ノリで5年前に作ったギルドは知らぬ間に世界最強と呼ばれギルドマスターの俺はなぜか美女と強すぎる団員達に崇高されていました

紋皇 一兎

プロローグ



世界最北端の国、エルガルド


寒さが厳しい冬の季節、上着を何枚重ねても

肌に冷たい風が時々当たる。

冬の夜はみな、家に籠っているためいつも栄えている道には人1人いない。

そんな中彼エイト、は夜にも働く、“冒険者”と言う仕事をしている。時には薬草採集、時には貴族の護衛、そして1番依頼が多いのが魔物の討伐だ。今回はまぁ…町周りをぐるぐる回り森から不審なものが出てこないかと言う簡単な仕事である。


そしてその依頼の終了時間が過ぎ自宅へ帰ろうとした時に、ふと路地裏からガサガサと音が聞こえた。

なんだと思い、顔を出して見てみると、路地裏で震えながらゴミ箱を漁る奴隷の姿が見えた。


俺も寒かったが、その時はあまりにも痩せ細った体を見て心配が勝った。


「何してるんだ?大丈夫か?」


ビクッと体を動かし、逃げようとしていたので腕を掴み、


「ほら、これ店で買ってきた野菜スープだ。まだ熱々なんだからお前にやるよ。」


奴隷と思わしき子供は恐る恐る手に取り怪しみながら口をつけた


「あぁ…」


暖かさに感動し、声が漏れてしまった。

次第に子供は勢いよく食べて、飲み始めた



「火傷するからゆっくり飲めよー?」


そして気づいたら飲み干していて、物足りなそうな顔をしながらもペコリとお辞儀をしてきた。


「なぁ、どうしてこんなところにいるんだ?」



最初は俯いていたもののゆっくりと話し始めた

「……両親がお金がないって言って私を奴隷商に売り飛ばして、、奴隷商は奴隷への扱いが悪くて暴力とか、私より年上の奴隷には性暴力もしてきた…いつか自分もされるんじゃないかって怖くて隙を見て逃げ出してきた…今も探してるかもしれないから人の行き交いが少ないここで食べれそうなもの…探してた」



「にしても、その奴隷商ムカつくな。なんか俺から仕返しできたらいいんだけど…。とりあえず君を助けたいんだけど許可なく人の奴隷を連れていたら罰せられるからなぁ」


「そう…だよね…食べ物くれただけでありがたかった…です」


「いや、待って。君を買うよ。その奴隷商のとこに案内して、そこで君たちの仲間も言い方は悪いけど買えるだけ買う。」


「な、なんでそこまで?見ず知らずの奴隷に…」


少女は疑いの目をかけながらも少しの希望の眼差しをこちらに向ける


「良いこと思いついてね、いずれその奴隷商は潰す。そのためにはそいつよりも上の地位に立って跪かせることが必要だ。ってなわけで奴隷でもなれる職業についてもらう。それが冒険者だ。」


「冒険者と地位になんの関係が…?」


「俺がギルドを作って奴隷のみんなをそこのメンバーに入れる。流石に奴隷はギルドを作ることができないから代理でね。そして上位のギルドは貴族にも匹敵する財力と地位を持てる。どう?可能性は限りなく低いけど」



「…死ぬよりマシ…お願い…します」


「よっしゃ!それじゃその奴隷商のとこへ連れてってくれないかな」


俺はこの時上位のギルドへ入り込むことは無理と思い、せめてこの子たちが生活できるくらいのお金を自分で稼げるようになってほしいと思い、冒険者の道を提示した。


上位ギルドという目標を立てることで努力をよりするかと思っただけだ。これからこの子の仲間を買うが、それでも全員は無理だ。

心苦しいがその子達以外は助けることはできない…



そうして俺と奴隷の少女は奴隷商の元へ向かい、その後『ウェルテクス』というギルドを作り、ギルドマスターの俺は姿を消した。

奴隷ではなかった俺がギルドマスターだとトラウマを蘇らせちゃったりで信頼できないと思ったからだ。

少女には前の名前を変えて名づけてほしいと言われたからアメリア=ルーナと名付けた。ルーナに指揮は任せて冗談で「ゆっくりでいいからお金は100倍くらいに返してくれ笑」と言ったら

「わかりました」と返答が来てしまった。

「俺は、他の国を拠点に活動するからそれまではルーナ、頼んだぞ」


と、嘘をつき別れた



全財産250万ゴールドを費やしてしまったが、どーせ趣味もない。だったら未来の若者にでも託そうじゃないか。とか言いながらまだ俺は成人して6年のまだまだ若者だが笑



こうしてお互いの様子を知らないまま5年の月日が経った。






エルガルドの隣国であるロアマス帝国



「くぅーーー!仕事終わりの※エールは最高だな!!」


俺は誰ともチームを組まず、着々とランクアップをしてS〜Fまであるランクの中で中級者と呼ばれるDランクまで上り詰めていた。そして一人で昼間から飲んでいた


※エール…14歳以上(成人の儀式を終えたもの)が飲めるもの。アルコール成分が入っている。


ちなみにそれぞれのランクの呼び名は


S級 4人(神騎士ヘロスナイト


A級 19人(幻騎士ラオコーンナイト


B級 約100人(龍騎士ドラゴンナイト


C級 約5000人(上級者)


D級 約2万人(中級者)


E級 約10万人(初級者)


F級 約100万人(見習い)


