第19話 藤原の恋その2

二人は、結局麻布十番のバーで待ち合わせた。この店は、皆が良く使う店なので鉢合わせする事もたまにある。でも、何だかんだでここになる。


”ソフィアと谷川が付き合い始めたんだって?“

“何かそうみたいね。”


”綾、心穏やかじゃないだろう。“

“何でよーっ。つまんない事言ってないで、早く飲みなよ。”


僕らは乾杯をしてビールを飲んだ。

藤原は飲んでいるうちに、ある想いから離れられなくなり、やっぱり綾の事が好きだと思った。


”で、話って何?“

“まぁ何て言うか、ずっと作家になる夢を追ってただろ。出版社に務めたらもっと近くなるかと思えば、どんどん遠くなってしまってさ。”


”そんなもんだよねぇ。あたしもさ、アパレルに務める夢を叶えたのに、今はあんまりハッピーじゃないよ。“


二人は、そんな取り留めの無い会話を続けた。会話しながらも、藤原は何処か上の空だった。

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