第114話 ピノさんピノさんピノさ・・・

「ね、今ので結構魔力を削れたんじゃない?」

「うん。そうみたい」

「でもこっちも結構魔力が厳しいなあ。ピノ先生はどう?」

「私も結構使っちゃったかも。暫くの間は魔力を回復しながら、かな」


結界の中の毛糸玉を視ながら現状を分析するふたり。

だがその時、そのふたりを見ているテーギガもまたふたりを分析している、という事を忘れてはならない。


(エネルギー残量、僅か。次回同じ攻撃を受けた場合の生存シミュレーション開始・・・完了。粒子レベルまで分解される可能性、100パーセント。粒子からの再構築期間、魔力残量により2日から30日。構築途中に攻撃を受ける確率、極めて高し。回避方法、粒子状態で海水に紛れる以外不明。その場合の再構築期間・・・不明)


魔力が足りない今の状態で同じ攻撃を受けると、元に戻れるかどうか分からないというのがシミュレーションから導き出された答え。

であれば、もう今の攻撃を受ける訳にはいかない。


(敵が極大魔力弾に移行する前の攻撃への対処が必要。現状の形態では回避力および防御力が極めて不足。解消シミュレーション開始・・・完了。自個体数増加による対処が最有力。但し高効率稼働のため完全分裂ではなく疑似分裂とする)


先程は連続攻撃への対処が遅れるうちに魔力弾による攻撃を受けてしまった。

次回また同じパターンとならない為の対策が必要だ。

そして導き出した答え。それは・・・

2本の腕をそれぞれ人型とし、それぞれの腕がそれぞれの敵に対して個別に対処する。

そして頭と胴体は後方に控えて常に戦況を把握するのだ。

これにより、敵に対して逆にこちらが数的優位に立つ!


もしテーギガに顔がついていたら、おそらくニヤリと笑みを浮かべた事だろう。

勝利を確信して・・・

『勝ったな』





「これがスライムの魔石・・・」

石になってないから魔って言うのかは分からないけど。

「あれ? 持てないや」

持ち上げようとしたら指の隙間から垂れ落ちて・・・

「ドロドロの液体? じゃあ魔石って言うより・・・魔液?」

「魔石で・・・いいと思う。・・・わざわざ違う・・・呼び方するのは・・・面倒・・・だろうし」


確かにシルの言う通りかも。

「じゃあとりあえず今は『液状の魔石』って呼んでおこう。でもこれ液状だから持ち上げられないんだよね。どうやって回収したら・・・あっそうか、だったら液状じゃなくなれば・・・『凝固』」


錬成で『凝固』しちゃえば石みたいに・・・ってあれ?


今度は手に取って持ち上げられるようになったけど、何だか柔らかい。

何て言うか・・・そう、さっきまで手に持ってたスライムみたいな感触。

じゃあ魔石が抜けたスライムの方は・・・?


こっちはさらさらで、まるで水みたい。

そのまま床に染み込んで無くなっちゃった。


うーん、ここは専門家に訊いてみよう。

「ねえシル、これってどういう事だと思う?」

「ええと・・・多分、だけど・・・魔石と・・・水分が・・・スライムの・・・主成分?」

「なのかな?」


すっごく気になる。

でも、今一番大事なのはそれじゃない。


「あいつもこれで『スティール』出来るかな」

「それは・・・分からない。・・・でも・・・心配なら・・・他のスライム、も・・・試してみる?」


僕達はダンジョンコアの間――ってシルの研究室だけど――に移動、そして・・・

「属性スライム・・・おいでませ」

赤いスライム、青いスライム、黄色いスライム、緑色のスライム、光るスライム。

ええっと、火、水、土、風、光、かな?

でも・・・


「何故みんなビンに入ってるの?」

一体ずつ別々のビンに入って出てきたんだけど?

