ゴブリンの巣
さて、早速スキルを弄るとしよう。僕はロアのステータスを開いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Race:オーガ・ゾンビ Lv.49
Job:
Name:ロア
HP:278
MP:128
STR:293
VIT:204
INT:112
MND:132
AGI:166
SP:110
■スキル
□パッシブ
【HP自動回復:SLv.7】
【MP自動回復:SLv.5】
【光属性耐性:SLv.3】
【悪食:SLv.3】
【気配察知:SLv.4】
□アクティブ
【斧術:SLv.6】
【跳躍:SLv.4】
【
【体術:SLv.3】
【咆哮:SLv.3】
【投擲:SLv.3】
■状態
【従魔:ネクロ】
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
うんうん、結構ステータスが伸びたね。スキルレベルも上がってる。
「えっと、攻撃のバリエーションだよね……」
「グォ。(はい)」
うーん、最初は【爪撃】とか取ろうかと思ってたんだけど……近距離の攻撃手段は斧で十分だろうし、斧無しでも体術があるからある程度は戦えるだろうし……遠距離も一応投擲はあるけど……投げるものがないと弱いっていうのはあるよね。
「……いや、でも」
よく見たらINTも100超えてるし、MPも十分あるね。これ、魔法とか使えるんじゃないの?
「ねぇ、ロア。火属性とか闇属性とか、そういう奴の中だと何が一番好き?」
「……グォ。(氷です)」
こ、氷かぁ……まさかの基本属性以外。取得に30SP必要なんだけど……仕方ないかな。
「オッケー、氷ね。はい、取ったよ」
だけど、これだとSLv.3まで10SP足りないんだよね。
「一応、試してみなよ」
「グォ。グォオ、グォオ(はい。
ロアからバスケットボールくらいの氷の球と、氷の槍が放たれた。何だか見覚えがある気がしたが、これは石畳の迷宮の最初に出てきた青い馬が使ってた奴だ。
「……よし、決めた。ゴブリンの巣とか無いかな?」
「グォオ?(巣ですか?)」
僕が今からやろうとしていること。それは……
「うん。レベル上げ兼戦力増強って目的で」
僕がやろうとしていることは単純だ。
「死霊術の新しいスキルでさ、指定した範囲にある死体を纏めてアンデッド化できる奴があるんだ」
「……グォ(つまり?)」
僕はニヤリと口角を上げた。
「────ゴブリンの巣を壊滅させて、丸ごとアンデッド化させようかと思うんだ」
敵の密集地を潰し、確実に戦力を増やす。……文句の付けようがない完璧な作戦だ。
♢
ここはミュウを放したエウルブ樹海。眼前には地下深くへと続く大穴があり、そこから何匹ものゴブリンが絶え間なく出入りしていた。まるでアリの巣みたいだ。
「さて……これだけ居れば、そんなに時間もかからないかな?」
僕の後ろには、ロアやミュウは勿論、この巣に辿り着くまでに樹海でアンデッド化させた二十匹程度の魔物が居る。
それはコボルトであったり、常に雄雌の二匹一組で動く
「じゃあ、みんな……この巣穴を潰しちゃって良いよ。あ、もし人がいたら攻撃しないようにね」
僕の言葉に従い、多種多様な魔物が一斉に巣穴に飛び込んだ。
巣穴から出入りしていたゴブリンは驚き、一斉に巣の中に逃げようとしたが、大体は巣に帰れずに殺された。
「さて、と……まぁ、僕も行こうかな。暇だし」
僕は巣の入り口でゴブリンを蹂躙するアンデッド化した魔物たちを見て満足し、ゴブリンで氷魔術を試していたロアを引き連れて巣の奥へと先に向かった。
ロアを連れた巣の攻略は、当然順調に進んでいる。
「おー、流石ロア。その斧の一振りで何匹殺してるんだろうね。あ、その斧も結構ヒビが入っちゃってるし、今日新しいの買ってあげるよ」
「グォ」
ロアは適当に返事をしながら、遠くの魔物は
