障害者じゃない!

夏生

プロローグ

 有賀 来夢 (ありが らいむ)

 オレは障害者じゃない。身体が女で心が男で何が悪い。この例えだって、周りの奴らの勝手な解釈にすぎない。

 それに性同一性障害っていうのは分かってるけど、これは障害ではない。

 1つの個性として受け入れていくべきだ。

 もう一回言う、とにかくオレは障害者じゃない。誰がなんて言おうと。

 それ以前に、他人に俺の性別を決める権利なんてないだよ。そんくらい常識だろ。


 佐野 彩葉 (さの いろは)

 私は障害者じゃないの。ちょこっと他の人と色の見え方が違うだけなの。

 例えば、赤が茶色に見えたり、青が紫に見えたり……。だけど、色の見え方なんて1つの感性でしょう?これが私なの。

 なんて言われても変えられないことだから、これは障害じゃないの。わかった?


 河野 理玖 (かわの りく)

 ぼぼ、ボクはしょ、障害者じゃな、な、無いです…。ここ、これは吃音症、てて、ていうものなんですけど、しょ、障害じゃな、な、無いんですよ…。ま、まずまず、しゃしゃ、喋り方なんて、ひ、人それぞれな、なな、なんですから、ここ、個性ですよ…。だだ、だから、ボクはしょ、障害者じゃ、な、な、ないで、でで、ですよ…。


 東 礼於 (あずま れお)

 俺は障害者じゃないぜ。ただちょ~っとだけ人に見えないものが見えるだけだ。

 あ、霊感的なやつじゃないぞ。うーん、例えばだな、音に色、感情に色、文字に色、色に音、とかが見えたりするってやつだ。これを共感覚っていうんだ。

 ナルシストとか中二病とかじゃないぞ。こんなことも知らないのか?バーカ。

 ってか名前が中二病みたいってそんなこと言われても知らねーよ。文句は俺の親に言え。


 浦野 奈緒 (うらの なお)

 あたしは障害者じゃないわ。髪が白かったら障害者って、ただの偏見よ。

 よく聞いてなさい。あたしのこれは、アルビノという突然変異の一種なの。髪や肌が真っ白で、人より、太陽の光に弱かったりするのよ。でも、障害とは違うわ。

 一生涯抱えるって意味なら合ってるけどね。

 とにかく、あたしは障害者じゃないわ。なんでも1つにまとめないで頂戴。

 動物園にいるアルビノのカンガルーは可愛い可愛いって言われるのに、人間になると別なのね。最低。

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