※チームを組んで功績を上げたり、※ギルドで功績を上げたりすれば個人でやるよりは早くランクアップを見込める


でも、自由が効かないから俺は嫌だ。

毎回魔物討伐とか無理無理


※チーム その場即席の冒険者の集まり、2人以上でチームと呼ぶ


※ギルド 契約をして入る集団、登録をすれば5人から始められる。創設に10万ゴールドかかる。


「なぁ、知ってるか?新しいSランク冒険者が誕生したらしいぞ!これで5人目だな。しかも女でそれでさえ史上2人目なのに最年少の17歳らしい」


「17歳!?俺ら中年が必死に頑張ってもCランクなのに一回り歳の差がある女がSランクだと?!」


「今、その子のギルドに入団したい奴らが続出してるが、かなり厳しい審査で団員は全員Bランク以上らしい。」


「は!?そんなの150人もいねぇぞ!なんて名前のギルドなんだ?」


「今世界ギルドランキング1位の奴らだよ…で、そいつは副ギルマス」


「なんだ、1年前から莫大な功績を上げ続け、エルガルド国王も顔が上がらないって言われてる奴らか、、、そりゃそんだけの化け物がいるもんだよ。」


へぇ、長らく出なかったSランクに1人追加されたのか。17歳って俺と8歳も違うのか…

なんか自分がみじめに感じるな



「でもそいつが副ギルマスってことはギルマスはもっと強いんだろ?そんなやつSランクにいたか?Sランクにあるやつは全員ギルマスだし」


「あぁ、なんかその女が言うには、「遠い国で私どものために暗躍し続けてくださる英雄だ。私なんかより何倍も頭が冴えるお方だ」だそうだ」


「そんな奴いんのかよ、『ウェルテクス』って本当に貴族以外から構成されたギルドなのか?並はずれた剣さばきから魔法って言われるけど一般市民なのか怪しいぞ?」


…………ん?ウェルテクス?聞き間違いか?




ザワザワザワザワ



「何だ?急に外が騒がしく…」


「ウェルテクスだ!あれが副ギルマスか!やっぱオーラが違うな。しかも美人だし巨乳だし、、、でもギルマスはまたいないのか。」


「ちょっと退いてもらえますか?私達はロアマス帝国へ魔物討伐の依頼に来たので」



「は、はい」


「威圧感半端ねぇ…伊達に世界1のギルドの副ギルマスじゃないな…」


…嘘だろ?本当にウェルテクスなのか?本当に“ルーナ”なのか?この5年で大人っぽくなりすぎじゃね?久しぶりに挨拶でも……


いや、やめておこう。相手は俺のこと覚えてないだろうし、覚えてたとしても身勝手で自分のことを捨てたやつなんて嫌っているに違いない。


こっそり裏口から逃げよう




−−−−−−−−−−−−−−−−−−

あれから5年、マスターからの連絡が来ない。今回他国の依頼を初めて受けたのはマスターを見つけるためでもある。あの優しく、私どもよりも遥か先を考え、たくましく、凛としているお方…今でもあの日を思い出して体が熱くなってしまう…


「ん?これってご主人様の匂いじゃない?」


犬の獣人であり、4人目にあの方に買われた奴隷。名前はマナ=フレア

マスターだけにしか尻尾と耳は触らせずにいて、以前触ろうとしたチャラい男達を半殺し、いや9割殺していた。マスターの前だといつも本物の犬のように懐いていた。



「本当か!?あるじがここら辺にいるのか!」


鬼人族で、3人目の奴隷。

名前はイグニス=シエラ。

剣聖と言われる、世界で10人もいない称号の持ち主。マスターに忠誠を誓い、1番忠誠心が高い者と言っても良い。


「フレア、どこにいるか案内してくれる?」


「わかった、でも結構近い、すぐ会えるかも、楽しみ」


久しぶりにフレアが尻尾を振るのを見た気がする



−−−−−−−−−−−−−−−


ひとまず、あの人混みからは抜けられたな。こうなると当分は他の国に移住した方が良いかもしれない…


「あ!あれがご主人様かもしれない!」


…?この声…この呼び方…いや、振り返るな。すぐに逃げよう。身体強化の魔法くらいなら俺もできる。ここは住宅街だから撒ける!


ダッ!



ガシッ!


ものの数秒で肩を掴まれた。さすが獣人のフレアだな。人間の俺じゃ勝てない…って諦めるな!あいつらに蔑んだ目で見られるだけだ!力はこっちの方が強いはずだ!


ガシッ!


また掴まれた。力も強い。何にも勝てない気がする


「こっちを向いてください」


「な、なんですか」


「はぁ…フレア早すぎ…」


「主がいるかもわからないのに急に野生の反応を発揮するな…」


…まずいまずい…このままだと目で殺される…最低とか言われる…


「さぁ、早くこっちを見て。」


「よ、用事がこの後あって…「私がそれ解決するから」」


…え?そんだけ俺を殺したいの?一応助けたの俺だよ?すぐ別れたけど。


「ほら!向いてって!」


グルン!


嘘だろ!大人の男を持ち上げて振り向かすのは聞いてないって!!


クンクン


「…や、やぁ久しぶり」


その瞬間3人は跪き指揮担当のルーナが口を開いた


「お待ちしておりました。マスター、世界の頂点に立つ準備は整いました。」


お待ちしてたっていうか君たちが捕まえたんだけど…


「って!なんでそんなかしこまってるの!?顔をあげて?」


「いえ、マスターがいなくなってから5年もの月日をかけてしまいました。合わせる顔がありません」


とりあえず…怒ってはないのかな…?

でも5年でギルドランキング1位ってどうなってんの!?今の2位一応10年もの間1位を守ってきたんだぞ!



「と、とりあえず周りに人が来る前に何処か移動しよう?話はそれからさ」


「「「はっ!」」」

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