目の前の敵しか見えない人も結構多いので、それと比べると戦闘者として優れていると言えるだろう。
「あ、ロア。奥の方から強そうなのが出てきたよ。鎧も着てるし、他のよりも大きい奴。へー、ホブゴブリンだってよ。いやぁ、どのくらい強いのか楽し……一撃は無いよ、ロア」
奥から取り巻きを伴って現れた重装のホブゴブリンをロアは鎧ごと一撃で叩き潰した。死体はグチャグチャになっているので、これではスケルトンにもできないだろう。
「うーん、強そうなやつはネルクスに頼……あぁ、うん。分かった。任せるから、ロア」
影に話しかけようとした瞬間、ロアが凄い形相で睨んできたので僕はネルクスに頼むのを諦めた。残念、今回は出番無しだ。
と言っても、ネルクスは普段は僕の影に潜むのを好んでいるらしい。なんか、居心地が良いんだとか。『私と似た色の魂をしているからですかねぇ』とかふざけたことを抜かしていたが、僕があの性格の歪んだ悪魔と似ているわけがないので、僕は彼なりの冗談だと思うことにした。
「あ、またそこそこ強そうなのが来たよ。ロア、死体はグチャグチャにしないようにね」
因みに、大体のゴブリンは斧で吹き飛ばされて壁にぶつかった衝撃で死んでいる。その際に三割ぐらいはグチャッとなってしまっているが、逆に七割は原型をとどめているので僕も叱りはしないようにしている。何度か文句が出かかったけどね。
「グオ。(分かっています)」
現れた新たなホブゴブリンは皮の鎧を着ていた。が、ロアはそのホブゴブリンに攻撃させる暇も無く首を掴み、キュッと締めながら地面に押し付けた。
「……グォ。(どうですか?)」
「あぁ、うん。良いんじゃないかなぁ……傷は無いし」
ちょっと可哀想な感じはするけど、どうせ死ぬんだから壁のシミになるのとそう変わらないだろう。
そんなことを考えながら次の部屋に入ると、そこはかなり開けていてゴブリン達が溢れていた。そして、この部屋の更に奥に見える部屋は唯一扉がある。もしかしなくても、ボス部屋とかそういうのだろう。
「この部屋、小ちゃいゴブリンも多いけど……もしかして、そういう部屋かな?」
よく見ると、若干R-18な光景が広がっている。緑のキモいのと緑のキモいのが重なっている。不快になった僕は
「ロア……ここは子供も多いし、戦力にはなりづらいから、スピード重視でやって良いよ」
僕は
数分後、この部屋のゴブリンは一匹残らず死体と化していた。
「……さて、明らかにボス部屋っぽいけど……まぁ、気負わずに行こうか」
ボスと言えど、所詮ゴブリンだ。僕は部屋の扉を開いた。
「うーん、意外とこの部屋に戦力を集中してたんだね」
扉の向こう側には、二十匹程度の金属鎧を身に纏ったホブゴブリン達と、部屋の奥で玉座に座るゴブリンキング、そしてそれを守るかのように両脇には杖を持ったゴブリンメイジが控えていた。更に、部屋の中央には黒いローブを着た人と同じくらいの身長の謎のゴブリンの姿があった。
「ん? あれってもしかして……」
僕は部屋の隅に檻のようなものがあるのを発見した。そこには、二人の人間が閉じ込められている。ボロボロになっている二人だが、疲れているのか檻の中で丸まって眠っている。
「まぁ、後でいいや。今はとりあえず……
と、指示を出した瞬間に奥のゴブリンメイジ達が火球を飛ばしてきた。速度はそこまで無いし、威力も微妙だとは思うが、態々当たってやる理由も無い。
「……ロア」
僕が名を呼ぶと、ロアは直ぐに動き、鋼鉄の斧で二つの火球を同時に搔き消した。更にロアはそれだけでは終わらず、同時に二本の
「「グギャァアアアアアッ!!」」
二本の
「……グ、グギャ、ギャギャギャッ!!」
それを見たゴブリンキングはしばらく呆けていたが、状況を理解すると焦ったように命令を出し始めた。漸く僕たちが脅威であることに気付いたのだろう。
「じゃあ、みんな。後は命令通りよろしくね」
僕が言うと、
「……クキャキャ」