「それは、もちろん・・・スティール・・・した、残りの・・・液体を・・・調べる」

「ああ、なるほど」


「それで・・・スラスラさん、には・・・これ」

「これって洗面器? えっと、5個あるって事は・・・」

「これで・・・魔石を・・・受け止めて?」

「やっぱり」


「みんな・・・ゴメンね? ・・・後でちゃんと・・・生み直して・・・あげるから、ね?」


ちょっとだけ悲しそうな顔をして俯いたシルだったけど、顔を上げた時にはすっかり研究者の顔になってた。

「じゃあ、スラスラさん・・・始めて」

「うん、『スティール』」

そして属性スライムは、それぞれの色の液体と透明な液状魔石になった。


液体の入ったビンの横に、洗面器からそれぞれの魔石を移したビンを並べるシル。

ビンにはそれぞれの属性が書かれたラベルが貼ってある。

いつの間に・・・


「最後に、量産型ブロッケン君・・・の、小型版」

白くて時々虹色が揺らめくスライムが、やっぱりビンに入って出てきた。

そしてシルから洗面器を受け取って、

「スティール」


あれ? 弾かれた・・・?

これまで順調だったのに・・・

あ、そういえばこのスライム、最初加熱とか冷却も失敗したっけ。

一体何故・・・あっそうだ、魔力感知! あ、これって・・・


「この、子は・・・身体強化、する・・・スライム。魔力・・・ぐるぐる」

「やっぱり」

スライムの中で魔力が渦になって回ってたんだ。


そうだよ、ピノさんも言ってたじゃないか。

海でマクロマグロにスティール出来なかったのは、マクロマグロが身体強化してたのが原因って。

じゃあどうしたら・・・


あれ? でもこの間はこのスライムを倒せたよね。

その時は確か・・・そうだ、僕の方も魔力を循環させた状態でだったら冷却出来たんだ。

だったらもしかしてスティールも!?

よーし、魔力循環開始!


僕の中を魔力がぐるぐる流れるのを感じる。

魔力感知を会得したからかな、以前よりも身体の中の魔力の流れがよく分かる。

よーし、じゃあこの状態で――


「スティール」





テーギガを覆う結界をモリスが解除したと同時に、ピノとクーラは攻撃を再開すべくテーギガの元へと走る。

だが――

「ええっ、そんなぁ」

「腕が人型に!?」


前方に突き出されたテーギガの両腕が伸びたかと思うと、その拳が大きく膨らみ、そしてピノとクーラそっくりの人型に変形した。

そしてピノと銀ピノ、クーラと銀クーラの戦いが始まる。



激しく拳を交えるピノと銀ピノ。

技術は圧倒的にピノが上、ここまでピノが一度も攻撃を受けていないのに対し、銀ピノは何度か捌ききれず被弾している。

だが、被弾したその箇所はピノの拳を柔らかく受け止め、ダメージとなっていない。


撲撲ボコボコ棒が使えたら・・・)

攻撃しながら魔力回復に努めるため、今は消費の大きい撲撲ボコボコ棒ではなく拳に魔力を纏って戦っている。

そのお陰でゆっくりと魔力は回復してきているが、相手に対したダメージを与えられていないのも事実だ。

「仕方ない、今は我慢我慢」



少し離れた場所ではクーラと銀クーラの戦いが繰り広げられている。

こちらもまた圧倒的技術によりクーラが優勢だ。

だが・・・

(だんだん動きが洗練されてきている)


クーラの想定以上に敵の学習能力が高い。

クーラが初めての攻撃や体捌きを見せると、いつの間にかそれっぽい動きをするようになり、その動きは徐々にクーラの見せたそれと近くなってゆく。

だがしかし、学習したのはそれだけではなかった。


(ちょっと、これピノ先生の動きも入ってない!?)

そう、隣で戦う銀ピノとこの銀クーラはテーギガの両腕、つまりどちらもテーギガ本体に繋がっている。

それ故に双方の学習結果はテーギガに集約され、そして双方に反映される。

目の前の敵は自分とピノの戦闘技術を併せ持つ強力な敵として育ちつつあるのだ。


(これヤバいかも)





目の前の洗面器でスライムの魔石を受け止めた。

「出来た・・・身体強化からの『スティール』、これなら相手の身体強化をつらぬけるんだ」


――スキルが進化しました


「えっ!? また!?」

さっき進化したばかりだったのに?


「スラスラ、さん・・・どうした、の?」

「あ、うん。スティールがまた進化したみたいなんだ。さっき進化したばかりなのに」


シルは少し考え、

「魔力感知、との・・・組み合わせ・・・に、成功して・・・進化。・・・身体強化、との・・・組み合わせ、に・・・成功・・・して、進化?」


ああ、言われてみればそうかも。


「魔力感知、に適した・・・スキルに・・・進化したから、身体強化・・・にも対応出来た。・・・そして今度は・・・身体強化、に適した・・・スキルに、進化・・・した?」


おお、完璧な推測!


「きっとそうだよ! シルすごい!!」

「えっ――」

シルは一瞬驚いたような表情、そして

「――へん」

嬉しそうに胸を張った。


さあ、これですべての準備が完了だ。

帰ろう!

みんなの所へ!





「どうしよう、このままだとまずいわね」

魔力は徐々に回復してきてはいるが、それは相手も同じ事。

もう一度ピノとの同時攻撃を行える状態になる頃には、敵の魔力もそれを耐えきれる程に回復している可能性が高い。

本来の目的が時間稼ぎである以上、現状で目的は十分果たせているが、このまま敵が強くなり続けていくとあるいは・・・



ピノもまた、敵の変化に気付いていた。

(だんだん動きが良くなってきてるし、こっちの動きを先読みし始めてるみたい。ああもう、やりづらいなあ)

銀ピノもまた、ピノとクーラの戦い方を学習・吸収している。

(それにしてもなぜ死角からの攻撃まで・・・あれ? そういえばこいつは腕だったはず、とすると・・・)

「ああああっ!!」


「ピノ先生どうしたのっ!?」

突然大声を上げたピノに、クーラが叫び返した。

「あの後ろの奴、ずっとこっちを見てる! これじゃあ死角になってないよ!」


そう、テーギガの本体は第3の視点からピノとクーラの動きを観測し、その情報も共有している。

つまりその目が届く範囲の状況は銀ピノも把握できているのだ。

「それずるいよっ!」



先程からの激しい戦いを目の当たりにして、オーディナリーダの面々は自分達がこの戦いに加われない事に気付いていた。

そこで繰り広げられているのは、自分達とはあまりにレベルが違う戦い。力も技もスピードも。


厳しい訓練、そして実戦を経験して自分達は強くなった。そう思っていた。

だが目の前の戦いはどうだ。

もちろん自分達は強くなった。それは間違いない。

だがそれ故に目の前の戦いとの差を理解できてしまうのだ。理解できるだけの強さを身に付けたが為に。



「ピノさんもクーラ先生も頑張れっ!!」

その時アーシュが動いた。


「ほらっ! あんた達も応援しなさいよ! 今のあたし達に出来るのはそれくらいなんだからっ!!」

「そう・・・だな! 師匠頑張れ!!」

「がんばれっ!」

「どっちも、頑張れ。カル師の為に」

「ワルツ、それ何か違う」



その声援は戦いの場に届く。

「ふふっ、あの子達ったらあんなに必死になって。これは弱音とか吐いてる場合じゃないわね」

「カルア君、いい仲間を持ったね。私も負けてられないな!」

声援を受け、やる気をV字回復させたふたり。

その一方で、

(あれは・・・不快)

生まれたばかりの『感情』に振り回され気味のテーギガだったが、ここに来てまた新たな不快感に心を焦がす。

それは『羨望』、そして『嫉妬』。



自分達の声援で力を取り戻したふたりを見てアーシュたちは喜び、その喜びはまた新たな声援へと繋がる。

「いっけー! もうそのまま倒しちゃえ!!」

「ふふ、かまわんのだろう?」

「師匠ぉーーーーーっ!!」

「がっがんばれーーーーっ!」


その声にますます勢いを増すふたり、そして――

(不快、不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快不快)

『不快っ!!』

その叫びに感情のまま最大魔力を乗せ、テーギガの本体からアーシュ達に途轍もない速度の魔力弾が放たれた。

「待っ――」

生徒の元に駆け寄ろうとするクーラだったが、その隙を見逃す銀クーラではない。

クーラは一瞬にして地面に叩き伏せられ、倒れたまま連続攻撃を受け続ける。小さく跳ねながら。

そしてピノは、

「加速っ」


――加速。

それはピノの持つ唯一のスキルである。

そこに込める魔力のバランスにより、速度と持続性が変化する。

今は当然速度に極振り。それによりピノは一瞬でアーシュの前に移動する。

(よし、あとはこの魔力を受け止めれば!)

「はっ!!」

両手を前に突き出し、その両手から全力の圧縮魔力弾を放つ!


その圧縮魔力弾はテーギガの魔力弾を貫き、そのまま発射元であるテーギガの頭部に激突、粉砕して空へと飛び去った。

「間に合ったぁ――」

トスッ

「え?」


魔力弾から一瞬遅れてピノに到達したそれは、テーギガから伸びる銀色の槍だった。

その槍は、テーギガがほんの気紛れで伸ばしたもの。特に深い意図などは無く、ただ気に入らない人間に向けて撃ち込んだ、それだけのもの。

だがその気紛れは最悪の偶然を呼び込む。


その瞬間、ピノは最大速度の加速と全力の魔力弾により、ほんの一瞬だけ魔力切れを起こしていた。そしてカルアの仲間達を守れた安堵から、これもまたほんの一瞬だけ気を緩めた。

それこそが魔の一瞬。

その槍はピノが完全に無防備となったその一瞬、ピノの胸元に吸い込まれ、そして刺し貫いたのだ。


「あ・・・」

ガフッ


胸元から銀の槍が抜けると、その傷口、そして口元から血が溢れ出した。

頬を伝う一筋の涙と共に全身から力が抜け、その場に倒れるピノ。

その口元がわずかに動き、

「カル、ア・・・君」

そして動かなくなった。


「い、いやあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「「「ピノ先生!!」」」

「いけない! 今すぐ『回復』、いや『復元』を! ラーバル君!」

「ああ! 『復元』・・・くっ、魔力が足りない。『中回復』!」

「どう!?」

「ダメだ。『中回復』じゃあ足りない。くそっ」



慌てふためく人間達。

そしてあれ程手古摺っていた強敵ふたりがあっさりと地に伏し、テーギガは非常に高揚していた。

そう、これは『喜び』。

故に・・・

『ハッハッハッ・・・ハハ・・・ハハハハハハハハハハハハハハ! ハーーッハッハハッハッ! ハハハハハハハハハハハハハハハ! アーーーッハッハッハッ! ハハハハハハハハハハハハハハハ・・・』

生まれて初めての笑いに身をよじった。



「あんた! あんた! あんたあんたあんたあんたあんたあんたあんたーーーっ!!」

そのテーギガに逆上したアーシュが跳びかかる。

『五月蠅い』

「グボッ」

テーギガは途中まで縮めていた銀の槍をそのまま鞭のように振り、アーシュを弾き飛ばした。


「ふん」

そしてついでとばかりにその鞭を伸ばし、立っていた残りの人間全てをなぎ倒した。

ピノに必死の『中回復』を掛け続けていたラーバルすらも。


そしてその場に立っているのは、勝者であるテーギガのみとなった。





「みんな! お待たせっ!!」

海岸に戻ると・・・えっ!?


ミンナタオレテ・・・


そして一際目につく真っ赤な・・・

「ピノ・・・さん?」


え? どうして? だってピノさんだよ? あんなに強いんだよ? 何で血を・・・血を!?

「ピノさん!」


急いで近寄ると、胸と口から血がどんどん流れて・・・

「ピノさんしっかり!ピノさんピノさんピノさんピノさんピノさんピノさんピノさん」

どんどん顔が青白く・・・


――もし『回復』の代わりに使わなきゃならない時が来たら、一秒でも早く使う事。じゃないと後悔する事になるかもしれないからね・・・


そうだ! 1秒でも早く!

