第6話 恋はしない
呆れる下界の2人をよそに、美化は再びZERO WORLDのコントローラーを握った。そして『勇者ミケ』のレベル上げを続行する。
机の上に置いたスマホに、友人 影山からのLINEが入っている事に気づくのは午前3時を過ぎた頃だった。
「もう3時かー。さすがにやりすぎた。残ネル楽しすぎるよ。でも寝ないと、私の美肌が……」
パチンッ!
美化は残酷のネル・フィードをセーブして電源を切った。
「準備は整った。明日は死神マシーンをぶっ倒すところからだもんねっ!」
美化はお風呂に入っていなかったが、そのままパジャマに着替えた。そして、机の上のスマホを手に取った。
「影山、ごめんっ、忘れてたー」
ゲームに集中しすぎて、影山の事をすっかり忘れていた自分に呆れながら、メッセージに目を通す。
「だめだった? なんで? 他に好きな人? マジでっ?」
容姿端麗、頭脳明晰な影山の2度目の失恋。美化は複雑だった。
(こんなに恋とは実らないものなんだ。影山はその失恋から何を得たの? 得るものなんてあるの? 涙と屈辱だけじゃないの?)
(人として成長できる? 人の気持ちが分かる人間になれる? 教えてよ!)
(仮に付き合えたとしても、嫉妬とか束縛とかってよく聞くし。そんなの嫌)
(将棋とレトロゲーの時間は宝物。邪魔されたくないもん。うん。私に恋なんて無理。決定!)
この日、美化は改めて『恋はしない』と心に決めた。
……しかし、渕山美化は数日後、『人生初の恋』をする事になる。
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