第12話 魔王俺、村人を犬小屋に押し込む暴挙(前編)
ドガバキッ!
「ふん! そのまま寝てやがれ!」
センスのない虐待を行うハゲ頭を右ストレートでふっ飛ばし、少しだけ留飲を下げた俺。
仲間っぽい奴らもいたので、ついでに下僕であるレナとノナをぶつけて成敗しておいた。
レナの奴、なかなか見事なケツアタックだったな。
それにしても、コイツらがこの世界の冒険者か?
レベルが低すぎて相手にならねぇ。
現に俺の魔術で少々強化したレナノナの一撃でこのありさまである。
「まあそんなことより」
広場に集まった数百人の人間共。
子供や老人、女も多く虐待のしがいがありそうだ。
「くくっ、たまらんなぁ」
何をしてやろうか……村の中を見渡す俺の目に、ヤツ等の住居と思わしき建物が目に入る。
壁は薄く、そこかしこで穴が開いており、屋根の一部がないものもある。
なるほど……!!
まだ1日も滞在していないが、世界の傾向が分かって来たぜ。
この世界の贅沢=通気性重視!!
これで間違いねぇ!
(レナとノナも薄着だったしな!)
コイツら全員、狭くて窓も小さい、通気性最悪の
だが俺にとっても初めての『虐待』……準備に少々時間が掛かるな。
俺は両眼を閉じ、魔力を練り始めた。
おっとその前に、犬小屋を置く平らな土地が必要だな!!
ふむ、人間どもはすべて広場に集まっているな?
なら問題ねぇ!
*** ***
ズガアアアアアアアアアアアンッ!
100本近くの火柱が一斉に立ち上る。
本でしか読んだことないけど、王都の花火大会と見まごうような光景だ。
「う、ウソでしょ……?」
家だったものの燃えカスがパラパラと上空から落ちてくる。
あまりの出来事に、ノーラさんをはじめ村のみんなは石化したように固まっていた。
それはそうだよね、あたしとレナ姉がいじわる冒険者をブッ飛ばした直後に、邪悪極まりない雰囲気を纏い現れた黒ずくめの男が、みんなの家を吹き飛ばしたんだ。
かくいうあたしも自分で説明してて意味わかんないけど……。
レナ姉も大口を開けたまま思考停止しているし、ここはあたしがツッコむべきだろうか。
……ていうかとんでもないことをしでかしてくれたわね!
ふつふつと怒りが湧いてきたあたしは、懐から”アレ”を取り出すと衝動のままに叫んだ。
「こらガイ!!
よくもみんなのおうちを……やっぱあんた、悪い奴ねっ!!」
目を閉じて何かをブツブツを呟いているガイの頭を思いっきりはたく。
ぺしん!
これこそ対レナ姉最終兵器、ハリセンだっ!!
「ふおっ!? ノ、ノナちゃん?
なんとゆーことを……」
「はっっ!?」
ハリセンを振り下ろした姿勢のまま固まるあたし。
そういえばコイツは”魔王”だった。
今までの『虐待』がただのお遊びで、これがガイの本性なのだとしたら。
あたしの攻撃がきっかけとなり、ガイは怒りに任せて村を滅ぼしてしまうかもしれない。
「!? 集中してたんだから邪魔すんなよ」
ギンッ!
真っ赤な彼の瞳があたしを射抜く。
「ひっ……」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
何かの魔法が発動したのか、また地面が揺れ始める。
「よく見てな、ノナ。
哀れな人間どもが泣き叫ぶところをよぉ!!」
「あ、あああああああああっ!?」
一気に膨れ上がる莫大な魔力。
無力なあたしたちにコイツを止める術はない。
「通気性のいい快適な家に住むなんざ、この俺が許さねぇ!!
お前らの家を、ドラゴンが踏んでも壊れない通気性皆無、冷暖房完備の犬小屋 (魔界比)に作り替えてやるぜぇ!!」
「くはははははははっ!」
「きゃあああああああっ……って」
「「「はぁ?」」」
あたしたちの困惑の叫びが綺麗にシンクロしたのだった。
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