」
かちあった拳と刃。瞬間、爆炎が巻き起こり男は地面まで吹き飛ばされた。
「グオオ……」
だが、巨人の方も無傷では済まなかった。大剣とぶつかり合った拳には黒い傷跡が縦に入っている。本来簡単に再生してしまえるはずの切創は黒いジュクジュクとしたものに覆われ、再生する素振りを見せない。
「……グエリロ」
そこで男が一言呟いた。虚ろな瞳に、一瞬だけ光を映し出して自らの名をただ一言呟いた。
「グオオ……グオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!」
それが恐らく彼の名であると察することは出来たグランだったが、彼は人の言葉を話す術を持たない。故に、小動物程度ならばそれだけで殺してしまえるような咆哮で返した。
「『……黒陣、敷く。黒塵、舞う。黒刃、振る。
男の、グエリロの周囲から黒塵が舞っていく。それはどんどんと周囲に広がり、拡散し、数百メートル程度の範囲に散布された。更に、黒い巨大な壁がドーム状にその範囲を覆っていく。
「グオオォ……」
周囲を見回すグラン。作り出された黒いドーム状のフィールド。彼は知らないが、この
更に、この空間には常にグエリロに有利に働く黒塵が舞っている。この黒い粉塵は吸い込んでしまえば体内から蝕まれ、肌に触れれば傷付けられる、凶悪な性質を持つ。
「……」
「グオオォ……?」
しかし、グランの煮え滾る超高熱の肉体はこの砂粒程度の粉塵を簡単に溶かし、蒸発させた。体内に入った黒塵も、彼の結晶化した鱗に触れた黒塵も、等しく無意味に消えていった。
「……
それを見たグエリロはゆっくりと片手を天に向けた。すると、彼の言葉と共に宙を舞う黒塵達が集合し、黒い刃の形を成していく。
「……グオオ、グオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!」
良く分からない空間に暫く様子を見ていたグランだったが、暴虐と闘争を好む彼の忍耐力はそろそろ限界だった。グランは耳栓をしていても鼓膜を破壊するほどの咆哮を上げ、周囲に大量の黒い刃を浮かべるグエリロに猛進した。
「……ッ!」
「グオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
猛進するグラン。その体に突き刺さる無数の黒い刃。どれも大剣程の大きさがある刃が幾ら刺さっても、グランは怯まずに突き進み、その拳をグエリロへと叩きつけた。
「グオオ……」
響く轟音、弾ける爆炎。しかし、その拳の下のグエリロは息絶えていなかった。大剣を斜めに構え、拳をなんとか受け止めていた。
しかし、当然彼は無事ではない。黒い鎧は所々が溶けて原型を無くし、その内側の体は全身大火傷と言ったところだった。
「
「グ、グオ……ッ!?」
未だに拳を受け止めたままの黒い大剣が、妖しく光り出す。嫌な気配を感じたグランは拳を退けて後ろに下がろうとするが、光はあっという間にこの黒いドームの中に強く満ちた。
「
「グオオオオオォオオオオオオオオッッ!!!」
満ち切った黒い光。それは、黒塵すらも呑み込んで爆発し、
消え去った黒い半球。そこに、グエリロの姿は無い。塵一つ残さず消滅してしまったからだ。そして、そこにグランの姿も無い。
「うわ、アレは……危なかったね」
必死の救援要請の末、ネクロの
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます