バベルの塔のさかなたち

市村みさ希

シーン0 バベルの塔


昔々、全ての地に住む人間は同じ言葉、同じ言語を用いていた。


あるとき、東の方から移動した人々がシンアルの地の平原に至り、そこに住みつきこう言った。


「さあ、ここに我々の街と塔を作ろう。塔の先が天に届くほどの。我々があらゆる地に散って消え去ることのないように。我々の為に名をあげよう」


人々は傲慢だった。彼らは神が居られる天まで届く塔の建設を始めたのだった。


そこで神はその者たちが作ろうとしている街と塔を見るために地に降り、彼らとそれを見てこう仰った。


「なるほど。彼らは一つの民として同じ言葉を話している。そのためか。天まで届かせるとするこの業は、人々の言葉が同じのため。そうしてこのようなことを始めたのか」


それから神はまたこう仰った。


「ならば私は彼らの言葉を乱す。人々の言語を乱し、違う言葉を話させることにしよう。彼らが互いに相手の言葉を理解できなくなるように」


神がそう仰ると途端にそこはそうなった。


人間たちは混乱した。お互いの言葉がまるで通じなくなったためである。


そうして彼らは塔の建設と街造りをやめ、世界各地へ散らばっていった。神が全地の言葉を乱し、人間を全地に散らされたからだった。


その為にこの街はバベルと名付けられた。



参考/「創世記」

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