♡第13話♡ 私の秘密
「コペニュちゃん、そろそろ本格的に捜査したほうがいいと思う」
とある早朝、寝起きのコペニュにサーニャが告げました。
捜査とはもちろん、私が殺された事件についてでしょう。
ていうか、「いいと思う」じゃないんですよ。四六時中捜査してくださいよ。寝ても覚めても念頭に置いといてくださいよ。そのために取り憑いてるんですから。
「え〜、うーん」
うーんじゃないんだよクソガキ。
なんで無関係のサーニャがやる気マンマンで解決を頼まれたお前が面倒くさがってんだよ。
「今日はキツイな〜」
「体調悪いの?」
「んにゃ、シンプルにダルい」
……すぞ。呪い……すぞ。
「ダ、ダメだよコペニュちゃん。せっかく校長先生が頼りにしてくれるのに。ジラーノ先生にまた怒られちゃうよっ!」
「でもな〜、な〜んかやる気でないんだよな〜」
「も、もう一緒に寝てあげないよ?」
「……」
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というわけで、2人は私が所属していた聖女クラスに向かいました。
私のクラスメートに事情聴取をするためです。
聖女たちは魔法使いとは別の校舎にいます。
普段は神学を中心に、数学や歴史などの基礎教養を学んでいるのです。
「で、なんでまた私とマリーまで一緒なんだ」
メラルが文句をたれます。
「私ぃ、聖女ってよくわかんないじゃん? マリーがいれば解説してくれるでしょ?」
「ボクをマリーと呼んでくれたのは嬉しいですが、解説役ですか……。まあいいですけど」
「ちなみにメラルは賑やかし担当」
「キサマ……」
すっかり仲良し4人組ですね。
そんなこんなで4人は2年生の聖女クラスの教室に入りました。
生徒数8名、いや、私がいないので7名の寂しいクラスです。
真面目に読書をしている者もいれば、おしとやかな口調と声量で世間話に花を咲かせている者もいて、なんだか懐かしい気分になります。
「さーせーん! 1年のコペニュっす〜」
ジロリと一斉に視線が集まりました。
「エリーナについて教えてくださ〜い」
質問が直球すぎるでしょ。
先輩相手なんですからもっとかしこまったりきちんと挨拶したりしないんですかね。
……無理なはなしか。
「えっと、魔法使い科の子かな?」
私の友達だった子が苦笑しながら歩み寄ってきました。
「はいはいはい。エリーナのこと教えてよ。誰に嫌われてたとか、誰と喧嘩したとか」
「あ、えっと……」
「ていうか聖女っていつもなにしてるの? 神の力ってなに?」
質問が多いな。
「聖女は神学で神への理解を深めているのよ。神から授かった力をどう使うか、3年かけて見つけていくの」
そして卒業後は聖堂教会に努め、それぞれの進路へ歩むのです。
布教活動に専念するもの、か弱い人々の救って回る者、政治にアドバイスをする者、その他国家機関に力を貸す者、地元に帰って細々と暮らす者、などなど。
まあ要は、魔法使いと同じです。神に仕えているかどうかの違いでしかありません。
ちなみに私は、卒業後警察に協力することになっていました。
幽体離脱の力は捜査に役立ちますからね。
……役立ってないから未だに犯人見つけられてないんじゃん。
「あんたはどんな力があるの?」
「私は、未来を見通せます」
「へー、じゃあサーニャ、見てもらいなよ」
「わ、私!?」
私の友達はじっとサーニャを見つめだしました。
彼女の未来視は、どちらかというと占いに近いです。どうにも漠然としたもので、いまいち参考になりません。
正確なら私の死を回避できましたからね。
「あなた……人生が狂うような大失態を犯すわ」
「えぇ!? 怖いです……」
案の定話がまったく進んでおらず、呆れたメラルがため息をつきました。
「それで、既に何度も質問されているでしょうが私達にも教えて下さい。エリーナ先輩を殺した犯人の、心当たりを」
「それがわかればとっくに……強いて仲が悪かったのは、実父のジラーノ先生でしょうか。エリーナからよく愚痴を聞かされていました。父は最高の魔法使いを育てたかったのに、自分が聖女だから冷遇されている、と」
「だからってジラーノ先生が娘を殺す理由にはならないし、彼は独自で調査をしている。やはり容疑者はいないか」
「ただ、エリーナは校長先生から特別視されていました。私も本人も、真面目な優等生だからと思っていましたが、もしかしたら、殺された理由と関係があるのかも……」
おぉ、メラルのおかげで捜査が進んでいる感でてきましたね。
マリトが「まさか……」と呟きました。
「もしかしてエリーナさん、『二つ持ち』だったとか?」
コペニュとサーニャが首を傾げました。
「神の力が二つある聖女のことです。聖女の中でも稀有な存在です」
うーん、それが違うんですよね。私の力は一つだけですから。
「よし、校長を尋問しよー」
おー、とコペニュが拳を掲げます。
リーダーぶってるけどお前なにもしてないからな。
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「おいーっすコペニュでーす」
ドガッと校長室の扉を蹴り開けてドガドガと踏み入っていきます。
突然の登場に椅子でくつろいでいた校長はビクッと驚いて、飲んでいたお茶を吹き出してしまいました。
すみませんねえ、うちのコペニュが。でも選んだのあんたですから。
「な、なんだね君たち」
「せんせー、私達に隠し事してるでしょ♡」
「隠し事? なんのことだ」
「わかってるんだよお♡ せんせーのことはな〜んでもわかっちゃうんだから♡ エリーナのひ・み・つ♡♡ 二つ持ちってやつなんでしょ?」
「ワ、ワシはなにも知らん」
たぶん本当に知らないと思うんですが……。
校長が私を特別視していたのは、やはり優等生だからですよ。
強情な校長に眉をひそめるコペニュに、マリーが肩を叩きました。
「ここはボクに任せてください」
などと自信満々で、校長に近づいていきます。
すると、マリーは急に校長の腕に抱きつきました。
「校長先生ぇ、ボクぅ、先生みたいなおじさん見ると、ドキドキしちゃうんですぅ」
「ドキドキ?」
「興奮しちゃって、抑えきれなくなっちゃうんです♡ ほら、ここが♡♡」
おいおい。
おいおいおいおい。
「校長先生はどうかな〜。あ、先生も興奮してるんだ♡ ボクでこんなになってくれるなんて、うれしいなあ♡♡」
「ぬっ!」
ぬっ! じゃないんだよ。
あんたドMのロリコンじゃなかったんか。男の子でもいいんか。
エロけりゃなんでもいいのかよこのエロオヤジ!
「わ、校長先生の、おっきいですね」
「ちょっと待ったああ!!」
さすがにR18過ぎたのか、我らが主人公コペニュちゃんが止めに入りました。
小説がBANされたら存在消えちゃいますものね、生き残るのに必死です。
「マリー、あんた私とキャラ被るからやめなさい!!」
バカしかいないんかこのR18小説は。
削除されてしまえ。アカウントごと抹消されてしまえよ!!!!
「やめるかどうかは校長先生次第ですよ。どうなんです? 先生♡」
「うぐぅ、わかった、わかったから離れてくれ。……エリーナは確かに二つ持ちだった。これは本人すら知らない」
え……。
「エリーナさんは幽体離脱の力があるんでしたっけ? じゃあ本人も知らないもう一つの力とは、なんですか?」
「正確には、力はない。だが、他の聖女とは比べ物にならない力を宿している」
「回りくどいですね。それはなんです?」
「……それを話す前に、ドライドというものを知っているか?」
「遥か古、神に封印された魔王ですよね? 世界に破滅と絶望をもたらそうとした、究極の闇」
「その通り。しかし15年ほど前、魔王の魂が収められている宝物が、何者かによって破壊されたのだ。聖堂教会は事態が深刻化する前に、魔王の魂を神の力を授かる存在、聖女に移すことにした」
「仮の棺にしたってわけですか。ていうか、魔王ってお伽話だと思ってたんですけど、実在してたんですね」
「それに選ばれたのが、当時まだ赤ん坊だった聖女」
じゃあ、もしかして、まさか……。
「エリーナの肉体には、魔王が封印されていたのだ」
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それ以上のことを、校長は知りませんでした。
彼も聖堂教会から大雑把にしか説明されていなかったようです。
私の肉体に魔王が宿っていた。そんなの、考えたことも感じたこともなかったです。
ならば犯人は、魔王を目覚めさせるために私を殺害したのでしょうか。
もしそうだとして、気になるのは、
「エリーナ先輩に、そんな秘密があったんだね、コペニュちゃん。魔王はもう復活しちゃったのかな?」
「なーんか腑に落ちないな」
「なにが?」
「エリーナは死んだ。なら必然的に、魔王が目覚めるわけじゃない? どういうシステムなんだか知らないけどさ」
「う、うん」
「ならさ、エリーナが死んでからもう何ヶ月も経ってる。なのに世界は平和じゃん。国家間のいざこざはあってもさ。ドライドってのは、神話で世界を滅ぼそうとした魔王なんでしょ? 復活してたらとっくに破壊活動に勤しむでしょ」
「そ、それもそうだね」
そう、魔王の封印が解けた形跡がないのです。
これでは、私を殺した意味がない。
ですが、魔王ドライドの存在が、事件の重要な鍵であることは、なんとなく間違いないような気がするのです。
森で襲撃してきた不審者たち、魔王ドライド、この二つを結びつけるものはいったい?
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