最強魔王(※善悪観念逆転)俺、拾った獣人姉妹が何をしても笑顔になるのでもっと酷いことをしようと思う ~だから救世主じゃなく魔王なんだが?~
なっくる@【愛娘配信】書籍化
第1章 新人魔王俺、異世界に侵攻する
第1話 異世界に降り立った俺、哀れなターゲット第1号を発見
「ひっ、ひあぁぁ……」
「ぐすっ、こないでっ!」
俺の足元で震える、力なき幼い姉妹。
くくっ……コイツらはどんな声で鳴いてくれるかねぇ♪
魔王としてこの世界に侵攻した俺の、初めての『虐待』が始まろうとしていた。
*** ***
「さぁて! ここが目的地か」
転移魔術の光が霧散し、俺の身体はふわりと草原に降り立つ。
設定した転移座標は人里離れた小高い丘の上。
世界移動を伴う最上級転移魔術だが、
「へへっ、綺麗な世界じゃねぇか!
征服しがいがあるってもんよ」
目の前に広がる絶景に、思わず笑い声が漏れる。
丘の周りには深い森が広がり、遠くには蒼く透き通った湖と、広大な海が見える。
背後にそびえる高山は新雪を戴き、ふもとに寄り添うように小さな村が点在する。
村の周りには牧草地と畑が広がり、牧歌的な風景を形作っている。
征服対象としては少々……いやかなりド田舎な世界なのだが、新人魔王であるガイはまったく気にした様子がない。
「いいねぇ!」
「平和を謳歌する原住民を俺様の力で蹂躙し、”虐待”する……ゾクゾクするぜぇ!!」
ブアッ!
興奮のあまり握りしめた右腕から、赤黒い炎が巻き起こる。
無力な人間共が泣きわめき、俺の前に膝まづく……その光景を夢見て鍛え上げてきた魔力を抑えきれない。
ズゴゴゴゴゴゴゴ
「おおっと、いけねぇいけねぇ!」
荒れ狂う魔力が丘を丸ごと吹き飛ばしそうになるが、すんでのことろで押さえ込む。
ようやく征服対象の世界に派遣されたのだ。
なるべく長く楽しまねぇとな!
ざあああぁ
一陣の風が吹き、腰まである漆黒の髪をたなびかせる。
ギンッ!
空間すら切り裂くという魔剣カオスブリンガーの切っ先を手近な村に向けると、俺はぺろりと唇を舐める。
まずはあそこだ……そう思った次の瞬間。
「きゃ、きゃあ~~~~っ!」
「くっ……なんでこんなことにっ」
「……んあ?」
女の悲鳴が俺の耳を打った。
*** ***
数か月ほど前、突然モンスターが狂暴化した。
街道の行き来が出来なくなり、他の村との交易で生計を立てていたあたし達の村レンドはたちまち窮地に陥る。
実りの秋を迎え、収穫した農作物のほとんどを出荷した直後に襲ってきた災厄。
村の外にある畑に出ようとしても、すぐにモンスターに襲われる状態で……僅かな食糧の蓄えは早々に無くなった。
たまたま通りかかった冒険者パーティに助けを求め、何とかモンスターの侵入は防ぐことが出来たのだけれど。
ここ最近2週間ほど、まともな食事をとれていない。
お腹と背中が引っ付きそうだ。
残り少ない食料を巡って、村の雰囲気は良くない。
昨日も配給の食料をちょろまかした人間がいると男の人たちが殴り合いの喧嘩をしていた。
それに……。
孤児であるあたしたち姉妹に対する視線が冷たくなってきた気がする。
まあ、非常事態だし仕方ないけどね。
そんな中でも、村長のノーラさんはあたしたちをかばってくれる。
捨て子だったあたしたちを拾い、我が子のように優しく育ててくれた恩人。
わたし、木の実がたくさん採れる秘密の場所を知ってるんだよっ!
ごはんを取ってくれば村に置いてもらえるよ!
そう意気込む姉に引きずられるようにして村の外に出たんだけど……。
あたしは早くもその選択を後悔していた。
グルルルルルルッ……
目の前には銀色の毛並みを持つ大狼、シルバーウルフが4、5……6匹。
血走った眼であたし達を逃がさぬように囲んでいる。
「どどど、どうしようノナちゃ~ん!?
そ、そうだ! 狼さん、とっておきのアメちゃんあげるから見逃してっ?」
ガオオオオオンッ!
「ひえええええええっ!?」
モンスターを飴なんかで餌付けしようとする双子の姉、レナの事は置いといて、なんとかこの場を切り抜ける手段を考える。
(下級モンスターであるシルバーウルフが6匹……足の速さには自信はあるけど、逃げ切れる可能性は低い)
(あたしが唯一使える攻撃魔法、ファイアアローは単体攻撃だ。
1匹倒しても倒してもその隙にヤられる)
「お、狼さん? いい加減にしないとレナちゃんパンチが炸裂するぞっ……ふぎゃっ!?」
べしゃっ
へろへろパンチを繰り出した反動ですっ転ぶ姉。
(……レナ姉は
やはり姉にシルバーウルフを引き付けてもらい、その隙にあたしが村に助けを呼びに行くべきだろうか?
村に滞在しているBランク冒険者パーティの事を思い出す。
(でもアイツらサイアクだもんなぁ)
禿げ頭の戦士をリーダーとしたその冒険者パーティは、モンスターの群れに襲われた村を救ってくれたのだが……。
「命を賭けて戦ってやったんだから、報酬をはずむのは当然だろ!?」
噂では1000万センド (あたし達の食費が1か月100センドだ)もの法外な報酬を要求しているらしい。
こちらがすぐにお金を出せないと分かるとやれ良い物を食わせろだの、モンスター1匹狩るごとに家を1軒寄こせだの、まるで王様のように振舞っている。
彼らに出て行かれたら、村はなすすべもなくモンスターの群れに襲われて全滅するだろう。
先日も冒険者パーティの魔法使いが誕生日だと言うので、1頭だけ残っていた貴重な牛を差し出した。
もちろんあたし達には何の分け前もない。
そういえば昨日、禿げ頭の戦士が思いつめた表情を浮かべたセレナお姉さんの肩を抱いて倉庫の裏に歩いて行ったんだけど……あれってもしかして。
(もしあたしがアイツらに「お姉ちゃんを助けてください!」なんてお願いしたら、「ああん? ガキには金は出せねぇだろ?
だが……そうだな、お前がその無駄に育った身体で払うなら考えてやらんでもない」とかイヤらしく言われちゃうんだろうなぁ……)
「ああもう、そんなのダメっ!」
「……ノナちゃん?」
「レナ姉! あたしがなんとか魔法で隙を作るから、ふたりで一緒に逃げよう!」
流石に姉にモンスターを引き付けてもらうというのは冗談だ。
あたしのすばしっこさに賭ける!
「ええっ!? まだ木の実を採れてないよ?
そこの小川を超えたらもうすぐだから……なんとか話し合いで解決しようよ、うん!」
「いやいやいや、無理でしょ……」
「大丈夫! 数々のワンちゃん猫ちゃんを虜にしてきたレナちゃんのフェザータッチが……」
モンスターに囲まれているにもかかわらず、緊張感なく言い争いを続けるあたしたちだが、それも仕方ないだろう。
村や街の中で育ち、冒険になど出たことがないただの村娘。
世界に起きつつある異変の事など、この時は知りようがなかったんだ。
……そんなあたしたちをモンスターが見逃してくれるはずもなく。
ウオオオオオオオオンッ!
ばばっ!
「……えっ」
「あっ」
遠吠えと共に、一斉に飛び掛かってくるシルバーウルフたち。
ヨダレまみれの真っ赤な
粗末な布の服でシルバーウルフの牙を防ぐことなど不可能だ。
間近に迫った死を目の前にして、呆然と立ち尽くすあたし達。
その時。
ザシュッッ!!
どこからともなく飛んできた見えない刃がシルバーウルフどもを両断した。
*** ***
ドサドサドサッ!
綺麗に2枚におろされた狼型の魔獣共が草むらに転がる。
レベルの低い魔獣共だな……”魔術”を使うまでもない。
俺たち魔族は、術式と呼ばれる設計図に魔力を込めることで強大な魔術を使うことが出来るのだが、
この程度の魔獣に使ってはオーバーキルも甚だしいだろう。
魔力そのものをぶつけるだけで事足りた。
「「……!?!?」」
ぺたんと尻餅をつき、驚いた表情でこちらを見上げているのは二人の少女。
髪色は違うが同じ顔の作りをしているので、双子という奴だろう。
(ふぅん?)
俺は、哀れな犠牲者一号二号をじっくりと観察する。
「ふ、ふわっ?」
やや間の抜けた声を上げる左側の女はふわふわとした金髪で、同じ色の犬耳が頭頂部でピコピコと揺れている。
人間年齢的に11~2歳くらいだろうか?
大きな青い瞳が興味深そうにこちらを見上げている。
スレンダーな身体に粗末な布の服を着ており、すらりと伸びた足元には薄汚れた茶色の木靴を履いている。
「くっ、なによっ!」
それに対し、鋭い目つきで睨んでくる右側の女。
左側よりやや長めな茶色の髪を逆立てている。
犬耳はぎゅっと引き絞られ、こちらを警戒していることがうかがい知れる。
年の割に豊満な胸を隠すように自分の肩を抱いている。
「そちらのガキは、俺がどういう存在か、分かってるようだなぁ?」
天真爛漫な姉に、聡明な妹という所か?
か弱い獣人族の姉妹……いいねぇ!
料理しがいがありそうだ!
興奮した俺は、べろりと舌なめずりをする。
「?? あの、アブない所を助けてもらってありがとう……」
「!! 駄目ッ!? レナ姉!!」
金髪の方が、のんきなお礼の言葉と共に立ち上がろうとする。
それを慌てて止めようとする茶髪。
もう遅い、一思いにやってやる!
ブンッ!
俺は容赦なく、魔剣カオスブリンガーを振り下ろす。
ザシュッ!!
「……えっ?」
漆黒の魔剣は二人の間の地面に深々と突き刺さった。
ブオオオオオオオオオオオオオッ!
間髪入れず、刀身から放たれる漆黒の魔力。
「あっ……あああああああああああああっ!?」
レナと呼ばれた方がまともに魔力を浴び、絶叫する。
ははっ!!
いいねぇ!
幾ら何の力も持たない獣人族とはいえ、これで俺の力が分かっただろう。
ぺたん……
「あ……あ……」
目の前にいるのは正義の味方なんかじゃない。
魂でそれを理解したのだろう。
力なく座り込み、か細く震えるレナ。
ちょろろろろ……
恐怖のあまり失禁してしまったのか、ショートパンツの下に水たまりが出来る。
「ね、ねえアンタ! あたしを好きにしていいから、レナ姉は……お姉ちゃんだけは助けてよおおおおおおぉぉぉっ!!」
エメラルドのように澄んだ大きな目いっぱいに涙を溜めながら、気丈に叫ぶノナ。
くくっ……この表情、ゾクゾクするぜぇ!
「へっ……どうするかなぁ!!」
「”虐待”は1匹だけにしてもつまらんからなぁ! 姉妹で鳴かせる方が何倍も楽しいと思わねぇか!」
少女の懇願を、一言で切り捨てる。
「なっ……この悪魔!!」
ボオッ!
抵抗するつもりなのか、最下級の魔術を発動させるノナ。
人参サイズの炎の矢がこちらに飛んでくるが、こんなものは脅威にすらならない。
「ふっ」
「あっ……あああっ!?」
吐息一つでかき消された炎の矢に、絶望の声を上げるノナ。
その様子にかまわず、あらためて二人を観察する俺。
(ふむ……この年齢にして背が低いな?
(二人で頑張って食料を探しに来たってとこだろう……それならぁ!!)
コイツらにぴったりの『虐待』を思いついた俺は、興奮に両眼をぎらつかせる。
「「ひっ!?」」
恐怖で硬直する二人にかまうことなく、俺はカオスブリンガーの柄を握る右手に力を込める。
必要な魔力はカオスブリンガーを使って充分に練り上げておいた。
「お前らにはぁ、これから……
「「あああああああああっ…………って、は?」」
「ふはははははははっ!」
なぜかポカンとした表情を浮かべるレナとノナ。
それにかまわず高笑いを続ける俺なのだった。
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