そして、取り残された真ん中の黒いローブを着たゴブリンは変な笑い声をあげると、ロアではなく僕の方を見た。不審に思い
「君、王様を守らなくて良いの?」
僕が語りかけると、黒いゴブリンは少し驚きながらも、またクキャキャと笑って僕を見た。
「クキャ。クキャキャ、キャキャキャ。(構わないね。別に俺はキングの配下ってわけじゃないし、ただここで仕事をこなして報酬を貰ってるだけだからな)」
そう言いながら、黒いゴブリン……略して黒ゴブは檻の方を見た。
「クキャ、クキャキャキャ? クキャキャ、キャキャ。(例えば、あの人間のメスどもとかをな? お前らをここでぶっ殺せば、あの初物のメスどもを頂けるってわけよ)」
黒ゴブは挑発するように僕を見たが、僕は別に彼女達を知らないのでどうも思わなかった。というか、檻の中の二人が女だということも今気付いた。
「うん、そっか。まぁ別にまだ穢されてないなら、良いんじゃない?」
既に初物かどうかを確かめられていることには目を瞑っておくことにした。まぁ、さっきの繁殖部屋に放り出さずに態々檻の中に入れるということは人間のメスっていうのはゴブリン達からしたら価値があるのかな? 強い子供を産める的な。
「……クキャ、クキャキャキャ。クキャキャッ! (……へ、そうかよ。じゃあとっとと死ねやッ!)」
黒ゴブは腰に挿した剣を抜き、十メートルはあった距離を一瞬で詰めてくる。黒ゴブが持っている剣の刃は黒いオーラを纏っている
「あー、結局こうなるんだね……ネルクス」
僕は眼前に迫った黒ゴブを気にもせずに影に向かって語りかけた。
「……我が主よ、ギリギリで呼ぶのは勘弁して欲しいのですが。今も、後一秒でも遅かったら我が主の首は宙を舞っておりましたよ?」
黒ゴブの剣は、僕の首筋に触れる寸前で止まっていた。ネルクスが黒ゴブの腕を掴んでいるからだ。
「あはは、信頼だよ。ネルクスを信じてたから、ギリギリで呼んだんだ」
「……クフフ、そうですか。では、そのご期待に応えられるように……先ずは目の前の敵を殺すことから始めましょうかねぇ?」
ネルクスは腕をそのまま握り潰すと、悲鳴をあげた黒ゴブの首筋を掴み、地面に押し伏せた。
「さて、安心してください……傷は、付けませんのでねぇ?」
「ク、クキャ、クキャ────ッ(や、やめろ、助けてく────ッ)」
ネルクスの漆黒を纏わせた拳が、黒ゴブに叩き付けられた。
「
それは、クラーケンを殺した時と同じ技だった。闇の力を衝撃と共に体内に流し込むとかいう、よく分からない技だ。だが、その効果は確かで、傷一つないのに黒ゴブは一切動こうとしない。そう、死んだのだ。
「流石だね、ネルクス。期待通りだよ」
「お褒めに預かり光栄です。……では、私はこれで」
そう言ってネルクスは自ら影の中に潜っていった。
「……うん、みんなも丁度終わったみたいだね」
辺りを見渡すと、ホブゴブリン達も、ゴブリンキングも全員死んでいるようだった。
「さて、後は
僕は
「んー、錠前がついてるけど、鍵がどこにあるかなんて分からないしなぁ……ロア、やっちゃってよ」
「グオ」
ロアは頷くと斧を地面に置いた。そして檻の鉄格子を掴むと、自慢の筋力にものを言わせてこじ開けた。
「うん。ありがとね。……うーん、全然起きないなぁ」
僕は何度も二人の体を揺するが、全く起きる気配は無い。
「しょうがないなぁ……良し、ロア。せーので咆哮ね。……せーのっ!」
僕は言いながら、自分も音魔術を発動した。
「「グォオオオオオオオッッ!!!!!」」
二つの咆哮が巣の中に響く。そして当然その爆音を聞いた二人は……
「な、何ですかッ?! お、オーガと……人間?」
「ば、化け物ッ!下がってくださいッ、私が、私が盾になりますッ!」
当然飛び起き、僕とオーガを見て喚き始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます