第4話
大学四年目、私は念願の研究室に配属される。
教授のタイムマシン研究は、私が想像していた以上に進展しており……。
「つまり、ブラックホール理論とワームホール理論の組み合わせだな。ワームホールがブラックホールに変化するから使えない、と諦めるのでなく、変化した後のブラックホールも利用する考え方だ」
「先生! 宇宙ひも理論の応用ですね!」
「そう、その通り」
真面目に勉強してきたつもりでも、教授と院生の会話は難しくて、完全には理解できなかった。
とはいえ、基礎的な理論くらいはわかる。
SFにも出てくるワームホールは、異なる空間を結ぶという概念だ。現在と過去の空間を直結できて、そこを行き来できれば、理想的なタイムマシンとなるだろう。
ただしワームホールが非現実的なのは、極度に不安定な存在だからだ。もしもワームホールを発生させることが出来ても、タイムマシンの経路になる前に、ブラックホールに変化してしまうという。
ブラックホールならば、既に存在が確認されたものであり、ワームホールよりは身近に感じられるが……。
残念ながらブラックホールは、光さえ脱出できないほどの、いわば宇宙の墓場だ。間違ってもタイムマシンの経路には使えなかった。
しかし過去への移動を考える際、このブラックホールを利用する方法もあるのだという。
過去へ移動するということは、時間を逆行するということ。そのためには、進んでいたつもりなのに一周して戻っているという、閉曲線の経路を用意すればいい。必要なのは疑似的な宇宙ひもであり、ブラックホールを引き伸ばせば作り出せる……。
ここまでが私の理解の範疇であり、その先は不明だった。しかし教授の頭の中では鮮明な現象であり、既にコンピューターにおけるシミュレーションも終了。実際に小型のタイムマシンを作ってテストしてみる、という段階まで到達していた。
そして私は、教授の研究室の学生として、その実験に立ち会うチャンスを得られたのだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます