合流
長い戦いが続く第一層。レヴリス達は幾度も大技を放ったが、それは決してミュウを殺せず、また致命傷に至らしめるような攻撃は避けられていた。
「はぁ、はぁ……これ、無理なのです。対人専門のスキルと相性悪過ぎです」
基本的に、PK達が持つ技は対人を目的としたものしかなく、人間の脆い体を効率良く一瞬で壊すことだけしか考えられていない。
なので、防御貫通系の技能はあっても再生阻害は出来ず、首狩りなどの弱点を狙って特大ダメージを与える技も意味は無い。つまり、ミュウに対する有効打が無いのだ。
「でも、殺せないのは向こうも同じなのです」
「近付かなきゃ問題ないって感じっしょ? ま、俺なら近付いても死なねーけど」
自信満々に言い切ったケイルは、確かに耐久力が高く、ミュウに近付いてもちょっとやそっとでは死なないだろう。それは、彼が
「一応光魔術は使えるようですが、威力は低く脅威にはならないですね。ただ、毒液や溶解液を飛ばしてくるのには注意すべきです」
冷静に言うアブリの手に握られた剣は、熱く煮えたぎっている。焼灼剣士の権能だ。
「……このスライムを無視して進むことは出来んのか」
険しい表情で言うタキンに、リーノが首を振った。
「先程確かめましたが、不可能でした。飽くまでもダンジョンのつもりなのでしょう。破壊することは一応出来るようですが、どちらにしろ私たちには無理です」
若干、諦めの空気が漂い始めたボス部屋の中、後ろ側で黒く重厚な扉がガチャリと開いた。
「よぉ、苦戦してんなぁ?」
「やぁ、苦戦してるね。手を貸してあげようか?」
荒れた茶髪にボロい服、無骨な大剣。男の名はドレッド。
赤髪に高貴な服の美青年、小綺麗なレイピア。男の名はブレイズ。
「ドレッドに、ブレイズ……ッ!?」
登場したまさかの人物に目を剥く
「おぉそうだ。ドレッド様にブレイズ様だ。可哀想なお前らの為に助けに来てやったぜ?」
対して、自信満々に言い放つドレッドとその陰で微笑むブレイズ。
「あぁ、デス・ペナルティの負け犬二人ですか。ところで、見ての通り俺たちは無傷ですが何の用で?」
傲岸不遜な口振りに苛立ったアブリが挑発する。が、ドレッドはそれを聞いて笑い出す。
「ハハハッ! そうかそうか、無傷か……そっちのスライムとお揃いで何よりだなァ? 天下の
ドレッドの言葉に苛立つ彼等だが、その言葉は悔しい程に事実だ。ただのスライム一匹に、五人も揃って傷一つ付けられずにいる。
「お久しぶりなのです、ドレッドさん。そこまで言うなら二人でそのスライムを倒して欲しいのです」
「ほぉ? まぁ、言われるまでも無く倒してやるが」
ドレッドは答えたが、レヴリスは首を振った。
「待つのです。あれだけ大口を叩いたので倒すのは当然なのです。でも、もし五分掛かっても倒せなかったら……今回の作戦中は私の指示を聞いてもらうのです」
ドレッドは笑った。
「ハッ、ハハハッ! 勿論、良い。寧ろ五分もいらねぇな。一撃で片を付けてやるよ。ブレイズ、お前も良いよな?」
「勿論、構わないね。だけど一つ、条件を付けさせてもらうよ」
ブレイズが言うと、レヴリスは首を傾げた。
「僕たちに対する妨害は禁止だ。もしかしたら僕たちを邪魔して指示下に置きたかったのかも知れないけど……残念。それは禁止させてもらうよ」
ブレイズの言葉にレヴリスはプッと吹き出しながら、笑顔で頷いた。
「ふふっ、妨害禁止ですか? ふっ、ふふふ……勿論なのです。そのくらいなら全然良いですよ。ふふっ」
余りにも的外れな事を言うブレイズに思わず笑ってしまうレヴリスだが、ブレイズは怪訝そうな顔で睨むだけだった。
「……何を笑ってるのか知らないけど、もし僕らがあのスライムを仕留めたら覚悟しておきなよ」
一睨み効かせたあと、ブレイズはドレッドと並び、様子を見るようにプルプルと揺れているミュウに襲いかかった。
「知ってっかァ? スライムってのは大抵斬撃に弱いんだよッ!」
「そして、グリーンスライムは火に弱い。知ってるかなッ!」
ドレッドの大剣がミュウの体にめり込み……ポヨンと押し返される。
「なァッ!?」
ブレイズの燃え盛るレイピアがミュウの体に突き刺さっていき……特に何のダメージも与えずに抜けていく。
「嘘ッ!?」
思わず五人の方を振り返った二人だが、彼らはしてやったりと言う風に笑みを浮かべていた。
「それじゃあ、あと五分なのです。頑張って下さいっ! ふふっ」
ドレッドとブレイズは、顔を真っ赤にしながらも冷や汗を垂らしていた。
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