人魔融合体
♦︎……ネロ視点
グラのやつが焦ったように鳴くのが聞こえた。こりゃぁ良い。洞窟内に侵攻するのは良いんだが、さっきまで暇すぎて困ってたんだよ。どうやらそれは俺の隣にいるロアってオーガも同じで、凄まじい咆哮をあげながら突っ込んで行きやがった。
くひひッ、それじゃあ……俺もそろそろ行くとするか。迷路のように分岐している洞窟だが、取り敢えずグラの居るところはグラに任せるか。
「クキャッ!」
俺は地面を蹴って最前線まで躍り出ると、素早く剣を抜いてすれ違いざまに敵を一体斬り殺した。それから直ぐに周りを見ると、人に魔物をくっつけたような化け物で通路が溢れていた。
「クキャ」
ったく、見れば見るほど気持ち悪い敵だ。しかも、虫みたいにうじゃうじゃいやがる。まぁ、それに関してはうちのゴブリン達も同じなんだけどな。
「ッ! クキャッ!」
っと、流石に敵の群れのど真ん中に居るのは危険だったか。転移があるとはいえ、迂闊な行動は謹んでおくか。
「クキャ……」
さて、この化け物どもの群れを一気に片付ける方法は……あるじゃねえか。
「クキャ、クキャキャ」
俺は仲間達を後ろに下がらせ、俺一人で化け物どもと向かい合うような構図を作った。
「クキャ(
化け物どもが俺に向かって走ってくるのを見た俺は、直ぐさま目の前の空間を拡張した。大体一メートルくらいの通路が拡張され、真っ直ぐだったはずの通路の一部が広間のように変化する。
くひひっ、そうだ。どんどん入ってこいよ。
俺は化け物どもの群れを斬り刻み、押し退け、闇の魔術で壁を作ったりなどを繰り返して拡張された空間に敵を押し留めるようにして戦い、時間を稼いだ。
「クキャ」
そろそろだな。拡張された空間の中が一杯になるように敵が入ったのを確認すると、俺は
瞬間、グチャグチャグチャッ! と、肉が潰れるような凄まじい音が鳴り響いた。
「ク、クキャ、クキャキャキャッ!!」
くひひひッ!! 最高じゃねえかッ!! くひひッ、良いねぇ良いねぇ! 俺の作戦通りィ、計画通りィ! 肉塊になってくれてありがとなァ!!!
いやぁ、全く以って知能が無いってのは弱いな。俺がやったことと言えば単純だ。拡張した空間に敵を詰め込んでおいて、一杯になったら元の大きさに戻してぶっ潰す。
簡単に例えるなら、一杯一杯にトマトを詰め込んだ袋を思いっきり踏み潰すみたいなもんだ。どれだけ素晴らしい能力を持っててもよ、おつむがそれじゃあ勝てねぇわな。
「クキャキャ……」
さて、この通路は肉塊で埋まっちまったが……
「クキャ(
それをこじ開けるくらい、俺からすれば楽勝なもんだ。通路を埋め尽くしているグチャグチャに混ざり合った敵の死体に透明な刃を放ち、道を作った。
「クキャ、クキャキャ(ほら、お前らも行くぞ)」
さて、まだまだ敵はいるみてぇだが……お、何だあいつ? 人間のメスだな。黒い短髪に黒い目、黒い服……目が虚ろなこと以外に異常はねえな。単に精神を壊されただけの普通のガキっぽいが。
「……こちらS-2。高エネルギー反応を確認。標的、排除」
「クキャッ!?」
速いッ! 人間の出せる速度じゃねぇ! だが、さっきまでの化け物みたいに人と違うパーツなんてどこにもねぇしな……いや、待てよ。
「クキャ!? (こいつまさか!?)」
アーテルと同じタイプか!? アーテルもここのボスに色々とやられたって言ってたが……こいつも同じタイプみたいだな。しかも、アーテルよりも速い。だが……感情は無さそうだな。
「白糸、爆灯液」
ガキの指先から白い糸がスーッと伸び、俺の腕に絡みつく。更にその糸からオレンジ色の液体がジワリと滲み出てくる。何だか分からんが、このままだとマズイ。
「紅蓮火」
「クキャッ! (
俺がガキの後ろに転移すると同時に、俺がさっきまでいたところが赤色とオレンジ色に明滅しながら爆発した。何も知らなければただ綺麗なだけだが、あれを食らっていたらと考えるとゾッとする。
「クキャッ!」
しかし、今この瞬間は俺が有利だ。ガキの背中を取っている俺は剣に
「緑域により攻撃を察知」
が、視角外から振り下ろされたはずの俺の剣は簡単に回避された。それと、なんだって? りょくいきにより攻撃を察知……りょくいきって一体何だ? いや、待てよ。見える。見えた。
「クキャ……」
成る程な。緑の領域、略して緑域ってわけか。あのガキの周りには薄っすらと緑色の何かがドーム状に張られている。あれに触れると攻撃を察知されるって訳だろうか。だが、その範囲自体はそう広くない。横幅は直径一メートル、縦幅が二メートルってところだろうか。
まぁ何にしろ……察知されても避けられないように攻撃すれば良いってことだろ?
「種蒔……鋼鎖、成木」
ガキが緑色の何かを洞窟に撒き散らすと、ガキから伸びた鋼の鎖が俺を掴み、それと同時に洞窟の至るところから木が槍のように鋭く生えて俺を突き刺そうと迫った。
「クキャッ! (
だが、俺に対して拘束は無意味だ。どれだけの強度で掴まれようが俺を捕らえることはできない。俺は緑域に入らないように注意しながらガキの背後に転移した。
「クキャッ?!」
と思ったが、ガキは緑域に入っていないはずの俺に一瞬で振り向きながら拳を振るってきた。その拳は光を鈍く反射する鉛色に変わっていた。
「……クキャ(痛ぇな)」
金属と化した裏拳を腹に食らった俺は吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。
「成木、紅蓮火」
ガキの言葉と共に背後の壁から木が鋭く生え、俺の肩を貫いた。更に、畳み掛けるようにガキの手の平から真っ赤な火球が放たれた。それは、火魔術の|火球ファイヤーボール》よりも更に赤く、熱を発している。
「クキャ……クキャ(やるじゃねぇか……
俺は火球を避ける為、ガキの斜め後ろ辺りに転移した。ガキは俺が転移したのを見ると即座に振り返りながら拳を振るったが、少し離れたところに転移していたので当たりはしなかった。
「クキャキャ……クキャ(ガキだからってもう油断はしねぇ……|闇刃《ダークカッター)」
俺は闇の刃を手の平から撃ち出した。ガキは飛び退いて回避したが、その瞬間に俺は
「クキャ、クキャ(
そしてトドメだ。俺は
「緑域凝固ッ!」
ガキが
しかし、それだけで俺の攻撃は終わらない。
「クキャキャ……クキャ(何やっても無駄だぜ……
俺は
「緑域凝固」
「クキャ、クキャ(
俺はガキの背後から透明な刃を放ちつつ、ガキの真上に転移した。再度緑域が硬化し、闇の棘と闇の刃がゴリゴリと緑域と鬩ぎ合っている。緑域はゴリゴリと削られ、少しずつ小さくなっていく。
「クキャッ、クキャッ!(終わりだッ、
そして、剣に
「……ぁ」
ガキは小さい呻き声をあげると、暴れながら飛び退いた。そして、震えるその手から小さな火球を撃ち放った。
「キャ、クキャ……クキャ(諦めな、嬢ちゃん……楽にしてやるよ)」
俺は火球を軽く回避し、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます