同居?開始

 「ばぶるって、なあに?」

聞いたことはあるけど、あれってずいぶん昔の話じゃなかったっけ?

『おまえは、バブルを知らないのか?』

「聞いたことはあるけど……歴史の授業で?だったかな」

しばらく間があいて、声が聞こえた。

『まあ、いい。ところで、ものは相談だが。このまましばらく、ここにいてもいいか?』

「ここって、ここ?」

 

 『いや、場所じゃなく。わたしがおまえの頭の中にいてもいいか?ということだ。どうも出られなくなったらしい』

「え?マジに?そんなの困る」

『なにに困るんだ?わたしはおまえと同じ女だぞ』

「いや、そういう問題じゃなく」

他人が頭の中とはいえ、間借りしてるってなんか変な気分だし。

だけど、助けてくれた……らしいのは事実のようだし、抜けでる方法がわからないなら仕方がない。

「えと、出られる方法がみつかるまでなら」

そうして私ととの変な同居?生活が始まった。

 

 脳内同居に同意したあと、夕方近くになっているのに気がついて慌てて帰宅した。

落ちた(?)ところの木々の間を抜けると、そこは昔使っていた山道で。

なので迷うこともなく、山を下りることができたのだ。

(ハイキングできなかった、というかお腹すいたな)

そんなことを考えながら帰宅した。

帰宅した私を見た母さんは、呆れたような顔をしていた。

「ちょっと、瑞希みずき!どうしたの!いい年して、また転んだの?」

また、とはひどい。そりゃ小さいときは転んでばっかだったけど。

 

 「ちょっと、すべっちゃったのよ。バッグが落ちたから取ろうとしたら、ずるずるっと」

「まったく。用心しなさい!汚れものは、水につけておくのよ」

「はあい」

私は部屋に帰り、部屋着に着替えた。

『優しそうなお母さんだな』

声が聞こえた。

山道を下りはじめてから今までずっと黙ってたから、存在を忘れかけていた。

「そうかなあ。あれこれ口うるさいよ」

『おまえを心配しているからこそ、だろう。ちゃんと感謝するんだ』

「え~?」

声の主は、母さんばりに口うるさそうだ。

『ところで、ここは何処だ?』

「私の家」

『それはわかっている。わたしが聞いているのは住所のことだ』

「あ、そっち?」

私は自宅の住所を教えた。

『じゃあ、今は何年だ?・・・西暦で』

「20XX年だけど、どうかしたの?」

しばらく沈黙した後、声が言った。

『わたしが死んでから、三十年経っている』

 

 「さ、三十年?!うっそ!」

三十年なんて、私が生まれるずっと前。

想像もつかないけど。

『いや、ほんとうだ。どうりですっかり変わって、わからなかったわけだ』

は、自分のことについて話をしてくれた。

 




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