「復元!」


そして僕の目の前でピノさんの血が体の中に戻ってゆき、そしてその傷口と穴のあいた服が元に戻り・・・

そこには、傷ひとつなくピノさんが横たわっていた。




『ハハハハハハハ!! 次はお前だ!』


何だろう、銀色の何かが騒いでてうるさい。


『偽エルフカルア! 貴様を排除する!』


うるさいな。ピノさんが起きちゃう・・・あ、起きたほうがいいのか・・・


『そこの個体名ピノセンセーのように貴様も殺してやる』


ピノさん・・・殺した?


殺した?


お前が?


「ピノさんを・・・殺した?」


『その通りだ。そして次はお前だ』


「お前が・・・お前が・・・お前がピノさんを・・・ピノさんをおおおおお!!!」


絶対に許さない!!


身体強化スーパーモード全開!!」

『なっ、何だその魔力は!?』

「よくも・・・よくもピノさんを!!」

『何だこの魔力の嵐は!? 体組織にまで干渉を受けているだと!? くっ、これでは身体が保てない・・・一旦退避を』

「結界」

『なっ』

「逃がす訳ないだろ?」

『くっ、こんな結界など・・・何!? 浸食できない!?』

「把握」

『何だこの感覚・・・体の一片まで全て掴まれたかのような』

「ああ、『把握』したから。感じ取る『把握』じゃなくって、掴み取る『把握』。お前の体組織、そして魔力の全ては今僕に掴まれている。お前の命は今僕の手の中だよ」


完全に閉じ込められ、身体も魔力も全て目の前の敵の手の中。

以前ピノに叩き潰された時にはまだ逃げ道があった。

しかし今回は・・・

この不快感、そして全身の力が抜け落ちたかのような感覚。

『これが『絶望』・・・』

「これで終わりだ。『スティール』」


目の前に現れた銀色のドロドロ。

「凝固」

完全に魔力が抜け落ちたそれを固めてボックスに収納。

そして結界の中の銀色のドロドロは、結界のままボックスに収納。


「ピノさん・・・」




まるで眠ってるみたいなピノさんのところに戻ると、倒れてるみんなを校長先生が回復してた。

そして起き上がったアーシュがピノさんに近づいて・・・

「うそ・・・そんな・・・」

口を手で覆って立ち尽くす。


「うそ! こんなの嘘よ! だってこんな綺麗で傷も無くって・・・」

「動かないんだ。傷を負う前に時間を戻したのに・・・動かないんだよ」

「そんな・・・そんな訳ない! こんな終わり方なんて許さない! それにピノさんだって・・・ピノさん! 今すぐ起きないと、カルアの事っちゃうわよ!?」


「え? アーシュ、急に何を・・・」

「ほらワルツ! あんたも言ってやりなさいよ!」

「うん。ピノ先生、今すぐ止めないと、カル師、わたしの旦那様」


ふたりとも、何を言って・・・


「ほら、目を開けないと、カルアにキスしちゃうわよ」 ぴくっ

「なら、わたしは、ぎゅーってする」 ぴくぴくっ

「さあワルツ、ふたりで左右からカルアをサンドイッチ――」 がばっ!

「だめぇーーーーーーーっ!!」

「ピノさんっ!?」

「「やたっ!」」



突然ガバッと身を起こしたピノさん。

「あれ? 私、何で? えっと・・・あっ! みんな無事!? テーギガは!?」

「あいつは僕が倒しました」

「ええっ、もしかして進化したスティールで?」

「はいっ!」


「そ・・・」

ん?

「そんなぁ・・・一番いいシーンを見逃したぁ・・・」

「えええ・・・」




でもピノさんが生きていてくれて本当によかった。

やっぱり僕、ピノさんの事・・・





なお、瀕死のクーラが気付いてもらえるのは、まだもう少し後の事である。

(誰か・・・私に・・・気付いて・・・ああ、もう意識が・・・)

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