赤竜、堕つ。
赤い翼をはためかせ、グランの手もすり抜け、空へ逃れようとする竜。しかし、それを追う影があった。
「待てやトカゲ野郎ッ、
「カタカタッ!」
「グォオオオオオオオッ!!」
体力の殆どを代償に赤黒いオーラがエクスに纏わりつくと、エクスは凄まじい力で跳躍した。その直後、竜の背中に凄まじい衝撃が走った。
続けて、クレスによって巨大な氷の杭が発射され、竜の翼の付け根辺りに突き刺さる。最後に、スキルによって雲を突き抜ける程に跳躍したロアが大斧を竜の頭に振り下ろした。
『ぐぅッ、ガッ、ガハッ……ェ、ハァ……』
しかし、それでもなお飛び続ける竜。もはや息も絶え絶えだが、そこに新たに襲いかかる影があった。
「
『グガァァァァッ!?』
闇の槍を生み出し、その中に入り込むと……竜に近付いた辺りでグワリと
『ガッ、ガァッ……グフゥ……』
遂に飛ぶ力を失い、頂上に墜落した赤竜は、力無く声を漏らした。
『貴様、らぁ……許、さん……たちいることはぁ……ゆるさん、ぞぉ……』
なんだか情けない感じの声になっている竜は、それでも僕を睨みつけた。
「あはは、ごめんね。許してね。ところで、僕の仲間になる気はあるかな?」
『なぁいッ! あるわけが、なかろう……ッ!』
地面に寝そべったまま凄む竜。図体は恐ろしいが、その体勢は些か迫力に欠ける。
「じゃあ、死んでゾンビになってもらうけど良いかな?」
『……き、貴様ァッ!! この我の亡骸すらも弄ぼうと言う気かッ!』
倒れていた竜が、僅かに体を起こした。従魔達が焦ったように戦闘態勢を取る。
「いやいや、弄ぶなんてとんでもないよ……だって、勿体無いでしょ?」
『もったいないだと?』
体を少し起こしたまま竜は問いかけた。
「竜の体をそのまま腐らせるなんて勿体無いじゃん? だったら、僕が腐らせてついでに動けるようにしてあげた方が良いかなって。……だから、寧ろ敬意だよ。君が強くて凄いから、どうしても仲間にしたいんだ。アンデッドに変えるんだ」
僕が答えると、竜は目を細めた。
『……悍ましいな、貴様は』
「あはは、失礼だなぁ。それで、どうする? 僕としては出来ればそのまま仲間になってくれた方が嬉しいんだけど」
僕が言うと、竜は起き上げていた体を下ろし、考えるように目を伏せた。
『…………条件がある』
来た。また条件かぁ。なんか、最近はいっつもこうだなぁ。
『立ち入るな。頂上の地下に立ち入らなければ、仲間になってやろう』
至高の謎掛けでも仕掛けたかのような表情で僕を見る赤竜。だが、僕からすれば何のことやら全く分からない。
「うん。良いよ?」
答えた。快く答えたが、竜は怪訝そうな目で僕を見た。
『……本気か?』
本気だけど。
「うん。頂上の地下に何が隠されてるのか知らないけど、僕からすれば竜に勝るものは無いね」
恐らく、竜の集めた財宝か何かだろうけど、僕からすればそんなものよりも竜の方がずっと価値があるものだ。
『まさかとは思うが、貴様……何も知らずにここに来たのか?』
「え? まぁ……うん、そうだね」
特別な何かがあるとは聞いてないね。
『…………そうか』
竜は諦めたように目を伏せた。
『もう良い。もう仲間でも何でも良いわ。我はもう疲れた』
「あ、そう? じゃあ契約しようか」
遂に生きた竜と契約か。僕も立派になったもんだよね。
『あぁ……なぜ我は、こんな奴に負けたのだ』
なんか嘆いてるけど、もう遅いよ。
「契約の方は僕から出来るから心配しなくて良いけど、内容について話そうか」
『……あぁ、なぜ我はこんな奴に……』
だから、もう遅いって。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます