身の上話
声の主は、自分が霊となって存在し続けるきっかけになったことを話してくれた。
淡々と話してくれたけど、実はショーゲキ的で。
「ええっ!!」「ウソ!!」「マジ!?」を連発したから、頭痛攻撃をくらってしまった。
そういう言葉遣いは、美しくないからキライらしい。
簡単にいうと、三十年前に知らない人にストーカーされていて、婚約者と一緒に警察にも相談したけれど力になってもらえなくて。
ある日、とうとうそのストーカー男に殺されてしまった。
男はジサツを図ったけれど失敗して、医療刑務所に入った……そのあとは不明。
不明なのは、誰も教えてくれなかったから。
確かに教えようもないよね。
いわゆる成仏できずに
だけど、自由な身になったはずなのに、ある一定の場所以外には何故か行けなくて。
時間の感覚もないから、どのくらい時間がたったのかもわからなかったって。
そして今日、私が落ちて怪我したところを見かけて、今に至ると。
それこそ、言葉もないといった感じだった。
ドラマとかニュースで目にするストーカー殺人に関わることになるなんて。
もちろん犯人とは絶対いやだけれど、被害者と、それも犯行後だなんて。
誰にも言えないし、言っても誰も信じないだろう。
それに、犯行がうちから半径十キロメートルの半円内で起こってたというのも信じられない。
そんな事件がおこりそうな場所じゃないのに。
はっきり言って郊外の田舎なのに。
『田舎だからって、犯行がないとは考えない方がいいぞ』
声がいさめてきた。
「うん。そうなんだろうけど、このあたりの人に悪い人がいるとは思いたくなかったし」
『まあ、気持ちはわかるな。わたしも殺されるまでは、ストーカーもさすがに殺人まではしないだろうと思っていたしな』
「だけど、どうして三十年も経っているのに、今なのかな?でもって、どうして私なのかな?」
『年数についてはわからんが、可能性がひとつ』
「なあに?可能性って」
『名前だよ』
「名前?」
『おまえの名前は瑞希というのだろう?」
「うん。そう」
『わたしは
「同じ名前なんだ」
『ああ』
なんだか親近感をおぼえてしまった。
名前が同じってだけで憑依されるってことはないと思いたいけれど、名は体を表すと言うし、波長か何か同じだったのかも。
『……言いたいことはわかるが、ちょっと違うぞ』
ツッコミが入った。
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