今日から私は大学生 ――タイムマシンに憧れて――

烏川 ハル

プロローグ

   

「起きなさい、優子ゆうこ。もうすぐ着くわよ」

 肩を揺すられて、私はハッと目を覚ます。

 東京から京都まで、新幹線で移動する最中さいちゅうだった。

 いつに間にか、居眠りしていたらしい。静岡のあたりで、白い雪を被った富士山の姿に感激した記憶はある。だから、私が眠ってしまったのは、その後だったのだろう。


「ありがとう、母さん。なんだか長い夢を見てたような気分だわ」

「あら、どんな夢?」

「わかんない、だって夢だもの。夢の内容なんて、起きたら忘れてしまうのが普通でしょう?」

 何気ない言葉を母と交わす。入学式が終われば彼女は帰ってしまうから、こんな時間を過ごせるのも、あと数日だけ。

 そう、数日後には入学式があり、いよいよ私の大学生活、つまり京都での一人暮らしが始まるのだ。

 厳密には「数日後」だが、今この瞬間、京都が迫っているせいだろうか。あるいは、ただ単純に、気持ちがはやっているせいだろうか。

 早くも「今日から私は大学生」という気分だった。

   

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