力を合わせ、突破しろ。
五分後、スライムの前で二人の男が息を荒くして膝を突いていた。
「ク、ソ……なんかあるとは思ってたが、ここまでとは、なァ……」
「……ムカつくなぁ」
苦しそうな二人にニコニコしながら近寄ってくるのはレヴリスだ。
「お二人とも大丈夫です? 因みに私は元気ですよ?」
「うっせぇよクソが。言うこと聞いてやるからその顔やめやがれ」
近寄ってきたレヴリスに向かって投げやりに大剣を振るうが、レヴリスには当たらない。
「むぅ、釣れないですね〜……ま、良いのです。私の指示を聞いてくれるなら万事オッケーなのですよ」
うんうんと頷きながら言うレヴリスだが、その傍にリーノがちょこちょこと来て、耳に顔を寄せた。
「……彼らを本当に信用できますか? 私は出来ません」
「気持ちは分かるのです。でも、ドレッドさんとは何回か話したことがあるので大丈夫なのです。約束は絶対破らないはずなのです」
説得するレヴリス。言葉を終えると同時にブレイズが立ち上がってレイピアを地面に突き立てた。
「なのですなのですうるさいなぁ……良いから、あのスライム殺そうよ。約束は守るからさぁ。僕、今凄くイライラしてんだよね」
「ふんふん、分かったのです。じゃあ、協力して行くのですっ!」
それぞれが得物を掲げ、ミュウに向き直ったその瞬間。
「────大丈夫かッ!!!」
ガチャリと黒の扉が開き、暑苦しそうな赤髪の男を筆頭に三人のプレイヤー達が入って来た。
それから数分後、慣れない連携も何とか形になり、増えた人数もあってミュウを圧倒することが出来ていた。
「今だッ、行くぞッ!!!」
ミュウが見せた隙に、暑苦しい赤髪の男が直剣を持ってとびかかる。
「必殺、熱血剣ッ!!」
存在しない技名を叫びながら燃え盛る剣を振り下ろす熱血漢。しかし、ミュウの体に沈んだ剣は直ぐに火も消え、勢いも失われた。
「ピキィィ……ッ!」
そのまま男の片腕をミュウは巻き込み、呑み込もうとする。
「させないよぉぉぉ……」
赤髪の男の仲間である青髪の男が札をミュウに飛ばして貼り付けると、札が貼られた部分が一瞬にしてピシリと凍りついた。
「砕け散れェッ!!」
凍りついた一部分に、ドレッドの大剣が振り下ろされる。すると当然、その部分は砕かれ、ミュウは体の三割ほどを失った。
「僕も少しは役立たないとねっ!!」
続けてブレイズのレイピアがミュウの体に突き刺さり、ミュウの体内で炎が爆発する。それによるダメージは無いようだが、衝撃でミュウの体はぶわりと大きく広がった。つまり、圧縮されて上がっていた防御力が下がったことになる。
「みんな、ここを狙うのですっ!」
レヴリスから紫のオーラを漂わせる闇の刃が数本飛ばされ、ミュウに突き刺さる。突き刺さった刃は紫のオーラを巻き込んで爆発し、その部分を黒紫色に染めた。
「了解です」
「分かりましたッ!」
リーノの短剣とアブリの煮え滾る剣が黒く染まったその部分をいとも容易く削り取っていく。そう、レヴリスによって黒く染められた部分は防御力と耐性の両方が脆弱になっているのだ。
「まだまだなのですっ!」
一度では終わらず、レヴリスの闇の刃はミュウを襲い、小さくなっていく体を黒く染めていく。
「オラァッ!」
「死ねェッ!」
「終わりだァッ!」
「……斬る」
「焼けろッ!」
それぞれが、それぞれの全力をミュウにぶつける。デバフを受け、ダメージを蓄積し、行動を阻害されているミュウは大した抵抗も出来ないまま体力を一瞬で減らしていく。
「終わりだ死ねェッ!!!」
小さくなったミュウにトドメを刺そうと斬りかかるのは、増援の三人の内の一人、ァージだ。飛びかかりながら闇を帯びた剣を高速で振り下ろし、ミュウを両断しようとする。
「……ピキィ」
が、ミュウは斬られる寸前で自ら体を二分し、分かれた二体で同時にその男の口の中に飛び込んだ。
「もッ、むぐッ!?」
口から入り、喉を通って完全に体内に侵入する。ァージを内側から喰らい、少しずつ体を取り戻し、回復していくミュウを殺そうとァージは自分の体に剣を突き立てるが、意味は無い。
「ぐッ、ぐがァッ!?」
ァージの体内で毒を分泌し、溶解液で体を溶かし、種族スキルで喰らい、悪食で吸収する。標的となっているァージは当然平気では無く、ゴリゴリと体力が減っていき、体が僅かに爛れていく。
「くッ……止むを得ません」
レヴリスが短剣を構え、ァージに向ける。しかし、それに異論を呈す者は居ない。
「ぐ、ぞォッ!! オレ、ごど、やれェエエエエエエエッッ!!!」
瞬間……爆発、斬撃、打撃、呪術、魔術。様々な攻撃がァージを襲い、彼の体は一瞬にして爆散した。その後に緑色の粘体生物は残されておらず、代わりに目の前の扉が独りでに開いていた。
「クソッ、すまねぇ……すまねぇ、ァージ……」
赤髪の男が膝を突き、悔しがる。青髪の男がその肩に手を置き、石で塞がれた天を仰いだ。それを見たレヴリスは何かを言おうと暫く止まっていたが、結局は何も言わずに扉の先へ歩き出した。
♦︎……ネクロ視点
激戦を乗り越えた九人が塔の奥へ進んでいくのを、
「ふぁぁ……流石に危なかったね。
「ピキ」
「一応話には聞いてたけど、ちゃんと開くんだねあの扉」
アクテンからボスモンスターが死ぬか、部屋から居なくなると勝手に扉のロックが外れると聞いていた。設定した存在がいる限りと言う制限がある代わりに扉は絶対に開かなくなる仕様らしく、その仕様は問題なく機能したようだった。
「さぁ、次は第二層だけど……超えられるかな?」
僕は微笑み、彼らの動向を見守った。
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