第68話 五色が揃ったら次はアレですよね

今日は朝から不穏な気配。

ホームルームが終わってそのまま校長室に連れて来られちゃったんだ。

今日は何なんだろう、最近いつも誰かに呼び出されてる気がするんだけど……


ああ、でも今日はちょっといつもとは違うんだよね。だって――


「うぅ、ちょっと緊張するわね」

「僕もだよ。校長室なんて普通にしてたら卒業まで一度も来る事が無い場所じゃないかな」

「ああ。俺もまさか校長室に呼ばれる日が来るとは思わなかった」

「カル師、堂々。常連?」


――そう、みんなが一緒だから。

でもワルツ、僕常連さんじゃないよ?


「あらあらー? 皆さん大丈夫ですよー。すこーし落ち着きましょうねー」

「まあ初めてなんだから仕方ないんじゃない? こんなのは慣れよ、慣れ」

そして何故かレミア先生とクーラ先生も。

本当に一体何なんだろう?




そして――

「皆さんよく来てくれました。今日集まってもらったのは、皆さんのカリキュラムが少し変更になったからなのです」

校長先生からの話が始まったみたいだ。


「カリキュラムの変更、ですか?」

冷静担当ノルト。この様子だと今回表のリーダーの出番はなさそうかな?


「ええ。と言ってもごく短期間の変更です。何しろこの変更は、皆さんがセカンケイブダンジョンを攻略する時間を作る為のものですから」

「――ダンジョンの!?」

ダンジョンと聞いてアーシュがグッと身を乗り出す。

ああ、これは本当に僕の出番はなさそうだ。


「ええ。ダンジョンを攻略するとなれば、準備と移動も含め最低でも1週間は必要でしょう。かといって勿論授業を受けない訳にはいかない。と言う事でカリキュラムの変更です。今日から2週間、君達には終日座学を受けてもらいます。そして校外での実技授業として、その翌日から2週間をダンジョン攻略の時間とします」


「「「「「おおーーーーー!」」」」」


なるほど!


「ああそれと、座学の最終日に2週間分の内容がきちんと理解出来ているかの試験を行います。もし理解が足りていないと判断された場合、ダンジョンに行くのは補習と再試験後となりますから、気を付けて下さいね」


「「ぐうっ……」」


ワルツとネッガーは自信なさげ? 頑張れー。


「この期間のみなさんの座学の講師は、全教科レミア先生が務めます。普段とは別の部屋で行いますので、後ほど案内してもらって下さい。そしてダンジョン攻略は実技授業ですから、当然こちらにも教師による引率が必要となります。そちらはクーラ先生が担当します」


レミア先生の授業!? ――って大丈夫なの? 普段の口調だと内容が入って来ない恐れ……


「それってクーラ先生があたし達に付きっ切りになるって事よね。冒険者クラスの授業は大丈夫なんですか?」


ああ、そう言えば。


「ええ。サブの講師がいますから心配ありません。それにいざとなればまた臨時講師をお願いする根回しは出来てますからね」


根回し……

誰が来るのか、何となく分かったかも。

ブラック臨時講師と、もしかしたらピノ臨時講師、だろうなあ……きっと。

【転移】で距離とか関係なくなっちゃったし。

それに昼間は時間に少し余裕があるみたいだし。


「と言う事でカリキュラム変更については以上です。それで次のお話ですが……カルア君、昨日マリアベルさんとミレアさんが作成したパーティ全員分の装備を受け取ったと聞きました。それを見せてもらいたいのですが」


取り出した指輪をテーブルの上にひとつずつ並べる。指輪は全部で5色、指輪の色と装備の色が同じって事みたい。


「ふむ、聞いていた通りですね。それでどれが誰の物かはもう決まっているのですか?」

「いえ、それはまだ。全部色が違うから、みんなに好きな色を選んでもらおうと思って」

「ああなるほど。では今ここで選んでもらいましょうか」


校長先生の声でみんな指輪に手を伸ばそうとしたけど、その手は途中でピタッと止まり、みんな互いに顔を見合わせた。

「ねえカルア、新しい装備って言ってたけど、これってどういうものなの?」

「うん、これはミレアさんが作った『戦闘スーツ』っていう魔道具なんだ。この指輪の中には全身を覆う柔らかな鎧みたいな装備が入っててね、キーワードを声に出して魔力を流すと、今着てる服とその装備が一瞬で入れ替わるんだって。装備の色は指輪と同じみたいだよ」


説明を聞いたアーシュは目を輝かせる。

「じゃあ色で選べばいいって事ね! だったら私がみんなにピッタリの色を選んであげるわ!」

そしてアーシュが選んだのは――


「まずはカルア、あんたは『赤』ね。やっぱりリーダーの色と言ったら赤でしょ。これで角が付いてたら完璧だけど。……あたしは『青』。この中で陰のリーダーのイメージに最も近い色だと思うの。それからワルツ、あんたは『水色』よ。もともと氷属性だったからイメージ通り。次にノルト、あんたは『緑』。農園キャラとして拒否は許されない色よね。それで最後にネッガーが『黄色』。何て言うか……筋肉とか力持ちキャラにピッタリの色じゃない? うん、もう全員完璧にイメージ通りよ!!」


誰からも反論が無い。みんなアーシュの説明に納得したみたいだ。


「じゃあ早速着けてみましょうか。指輪をはめてキーワードだったわよね。キーワードって何?」

「今は『蒸着』に設定してあるけど、後で自由に変えられるって言ってたよ」

「分かった、『蒸着』ね。……みんないい? 指輪はもうはめた? じゃあ『せーの』で同時に装備するわよ」


アーシュが見回すと、みんなちょっと緊張気味の顔で頷いた。


「よし、せーの!」

「「「「「蒸着!!」」」」」


おお! イッツァ、カラフル!!

へぇ、みんな少しずつ形が違うんだ。それに頭の部分はツルっとしたヘルムみたいな感じ。僕のはどんな感じなんだろう?


「ちょっとカルア、自分の姿が見たいんだけど! 何とかならない?」


うん、僕も見たいんだけど……鏡とか無いのかな?


「ああ、すぐに用意しましょう。【姿鏡すがたみ】」


校長先生の魔法で、僕達の前には凄く大きな魔力の板が現れた。その板には僕達の姿が写って……そうか、これ魔力で作った鏡だ。

見た感じ時空間魔法の組み合わせっぽいし、便利そうだから覚えとこっと。


で、その鏡に写る自分の姿をみんなそれぞれ手を振ったり身体を動かしたりして確認してる。

「ふーん、まあそんな悪くはないかな。動きやすいし実用性重視って感じ?」

「アーシュ、これ、超カッコいい」

「え、そう? ホントに? まあ感性は人それぞれだけど……」


アーシュはそれなりに、そしてワルツは凄く気に入ったみたい。


「それでカルア、この『戦闘スーツ』って、どんな機能があるの? お祖母さま達が作ったんだから、きっと凄い攻撃とか防御とかが用意されてるんでしょう?」


うっ、ちょっと答えづらい質問来た……


「ええっと、そういった機能は用意されてなくって、簡単に着脱出来るだけみたい」

「えっ、それだけ? それって何の意味があるの?」


不思議な顔をしたアーシュに昨日ミレアさんと話した内容を聞かせると、アーシュは納得の表情を浮かべて大きく頷いた。


「――と言う事で昨日渡したペンダントを調整するから、みんな一度スーツを解除してくれる? 『解除』を意識しながら魔力を止めれば出来るから」

「あ、ちょっと待って。私その前に『キーワード』を変えたいんだけど、どうやって変えるの?」

「ええっと、確か……」


昨日あの後ミレアさんが教えてくれた方法は――

「スーツを着た状態で『キーワード変更』って言ってから、新しいキーワードを言えばよかったはず」


キーワードを変えたかったのはアーシュだけじゃなかったみたい。みんな暫く自分のキーワードを考えて――

「よし、じゃああたしはこれね。『キーワード変更、オーロラウェーブ』」

「わたし、これ。『キーワード変更、プリズムパワー』」

「僕はどうしようかな。『キーワード変更、グリーンフラッシュ』」

「俺はシンプルに『キーワード変更、変身』」


――みんな結構良い感じかも。

「あれっ、カルアは変えないの?」

「うん。僕は『蒸着』のままにするよ。何だかカッコいいし」



キーワード変更を終えた全員からペンダントを受け取って、自動魔力充填の追加と、あと他にちょっとした調

出来上がったペンダントを返したら、そのままみんなまたスーツを装備したんだけど……


うーん、一人一人のキーワードは凄く良いと思うけど、一斉にやるとみんなバラバラで誰が何を言ってるのか全然分からない。これ、みんなで統一した方がカッコよくないかな?


「ペンダントの結界と風の循環は単独でも起動出来るけど、スーツを装着したら連動して起動するようにしたから。それと、ペンダントは自分の魔力じゃなくって自動充填した魔力で動作するようになったよ。結界の動作時間は10分間。一応20分くらいは稼働出来るんだけど、これはあくまで非常用だから普段は10分で解除するように心掛けて。残り時間が1分を切ったらペンダントが点滅してアラームが鳴るから、そこから1分以内に戦闘を終わらせること」


「「「「了解、博士!」」」」

「博士じゃないよっ!?」




カルア達と教師達が退出した校長室。その室内で一部の空間が溶けるように揺らめくと、その場にモリス、マリアベル、ミレアの3名の姿が現れた。

「いやあ、流石のカルア君もミレア君の【隠蔽】は見破る事が出来なかったようだねえ。よかったよかった」

「私のはプロテクトマシマシの軍事用だもの。それにしてもオートカ先輩、今日は用事で来れないなんて」


「ふん! いつもいつでも側にいるなんて保証は何処にも無いんだよ、このバカップルが」

「あははは、そりゃそうだ」

「バカップルって言った! でもいいですよーだ! それでも私は先輩の事を、いつでもいつも本気で想ってるんですから!」

「ああ、はいはい分かったよ。このバカップルが」

「二度も言った! 他の人からは言われた事ないのに……」




「あの、そろそろ本題に――」

出て来て早々騒々しい面々に、この部屋の現在の主であるラーバルはたまらず声を掛けた。

「ああそうだね、ほら静かにおし」

そう答えたのは以前の主であるマリアベル。彼女はニヤリと笑うと弟子と嘗ての教え子に問うた。

「――で、あんたたちはどう見た? あたしは上手く行ったんじゃないかと思ったがね」


「はいししょー。私も大成功だと思いまーす」

「うんうん、これはもう僕達の大勝利と言ってもいいんじゃない? 上手い事ミレア君の装備に落ち着いたからね。ふふふ、カルア君が異次元のやらかしを炸裂する前に、僕達の見知った技術に着地点を誘導する、か。全く大成功だよ。……これが毎回上手く行っちゃうとそれはそれで楽しくないけど、でもいつもいつも『想定外』に踊らされる僕達じゃあないんだよカルア君。ぬふふふふふふふふふ」


そう不敵に笑うモリス、そして――

「全くその通りさ。あっはっはっはっはっ……」

「姉弟子としては弟弟子君にやられっぱなしって訳には行きませんからね。うふふふふ……」

「ええ。生徒を導く事こそ教師の務めですからね。ふふふふふ……」

――満足げに笑う、大人気無い大人達の姿がそこにはあった。




一方こちらは、校長室を出て今日から始まる特別授業へ向かうカルア達。

「そう言えばカルア、さっきみんなのペンダントを再調整した時、何か別の事もしてなかった?」

先ほど朧げに感じた違和感をカルアに訊いてみたアーシュ。そのアーシュにカルアは軽く目を見開いた。


「よく気付いたねアーシュ。でも大した事じゃないよ? 魔石に中途半端な余裕が出来たからさ、全員分の魔力を結集して土人形を生み出す機能を追加しただけなんだ。ほら、攻撃とか防御の手が足りなくなった時に便利そうじゃない?」

「確かにそれなら微調整レベルね。でも中々気が利いた機能じゃない」

「でしょ?」


「でもあんたとノルトで本気を出したら、あたしたち全員が乗り込めるくらいの土人形ロボを作れるかもね」

「ああ、それも面白そう! ね、ノルト?」

「そうだね。それくらいだったら、ちょっと頑張れば出来るんじゃない? 今度やってみようか?」

「うん! みんなもいいよね?」


「「「「了解、博士!!」」」」

「博士じゃないよっ!?」

「「「「「あはははははははは……」」」」」


――皆で楽しげに笑う、何処までも無邪気な子供達の姿がそこにはあった。

こうして彼らは今日もまた、大人達の想定を越えて行く……




今日から始まった特別授業、一日中座学って初めてだったけど、今日の授業は全部終了した。そして今日の僕はそのまま真っ直ぐ部屋に帰って、そして――

ヒトツメに転移した。


「何だカルア、随分久し振りじゃないか」

「ホントだねえ。学校はどうだい? 楽しくやってるかい?」

「おいおい、まさか寂しくなって帰ってきたんじゃあないだろうな? ホームシックってやつかあ? ぎゅーってしてやるから、こっち来いよ! がはははは」


今日もギルドの食堂では一仕事終えた皆さんがパーティ中だった。

そうなんだ。あれは『冒険者がやるパーティ』ってやつだったんだ。アーシュのお陰でついに判明、あの人達はみんな冒険パリピなんだって。


「いやだなあ、そんなホームシックとかじゃあないですよ。友達も出来たし、その友達とパーティを組んで冒険者もやってるんですから」


「「「「「なんだってーーーーっ!!」」」」」

うわぁ、皆さん驚きすぎ!


「そいつはめでたい! よかったなあカルア! こっちには年の近い冒険者がいなかったからなあ。うんよかったよかった!」

「ホントだねえ。あたしも嬉しいよ。ああ、あのカルアがねえ……」

「おお、本当によかった! ほら、ぎゅーってしてやるから、こっち来いって!」


やっぱりここはあったかいなあ……


「もう! 皆さん大袈裟すぎですよ! でも……ありがとうございます」

「ばっ……ばかやろう! こちとら最近年のせいか涙腺が緩みっぱなしなんだ! 妙な不意打ちするんじゃねえ!!」

「あははは……何ですか、それ」

「ああもうほら、行った行った! いつまでもピノちゃんを待たせるんじゃないよ!」

「もう、分かりましたよー」


そして僕はパリピの皆さんのテーブルを離れ、ピノさんの待つカウンターへ。

「ふふふ、こんにちはカルア君。みんなカルア君に会えてうれしそうですね。皆さん最近はいつもカルア君の話ばっかり――」

「ちょっとピノちゃん! それ言っちゃダメーー!!」

「はーーい。ごめんなさーーい」


ふふふっ、相変わらず楽しそうだなあ。


「それで今日の御用は私ですか? それともギルマス? まさかパルム――」

「ちょピノ! 自分の冗談に刺さって冷気振り撒かないで!!」

隣のカウンターのパルムさんからもそんな冗談が。これも相変わらずだなあ……少し焦ったような声でツッコむところとかも。


「あははは、今日はピノさんに用事があって」

「あっはい、私ですねっ! ――っと、先に片付けなきゃいけない仕事があるから、ちょっと待ってて貰えますか? その間ギルマスとお話しします?」

「そうですね、じゃあギルマスのところで待ってます」


一人廊下を進んで、やってきた一番奥のギルマスの執務室。もうすっかり慣れちゃった。

最初はあんなにドキドキしてたのになあ。


コンコンコン。

「うむ、入って構わんぞ」

「失礼しまーす」

ギルマスの声にそう返事をして扉を開ける。その向こうに見えたのは少し驚いた顔のギルマスだったけど、すぐにその表情を笑顔に変えて僕を招き入れてくれた。


「おおカルア君、こちらに来るのは珍しいな」

「こんにちはギルマス。今日はちょっとピノさんに用事があって」

「そうかそうか。ここは君のホームグラウンドだ。折角【転移】が使えるようになったんだから、遠慮なくいつでも来るといい」

「はい、ありがとうございます」


こう暖かく迎え入れてもらえると、『帰ってきたなあ』って感じでほっとする。


「そう言えばギルマス、もしかしてまた臨時講師の依頼とかって来てたりします?」

「うむ、よく知ってるな。学校で聞いたのか?」

「はい。2週間後くらい後にクーラ先生の引率でフタツメのダンジョンに行く事になって、その間の臨時講師を手配するかもって聞きました」

「ああそれだ、間違いない。だがそうか、2週間後に……ならばネッガー君の指導はその前にしておきたいところだな」


ん? ネッガーへの指導……?

「あの、それって?」

「ああ、先日彼に相談を受けてな。それで私の戦闘方法を彼に伝授しようと考えているのだ。今のままだと少し不器用な戦い方に偏りそうだからな」


へえ、そうだったんだ……


「やっぱりギルマスくらいになると、そういう事も見えてくるんですねえ……凄いや」

「まあ、そう素直に感心されると若干くすぐったいのだが……おや、ピノ君が来たようだぞ」

「え? 本当ですか?」


コンコンコン

「ギルマス、よろしいですか?」

「ホントだ……」


「まあこういった技術を伝授するつもりなのだよ。――ピノ君、構わないぞ」

「失礼します……カルア君、お待たせしました」

「はいピノさん。じゃあギルマス、ありがとうございました」

「うむ、これからも頑張りたまえ」




久し振りのこの道。ピノさんと二人並んでギルドから家に向かう、楽しい帰り道。

家の近くまでやって来ると、井戸端に集まるいつもの奥様――サマンサさん達の姿が見えた。

「おやカルアじゃないか。今日はピノちゃんと一緒なんだね」

「はい。こんにちはサマンサさん」

「っ!? あんたあたしの名前を……って事はもしかして!」


「はいっ、母さんから聞きました!」

「っ!! そうかい、よかった……よかったねえ!!」

目に一杯の涙を浮かべるサマンサさん。ああ、母さんとの事もずっと心配掛けてたんだなあ……


「ありがとうございます! サマンサさん達にも色々お世話になって――」

「いいんだよそんな事は! ああ、これで今度こそあたし達もあんたの母親――リアベルとの約束を果たす事が出来たって事なんだねえ……」

「サマンサさん……」


「ああもう! くすぐったくってしょうがないから、急に名前で呼んだりするんじゃないよ! あたし達の事は今まで通り『奥様方』にしといてくれ!」

「はい! 分かりました!」

「ほらほら行った行った! ピノちゃんを待たせちゃいけないよ!」


奥様方への報告も無事に終わり、僕とピノさんは家に入る。

「それじゃあご飯の支度をしちゃいましょうか。材料も沢山ボックスに入ってるし、今日は何にしようかな。あっカルア君、空いた鍋があったら出しちゃって。それで作るから」

そんな感じで、僕の入り込む余地のない速さでピノさんが動き始めたんだけど――

今これ、【身体強化】してる? してない? どっちなんだろう……

あ、残像が一人増えた……




そして美味しい楽しい晩ご飯も終わり、いよいよ今日ヒトツメに帰ってきた本題を――

「実はピノさん、ピノさんにこんなのを作ったんです」

そして取り出すナックルダスター! ババンっ!!


「わっ素敵! 着けてみてもいい?」

「はい! 是非付けて下さい!!」

いそいそと両手にナックルダスターを嵌めるピノさん。笑顔が何だか眩しいや。

母さん、やっぱり女の子へのプレゼントはナックルダスターなんだね……


そしてナックルダスターに付与した【結界】の鎧の説明をして、早速ピノさんがそれを展開してみて――

「ふんふんなるほど、これくらいの消費量ならこのまま使っても魔力切れの心配は無さそうかな。あ、でも一瞬で全身を覆う『戦闘スーツ』か。顔が見えないなら丁度いいかも……今度ベルベルさんにお願いしてみようかな。色はそう、黒か銀で……」

――なんて声は……きっと気のせい。

だって、そんな事よりもっと嬉しい事があったんだから。そう、それは――


今度はちゃんと二人きりでピノさんにプレゼントする事が出来たってこと!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る