第三章 2 わたし、行ってもいいですか?
伊太池さんは両肩をビクッとさせてから、
「もちろん、防寒具やスノーシューズ等、必要な
そこでポン、と手を打つ。
「どなたか一人、こちらのスタッフをお借りすることはできませんでしょうか?」
「……と、言いますと?」
局長が
「私ども保安局の特殊部隊からも特に優秀な隊員を数名選出致します。ですので、アンブローズさんからもどなたか一人同行していただくということです」
なるほど。保安局とアンブローズ、両方から人員を出すという中間を取った案で来た。
確か地理の授業で習ったっけ。糖ヶ原より北の地はヌプルゥシケ自治区という未知で未開の
相手は野蛮人ではなく、二十人未満の小集団。紅衣貌でもなければ
戦闘のプロである特殊部隊の隊員が数名同行する。たぶん、その隊員数名だけで戦力的には間に合いそうである。
行ってみたところで、こちらは
特殊部隊の戦い方を知れば参考になるかもしれないし、何より終末思想集団の実体も生で見られる。今後、アンブローズで長く働くことを
「うちのスタッフ必要ですか? その選出メンバーだけで十分だと思いますけど?」
「あの……局長」
わたしはおずおずと入った。
「わたし、行ってもいいですか?」
その瞬間、この場にいる全員の視線がわたしに集中するのが分かった。ベルウッドさんでさえも、見えない目をこちらに向けて眉を
「局長が
わたしの
「保安局としては心強いです。こちらのスタッフが一名来てくださるだけで
伊太池さんは嬉しそうだが、局長から許可が下りるとは思えない。
局長は腕を組み、難しい顔でテーブルに視線を落とした。
やっぱり困らせちゃった。言うんじゃなかった。
「紗希、大丈夫なのか? 寒がりのくせに」
「アジトに
ベルウッドさんとノエル先輩に問われる。
確かに、今回は敵よりもロケーションの面で心配である。
「その点はご安心ください。雪上車をご用意致します」
伊太池さんはツアーコンダクターよろしく説明する。
「彼らのアジト付近ギリギリまで行く計画ですので、徒歩での移動は最小限に
「最小限って、どのぐらいなんだ?」
と、今度は軍曹から。
「数百メートル程度です。最悪でも、一キロ以内までは近付きます。なんなら、一日早く特殊部隊に行かせて、そこに仮設の対策室を作らせておきます」
たとえ数百メートルでも豪雪地での移動は骨が折れそうだが、特殊部隊は雪山等での訓練もしているはず。きっと
わたし大丈夫かな? ちょっと不安になってきた。
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