ムーン・スペースの傍から

主道 学

第1話 はじまり

「みなさんこんにちはー! 小谷 真一です。ここ御宮下おみやげ市は今年の夏は大勢の期待や注目や熱気や、その他いろいろで暑さが凄いですよねー。ねえ、広瀬さん。なんといっても今日でもう工事を始めてから2年は経ちました……。アハハハハ。待ちに待った超巨大施設『ムーン・ゆれあいスペース』の竣工式がもうそろそろになるようですから。皆さん熱中症にはご注意くださいね。アハハハハ」

「そうですねえ。これで御宮下市は太陽系初の月にもっとも近い市になりますね」

「アハハハハ。この『ムーン・ゆれあいスペース』は簡単にいうと月と御宮下市を繋ぐゴンドラです……日中建設。谷ノ瀬木重機などの多くの建設会社による大規模な資本によって実現しました……」

 

 月と地球を繋げる場の超巨大施設が建ってから、ぼくの日常は変わった。いつもの高校への通学路。いつもの通り過ぎる八百屋に文房具屋。近所のおばさんたち。いつもの街の景色。いつもの夏の空。みんなは超巨大施設を「ムーン・スペース」と呼ぶようになった。


 空を見上げる。

 太陽の熱によってぼくの頬に一筋の汗が流れる。

 月とここ御宮下市が幾本のレールで繋がっている。

 これは、その日から始まるぼくと彼女と月での恋物語だ……。

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