劇場型総合部活動 ~げきぶか~
石坂あきと
第一幕 その音楽は彼方から響く ①
私、鬼無藍朱《きなしあいす》にとって、いわゆる季節外れの転校生という言葉は強い魅力、もとい魔力を秘めていた。とは言え、まさか自分自信がそのいわば規格から外れた存在に成ってしまうとは、想像すらしていなかった。
本来なら姫華女子高等学校への入学は通常通り4月だった。
それがどうだろうか。ずるずると、家庭の事情、自分自身の事情、そして引っ越しの事情が複雑に絡み合い、もつれ合い。二転三転、きづけば四転と転びに転がり、今に至ってどうしようもなくなってしまった。
どうしようも、なくなった。
何がか。
説明しよう。
本日の日付は六月八日。そして姫華女子高等学校への初登校が、ほんの一週間前
――つまり――なんてともったいぶることなどないが、二ヶ月あまりきちんと入学した方々とズレが発生していることになる。
そのズレが何を生んだか。
それは一人のぼっち少女を生み出したのだ。
物珍しいものを見る目で季節外れに入学した私は、色眼鏡で見られることになった。どうして入学がずれたのか。出身はどこなのか。好きなテレビはなんなのか。好きな芸能人は誰なのか。
それはもういろいろと聞かれた。
あれやこれを聞かれた。
そして、私はそれらすべての回答を誤った。
――かもしれない。
いや、誤ったのだろう。なぜなら、その結果としていまの孤独があるのだから。
みんなと同じように、きちんと4月で入学できていたらきっとこんなことにはならなかったはずだ。
しかし、過去をどうだと言ったところで、現実は変わらない。
すでに一週間が経過しているなか、私というイレギュラな存在が介入するというイベントからクラスはすでに落ち着きを取り戻そうとしていた。もしも私に人並みの社交性があるなら、今からでもきっと挽回することは可能だろう。
ただし私にはそれがない。
社交性がない。
言わせるな。
まったく、どうしたことだろう。
転校生である私の扱いだが……もうちょっとの期間ぐらい優遇されてもよいのではないだろうか。確かに私にも積極性があったかどうかと聞かれれば、お世辞にも豊富だったとは言えないだろう。
まったく、どうして私を手助けするキャラクタがこのクラスにはいないのか。ギャルゲーの顔のある友人みたいなああいうのが。一人、二人はいてもよいのではないか。
「まったく他力本願寺――はぁ……」
認めよう。
こと外交面において私は大胆にその仲を深めようとする、一歩を踏み出す度胸など一切ない。
だがいいの。
孤立と孤独には慣れているわ。
気にはしてない。
やせ我慢じゃ、ないんだからね。
「はぁ……堪えるな」
この孤独はいつまで続くだろう。一ヶ月かも、一年かも、まさか三年ってことはないだろう。3年あれば一人は友達できるだろう。でももの心がついた10年間でできた友達は片手で足りる。
…………。
いいわ、どこからでもかかってこい。
孤独?
孤立?
その尽くを、私は倒し、推し進む!
と、意気込んでいたとき、ノートを取ろうと手を入れた机の中に、覚えのないがさりという感触を感じた。。
「え? ……手紙?」
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